異生神妖魔学園
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金的タックルラリアット
連休2日目。街中では紺子、一海、龍華、綾野、清花がぶらついていた。
清花「紺ちゃん紺ちゃ~ん、どうやったら叢君と恋人になれるのかなぁ?僕が話しかけたらまた逃げられちゃったんだけど……」
紺子「いや私に聞かれても………」
綾野「ふむ……これは片思い、ですね。私も直刀を危険視していますが、マスターが彼とぶつかっただけで斬られるなど最初は全く考えていませんでした」
龍華「ぶつかっただけで斬られる!?」
そう、あれは一昨日のレクリエーションの日のことだった。
特に紺子の返り血を浴びた一海と龍華は今でもはっきり覚えている。一海は直刀のクラスメイトのため能力を知っているが、知らなかった龍華だけは思わず腰を抜かし、何があったのか綾野に問い詰める。
綾野「マスターが斬られた後彼の種族を調べてみましたが、彼の種族は人間と神刀の付喪神のハーフ。当初は普通の人間と扱われて育てられましたが、幼少期に友達と遊んでいたところ、友達がトラックにひかれそうになりました」
一海「それでその子を助けようとしたら能力が発動、トラックを斬ってその子と親に化け物呼ばわりされて周りから避けられるようになったんでしょ?あいつから聞いたから知ってるよ」
綾野「一海はすでにご存知と………彼が異生神妖魔学園に入学するまでは相当辛い思いをしていたんでしょうね」
龍華「しっかし、清花先輩があいつに片思いなぁ……俺はあいつより学園長の方が問題だと思うんだけどなぁ。一昨日はマジで地獄だった………」
一昨日のレクリエーションことデンジャラス・逃走中を思い出す龍華。とはいえ、あのレクリエーションが地獄だったことは紺子たちも変わりない。
そのレクリエーションを考えた者こと学園長の辰蛇が背後から近づいてきているなど5人は知る由もなかった。
辰蛇「ヤッホー、ペロリストの被害者たち!」
紺・一・龍・清「「「「学園長!?」」」」
綾野「ターゲットロックオン」カチャ
辰蛇「ファッ!?あ、綾野ちゃん待って待って待って!?私何もしてないよ!?ていうかどんだけ武器持ってるの!?」
紺子「結構多いけどな。こんなトコでなぁにやってんだ学園長?職務怠慢か?」ボキボキ
突如現れた辰蛇にすぐさま腕をバズーカに変えて狙いを定める綾野。昨日EVOLUTION SPACEでやったようにもう一度辰蛇の腹を殴ろうと手をボキボキ鳴らしながら睨む紺子。
辰蛇「紺子ちゃん、綾野ちゃん、ホントに待って!?暴力はマジで勘弁!私、今ペロリストの被害者たちを探してたのよ!?」
一海「…………あっ(察し)」
ペロリストと聞き、すぐに察する一海。それもそのはず、学園内きっての変態といえばあの生徒しかいない。そしてあの生徒は授業をサボって女子更衣室に忍び込み、紺子の腹を舐めていたのだから。
一海「あの変態ペロリスト……いや、舌寺先輩ですね?」
辰蛇「そうそう、その変態ペロ…じゃなくて赤井舌寺君!紺子ちゃんが更衣室で舌寺君にお腹舐められたって話聞いて、あれからあの技を伝授しようか悩んでたけど………本日より決定!あなたたちに素晴らしい護身術を伝授しようと思います!」
紺子「護身術?」
紺子はキョトンとしながら殴る構えを解き、綾野は腕のバズーカを元の腕に戻す。
そして綾野は思い出すように言った。
綾野「……あ、そういえばそうでしたね。マスターのお腹とおへそを舐めてる最中霜に凍らされ、一海にグラウンドまで蹴り飛ばされ、最終的には南原先生にまでジャーマンスープレックスを決められ……私も思わず彼の舌を切りたいという衝動と怒りに駆られました」
清花「怖いこと言わないでよ!?それと似たようなこと何回も聞いてるけどホントに冗談に聞こえないから!」
数分後、路地裏にて。
紺子「学園長に手招きされて路地裏に来たけど……」
一海「この人が学園長の護身術の犠牲者って……」
辰蛇に手招きされて路地裏に来たのはいいものの、紺子たちの目の前には両手を縛られた漫画でよく見るようなリーゼント頭の男だった。
不良「女が束になったところで俺に敵うとでも思ってんのかよ!」
綾野「学園長、なぜ私たちをここへ?」
辰蛇「あっちみたいな公共の場だとドン引きされちゃうからね。さて、ここには誰も来ないし、ゆっくりお手本を見せられるわね」
不良「ハッ、ロリ巨乳のガキが面白いこと言ってんじゃねぇよ!こんな縄で俺を縛って楽しいと思ってん―――――」
キーンッ!!
不良「ノ゛ァ!?」
しゃべっている最中、辰蛇の足が恐ろしい勢いで不良の股間をとらえた。
彼女はいたずらそうな笑みを浮かべ、不良はあまりの激痛に言葉を失い、股間を押さえながら悶える。
辰蛇「まずは金的。次はトゥァックルゥゥゥ!!」
ガオンッ
ドンッ
不良「グボォ!?」
みぞおちめがけて突進した辰蛇だったが、『なぜみぞおち?』と疑問を抱える前に突進した瞬間の現象に疑問を抱えなければならなかった。
突進する瞬間、強烈な風圧が紺子たちを襲ったのだ。風圧が来るなど思ってもいなかったため、紺子たちは耐えることができず、壁に押しつけられる。
龍華「おお………」
辰蛇「そしてラリアットォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」
ゴシャアッ!!!!!
不良「#♂☆○℃◇$■◎¥〃*ゞ※∞£÷@±∃αΣ∀⇔♀§×∬≠⊥♪Ψ〆;仝θ∴々!!!!?」
骨が砕けるような嫌な音と声にならない声が路地裏に響き渡った。
綾野「…………」
一海「が、学園長エグすぎるよ………金的の後にみぞおち、挙げ句には喉仏潰すって……………」
龍華「マジで苦しそうな顔してんな………」
紺子「絶対こいつ瀕死だろ…………」
清花「僕女なのに何だかあそこがヒュンッて………」
地面に倒れ伏した不良はただピクピクと小さく体を震わせることしかできなかった。
不良は力なく頭を上げると、血走った目で辰蛇を睨みつける。
不良「て、テメェェェ………」
辰蛇「ざっとこんな感じよ。あ、この護身術私が生み出した技だし、ちゃんと名前もついてるからね?」
紺子「こんな感じって……ていうか、それ何……?」
紺子は恐怖に震えながら問う。
辰蛇「対男性特攻奥義、その名も『金的タックルラリアット』ッ!!」バァァァァァン
だがドヤ顔の辰蛇とは対照的に、紺子たちは逆に唖然としていた。
それもそのはず、辰蛇に見せられた不良に対する攻撃は紺子の言う通り、護身術より殺人に近かったのだから。
清花「僕、攻撃より回復専門なんだけど………こ、こんな技覚えていいのかな………」ガタガタ
辰蛇「んー?覚えて損はないよー?特に紺子ちゃんなんか舌寺君にお腹舐められてるし、一海ちゃんも舌寺君のこと憎んでるんじゃないの?」
一海「え…まあ確かにあのクズ野郎で変態ペロリストの下郎には本気で怒りましたけど…」
紺子「カズミン、お前ぇ……//////」
思い出したくないのにどうしても思い出してしまい、赤面しながらうつむく紺子。
少しの間だったが、顔を上げた途端辰蛇がいつの間にか姿を消していた。
紺子「あれ!?学園長!?」
綾野「マスター、学園長なら私たちを見ていた人間を連れてくるためしばらくここを離れてます」
龍華「思えばあの学園長もスゲェ変態なんだけどな。人のパンツの匂いは嗅ぐし、俺のおっぱいも揉みまくるし。しかも俺のおっぱいのホントのサイズも知ってるって……」
紺子「そういえば龍華、お前ブラジャーじゃなくてサラシ巻いてたっけ」
龍華がサラシを巻いているのは紺子だけでなく、幼馴染みの一海、全てのクラスメイトと後輩のデータが入っている綾野も知っていた。
清花「龍ちゃんの胸Cにしか見えないなぁ……てか、C?学園長が龍ちゃんのホントの胸の大きさ知ってた?紺ちゃんとカズミンとは友達………え?知らないの僕だけ?」
龍華「みんなで何カップか一斉に答えてみるか?」
紺・一「「うん」」
龍華「……せーの」
清花以外4人「「「「Gカップ」」」」
彼女の胸の本当の大きさを知らないのは清花ただ1人。口を揃えて言った紺子たちに紛れて綾野も口を出していた。
龍華「おーい!!綾野先輩まで知ってんのかよ!!先輩にまで言われるとスッゲェ恥ずかしいんだけど!!//////////」
綾野「龍華、私は未来の最新型ロボットですよ?生徒と先生方のデータは全て取得済み。女子の胸の大きさだって自然に計算してしまうほどです」
龍華「自然って、あんたなぁ……//////」
赤面しながらうつむいていると、どこからか男の抵抗するような声が聞こえてきた。
男「離せ!おいガキ、こんなことしてただで済むと思ってんのか!?」
縛られた男は辰蛇に引きずられながら必死に抵抗し、紺子たちの前に倒れた。
辰蛇「というわけで早速連れてきたよー。その前にひとつ言っていい?」
紺子「?」
辰蛇「この人間……私たちにミンチにされる未来が見えるわ♪」
清花「え?学園長?」
目の前にいるのは辰蛇だが、まるで別人のように雰囲気が全く違った。
かつて見たことも聞いたこともない辰蛇の容赦ない殺意とドスの効いた声。それは先ほど連れてきた男の正体を知っているかのような雰囲気だった。
こんな悪そうな笑みを浮かべた学園長は見たことがない。紺子たちは少し鳥肌が立ってしまった。
龍華「が、学園長?もしかして怒ってんのか?」
辰蛇「別に怒ってなんかいませんわ。この人間はジャーナリスト、『深海光弘』。でもね、この人つかんだ瞬間とんでもない本性が見えちゃったの。人間の全ての“負”を強調してるかのような外道マンで、特技は名誉毀損として他人のゴシップとスキャンダルを流すこと。そしてスクープを手に入れるためなら手段を選ばない。誰も裁くことがないなら私たちの手で始末した方がいいかなって」
深海「はぁ!?白昼堂々殺人予告!?な、何だよこいつ!バケモンか!?」
辰蛇「化け物で結構。この子たちは私の学園の生徒。そして私はこの子たちが通う学園の学園長ですからね♪」
顔を近づけながら目に光のない笑顔で言った。
深海「ひ、ヒィィ!?」
その笑顔には殺意がこもっているようにも見え、深海は腰を抜かしそうになる。
一方で深海の本性を聞いた紺子、一海、龍華にも深海に対する殺意がこみ上げていた。
紺子「学園長、今日ばかりは賛成します。こいつを裁くのは警察でも法律でもない………私たちが徹底的に処分しなきゃならねぇ………」
一海「僕も賛成です。エグすぎて停学処分になるのを覚悟の上でやらせていただきます」
龍華「こいつの性根は腐りきってる。誰かがやらねば被害者が増えてくだけ…………紺子、カズミン、遠慮はいらねぇ。殺す気で行くぞ」
容赦ない殺意を持っているのは辰蛇と同じだが、それらは彼女より大きく上回っていた。
紺子たちは深海にジリジリと近づき、深海は後ずさり、辰蛇は唖然としていた。
深海「い、一体何する気だ!?こんな抵抗できない俺に一体何を…!」
一海「まずは僕から!」
キーンッ!!
深海「ガァッ!?」
まずは一海が深海の股間めがけて蹴りを入れた。
一海「そのまま壁に!」
ダシィアッ
深海「ウボォ!?」
立て続けに回し蹴りで壁に叩きつけ、一瞬動けなくなった隙を突いてさらに襲いかかる。
一海「飛び膝蹴りッ!!」
ズゴンッ
深海「グガァ!?」
辰蛇「え?」
一海「とどめはかかと落とし!!」
ゴシャアッ
深海「ガ………!」
辰蛇「金的の次に回し蹴り、その後みぞおちに飛び膝蹴り、とどめにかかと落としって…………」
一海「我、天啓を得たり」
深海「お、おぉぉ………………」
天啓どころではなかった。まだ一海しか攻撃していないにも関わらず、満身創痍となった深海は攻撃された股間とみぞおちを押さえて悶絶していた。
紺子「……もう全部カズミンだけでいいんじゃないかな?」
龍華「殺す気で行くっつったじゃん。俺だって最初からこいつを許すつもりはねぇんだ」
紺子「ぬう………わかったよ、停学覚悟でやるよ!やっちゃダメだってのはわかってるけど、悪く思うなよ深海さん!」
深海「え゛……く、来るな……!」
キーンッ!!
深海「アヒィ!?」
今度は紺子に近寄られ、激痛に悶えながらも後ずさろうとする間もなく一海にやられた時同様股間を蹴られた。
紺子「次に肘打ち!」
ゴギッ
深海「オボッ!?」
紺子「顎に向けてアッパー!!」
ゴシャアッ
深海「グゴォ!?」
みぞおちに肘打ちされて吐血し、さらに顎にアッパーカットを食らった深海。抵抗のての字もなく宙を舞って地面へ落ちた。
紺子「龍華、あとは任せた!」
悶絶する中、深海は龍華という名前を聞いて思わず愕然。苦し紛れに龍華の顔を見上げる。
深海「はぁ………はぁ………き、貴様………………確か………格闘技世界一決定戦の……………最年少優勝者の………………」
龍華「…………」
血を流す口から苦し紛れに呟いた深海に龍華は無言で近づく。
深海「お、俺をどうする気だ………!?もし何かしたら………お前の地位も名誉も消えるぞ……………!?」
龍華「地位?名誉?そんなもので何になるんだ?俺が格闘技を始めたのはな、今でも意識不明で入院してる親父とお袋を治すための治療費を稼ぐためだ。優勝なんて目じゃない。また親父とお袋と一緒に過ごしたいだけなんだ」
一海「龍華………」
龍華「地位とか名誉なんかクソ食らえだ!そんなものに頼るぐらいなら捨ててやる!!」
ゴギャッ
深海「ヒギャアアアアアア!!!お、俺の肩がァァァァァァ!!!」
龍華に胸ぐらをつかまれ、無理矢理立たされて肩の骨を殴られて砕かれた深海が覚醒した瞬間だった。
それでも龍華は容赦せず、先ほど一海と紺子がやったように股間めがけて蹴りを入れた。
キーンッ!!
深海「ゴワァァァァァアアアアアアアアアア!!!」
股間を蹴られたばかりでなく、壁にまで吹き飛ばされ、叩きつけられた。
龍華「その身をもって!!」
ズゴンッ
龍華「きっちり地獄で反省!!!」
ダシィアッ
龍華「しやがれゴミクズ野郎ォォォォォォォォッ!!!!」
ブシャアアアアアアアッ!!!!
深海「▲◎※¥*■〆#♂Ω☆ω℃仝μ♀£¶ゝ$∀∬◆@±●ゞ々*★∃≡∧⊥√Å∫‡⇔§≒∴○〓ΦÅ♪Σ〒¢!!!!?」
壁に叩きつけられた深海に追い打ちとして肘打ち、続けて顔面に飛び膝蹴り、とどめに拳を恐ろしいほどの勢いで深海のみぞおちめがけてぶつけた。
地獄の底から湧き出るようなこの世のものとは思えない断末魔が路地裏全体に響き渡り、やがてその断末魔をあげた喉は裂けると同時に血が噴き出し、そのまま倒れ伏した。深海の心臓はもう動いていなかった。
龍華「………できるだけ使わねぇようにしようと思ってたが、こんな奴に使う羽目になるなんてな」
清花「り、龍ちゃん……いくら君が格闘技世界一決定戦の最年少優勝者でもさすがにこれは………」
龍華「これでよかったんだ。こいつみたいな外道な人間は死ななきゃわからねぇ。少なくともこいつによる被害者たちはきっと………こいつの死を望んでたはずだ」
深海の血を浴びた龍華はそれを払いながら言った。
彼の凄惨な死に青ざめているのは清花だけでなく、辰蛇も引いていた。
辰蛇「な、なんか私が思ってたのと全然違ったけど…………とりあえずもう1回だけ見てちゃんと覚えてよ?これ、ノーカンにするから」
紺子「みんなドン引きじゃねぇか………なあ、綾野先輩大丈夫か?」
綾野「………あ、すいません。少し寝てました」
綾野以外全員『寝てた!!?』
この日、紺子たち5人は護身術『金的タックルラリアット』を習得できた。
紺子たちが去った路地裏には惨殺死体となった外道ジャーナリストこと深海光弘、そして辰蛇に金的タックルラリアットを食らった不良しかいなかった。
不良「お、俺は………どうなんだよ………………」ガクッ
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