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DOREAM BASEBALL ~夢見る乙女の物語~ 

作者:山神
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春季大会開幕!

 
前書き
オリンピックの野球が毎度劇的すぎて仕事が手に付かないのよ|ョω・`)ゼンブシゴトチュウナノヨ 

 
莉愛side

「わぁ!!すごぉい!!」

階段を駆け上がり、広々としているスタンドへと出ると、思わず大きな声が出てしまった。その結果、後ろにいた瑞姫から頭を小突かれる。

「莉愛、静かにして」
「はーい」

そうは言ってもやっぱり気持ちが高ぶってしまう。学校のグラウンドとはまた違い、野球専用に作られているだけあって、球場は少し特別なものに感じるから。

「ねぇ、今日って春の大会だっけ?」
「うん。うちはシードだから今日は二回戦」

後ろからそんな会話が聞こえてくる。
これから行われるのは春の東京都大会!!最近少しずつ部員数や加盟校の数が増えてきたこともあり、都大会の前に地区予選が春と秋はあるんだけど、秋の大会でベスト4に進出している私たちは地区予選免除!!さらには二回戦からの出場なんだって。

「うちってそんなに強かったんだね」
「まぁ……東英の一人勝ちみたいなところがあるけどね」

どこの学校が強いか、それは男子の野球でももちろんあるんだけど、やっぱり女子野球でもそれは変わらないらしい。そりゃあせっかくやるなら勝ちたいし、そうなると強いところに人が集まるのは当然だよね。

「今日の相手は強いの?」
「ううん。秋は予選で負けたし、春もかなりギリギリで抜けてみたいだよ」

相手の都立緑山高校は、選手名鑑を見たところ新入生も合わせて12人しかいないみたい。うちの先輩たちは2、3年生だけで17人もいることを考えると、少し少ない気がする。

「ちなみに東英は何人いるの?」
「2、3年生は20人くらいはいたかな?1年生が何人入ったかにもよるけど」

まぁ男子に比べると少ないけどね、と付け加える瑞姫。それでも以前の女子野球よりも大きく人数も増えてきており、出場校も増えてきている。それに、今年は去年の甲子園大会の影響で野球人気が大きく上がっているらしく、恐らく多くの高校で部員数が増えているとのことらしい。

「今日はスタンドで試合をしっかり見てなさいって言ってたよ」
「わーい!!楽しみ!!」

イメージだとベンチに入れなかった選手はスタンドで応援すると思ってたけど、一年生だけなことと未経験者が多いから、今日は野球がどういったものなのかを感じてもらうのが目的とのことで、みんなで纏まって試合を見させてもらえるらしい。

「瑞姫!!莉愛!!早く早く!!」
「シートノック始まっちゃうよ!!」

時刻はまもなく13時になるところ。先に行われていた試合の間に球場の外でウォーミングアップをして、試合が終わった後にグラウンドでシートノックをして試合と言う流れ。
一年生は試合開始に間に合えばいいよ、と監督から指示が出ていたので、意外と時間がなかったりする。

「そういえば監督見たことないんだけど?」
「まぁ……忙しい人だからね」

なんだか歯切れの悪い言い方に首を傾げる。その間にも同じ一年生の紗枝や若菜(ワカナ)に急かされ、急いで先輩たちが控えている一塁側ベンチのスタンドへと向かう。

『明宝学園高等学校、シートノックにお入りください』

私たちが席に付いたタイミングで、まるでタイミングを図ったかのようにそんなアナウンスが鳴る。
それを聞くと、声を出して先輩たちが守備へと散っていく。

「うわ……めっちゃコントロールいい……」
「ボールも全然落とさないね」

さすがに実績があるだけあって先輩たちの守備はすごくうまい。送球ミスもなくエラーも見られない。見ていて思わずタメ息が漏れるくらい安定している。

「あれが監督?」
「あ、世界史の……」

ノックを打っている男の人を見て誰が監督なのかようやくわかった。一年生の間でもよく話題に上がる世界史の教師、真田先生だった。

「学年主任だもんね、そりゃ忙しいか」
「まぁ……他にも理由は色々あるけどね」

瑞姫が相変わらず何かを濁しているけどそれは気にしなくていいや。ていうかあの先生、全然運動しているイメージがなかったけどこんなにノック打てたんだ。それだけで少し意外な気がする。

『東京都女子硬式野球、春季大会二回戦第ーーー」

先輩たちのノックに目を奪われながらその様子を見ていると、不意にアナウンスが流れる。それは両チームのスタメン発表のアナウンスだった。

まだ入部して日が浅いため、誰がどのポジションを守っているのかわかっていない……というか、野球がいまいちわかっていないところもあるので、そのアナウンスに耳を傾ける。
先攻の先輩たちの名前が先にアナウンスされていくので、どこを誰が守っているかを照らし合わせながらアナウンスを聞いた結果はこんな感じ。

1番 ピッチャー 新田栞里(ニッタシオリ)
2番 ショート  高嶋伊織(タカシマイオリ)
3番 ライト   坂本陽香(サカモトハルカ)
4番 セカンド  渡辺優愛(ワタナベユア)
5番 キャッチャー水島莉子(ミズシマリコ)
6番 センター  菊池明里(キクチアカリ)
7番 ファースト 東 葉月(アズマハヅキ)
8番 レフト   中島美穂(ナカジマミホ)
9番 サード   村岡曜子(ムラオカヨウコ)



「え?優愛ちゃん先輩4番なの?」
「4番って一番打てる人じゃないんだっけ?」

野球部に入ったからにはと少しずつ調べているんだけど、4番バッターはチームで一番いいバッターが入るって聞いてたから、あの能天気な優愛ちゃん先輩がそんなところにいるなんてと思うと、少し不安感が出てくる。

「ねぇ……栞里さんの背番号9なのにピッチャーなの?」

まだ先輩たちのこともよくわかっていない私たちはザワザワしていると、不意にそんな声が聞こえる。すぐ目の前にあるブルペンを見ると、そこで投げている栞里さんの背中には確かに9という数字がある。

「ピッチャーって1番なんじゃないの?」
「いや、そういう決まりではないんだけど……」

瑞姫に問いかけると、どうやらかなり基本的なことだったらしくタメ息を付いている。話を聞くと、背番号でおおよそのポジションは決まっているけど、必ずしもその通りに配置しなくていいみたい。

「特にピッチャーを今時一人で投げさせるなんてあり得ないからね」
「大体どこのチームも2、3人……多いと4人とかいるからね」

瑞姫と紗枝の経験者たちによる解説にへぇ、と声が漏れる。そういえばプロ野球とかでも先発とか中継ぎとか色々聞くもんね。そんな感じなのかな?

その後も先輩たちのオーダーを見ながら色々と話していると、いつの間にかノックも終わり、試合を開始するために両チームがベンチから出てきている。

「始まるよ」
「ほら、立って」
「え?立つの?」

突然瑞姫と紗枝が立ち上がり、私たちも何がなんだかわからないまま同じように立たされる。

「試合前の挨拶だからね。試合に出てない人もベンチに入ってない人も、しっかり挨拶しないといけないんだよ」
「そんなにしっかりしてるんだね」

確かに高校野球ってすごい厳しくて、それでいて礼儀正しさも求められているような気がする。それは試合が始まる際でも変わらないようなので、私たちも全員が相手チームの方へ向く。

「整列!!」
「行くぞ!!」
「「「「「おぉっ!!」」」」」

ホームベースの前に審判の人たちが立ち、真ん中の人が手を挙げたと同時に双方のベンチ前にいた選手たちが走り出し、お互いに向き合うように整列する。

「ーーーーー、それでは、始めます!!」
「「「「「お願いします」」」」」

審判の合図と共にお辞儀する先輩たち。私たちもそれに合わせるように頭を下げ、これから始まる試合に視線を注ぐ。

「あぁ……すごい楽しみ!!」

自分がやるわけではないのに、これから始まる試合を見れるだけで気持ちが高ぶってくる。一体どんな試合になるのか、期待に胸を高鳴らせながら、私たちは席へと着いた。



 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
本当は序盤の攻防をやっていく予定でしたが思ったより時間がかかりそうなのでここで一回切ります。 
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