異生神妖魔学園
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やるの遅いよレクリエーション
夜のじゃれ合いから翌日、腹とパンツを丸出しにして寝ていた紺子と一海が目を覚ました。
一海「……あれ……僕たちいつの間にこんな姿に?」
寝ぼけ眼をこすり、なぜ自分がこんな服装なのか理解できない一海。だが紺子も彼女と同じ状態なので、昨夜の出来事を口に出した。
紺子「お前覚えてないの?麻婆豆腐食った後ズボン脱いで腹触り合って………」
一海「………あっ」
麻婆豆腐と聞いてあることを思い出した。妖術で作った『創造の門』から飛び出した激辛麻婆豆腐が辰蛇の顔に直撃したこと、紺子を舐めた舌寺に改めて憎悪を抱いたこと、紺子との出会いなど、昨夜の出来事が次々と頭の中に浮かんだ。
ふと顔を横へ向けると、顔に皿を被せて倒れた辰蛇。頭の周りには昨夜と変わらず麻婆豆腐が広がっていた。
一海「これ……死んでるんじゃないかな?」
紺子「ウロボロスだからたぶん死んでないんじゃね?」
一海「……そういえば食券に『ジャックおばはん特製激辛麻婆豆腐』ってのがあったけど、あの麻婆豆腐って学園長が食らったのと同じぐらい辛いのかな」
紺子「龍華、去年あれ頼んで燃えてたからなぁ…結局残して壁ナイフの刑になったけど。ところで今何時?」
一海「今は………」
時計の針が朝の10時を指している。それを知った途端、紺子の顔から血の気が引いた。
紺子「10時ですと……!?完全に寝坊じゃねぇか………!」
一海「あー、あれ?昨日先生が言ってたけど………」
紺子は飛び起きるなり、一海の話も聞かず肩をつかんで激しく揺さぶる。
一海「アガガガガガガガガガガガガッ!?」
紺子「テメェェェェ!!!昨日言ったこと忘れたのかァァァァ!!!休みだったら一晩中触ってもいいけどそうじゃない日は勘弁してくれっつってたじゃねぇかァァァァァァァ!!どうすんだよ、おい!!私たち完全に遅刻じゃねーか!!どう責任取ってくれんだよォォォォォォォォォ!!!」
一海「ゆ、揺さぶるのはやめてぇぇぇ!!目!目回っちゃうぅぅぅぅぅ~~~!!」
それでも紺子は揺さぶるのをやめない。このまま揺さぶり続ければ意識を失ってしまうだろうが、お構いなし。
だがこの時、2人は気づいていなかった。昨夜まで倒れていた辰蛇が起き上がったことを。起き上がったと同時に皿が音を立てながら床に転がったことを。
紺・一「「!?」」
皿が転がった音を聞いた2人が横を向くと、顔面、角、ツインテールが麻婆豆腐まみれになった辰蛇が起き上がっていた。
辰蛇「人の話は落ち着いてしっかり聞くものよ、紺子ちゃん?」
紺子「学園長生きてたの!?てっきりカズミンの麻婆豆腐が辛すぎて昇天したかと……!」
辰蛇「ウロボロスだからまだまだ死にゃしないわよ♪昨日のはホントに辛かったけど」
一海「出雲姐ちゃんと甘い夜過ごしたかったから寝ててもらおうと思って」
紺子「おいバカズミン、テメェ!何バラしちゃってんだよ!//////」
両手で真っ赤な顔を覆おうとする紺子だが、そうはさせまいと言わんばかりに辰蛇が目を輝かせながらギリギリまで顔を近づける。
麻婆豆腐の臭いが鼻の穴を刺激する。
辰蛇「だから一海ちゃんと一緒にそんなエロい格好してたんだね!私だけ仲間外れとかずるくない?次やる時は私も入れ―――――」
紺子「~~~~~~~~っ!!/////////」
ズガッ
辰蛇「ブギャボッ!?」
鼻骨が折れる音がした。
これ以上言わせまいとばかりに辰蛇の顔に頭突きした紺子であった。
紺子「で?登校時間は昼?」
一海「うん。それ知らなかったの出雲姐ちゃんだけじゃん。昨日の午後ずっと屋上で昼寝してたでしょ?」
紺子「あ」
朝食のパンを食べながら話す2人だったが、ある教師によると『掲示板に1枚の貼り紙があった』とのこと。それは辰蛇が書いたものらしく、1年とのレクリエーションをやると書かれていたのだ。
しかし、辰蛇は昨日までライオンの檻に入れられていたはず。一海が聞いたところ、それは辰蛇が神守の猫耳と尻尾をいじる直前、黙って掲示板に貼りつけたらしい。
レクリエーションと聞いた紺子の反応は、あんぐり口を開けていた。
紺子「すっかり忘れてたけど全部思い出した………延期になって以降全然連絡なかったから、てっきり中止になったかと………」
一海「僕もいろいろ思い出したね。新入生歓迎のあの日、宇佐間先生が顔面埋まるほどのパンチ食らって、大狼先生はパイを顔面にぶつけられ、そして司先輩は先生のハンカチ盗んでぶん殴られたっけ」
紺子「よく覚えてんな…」
一海「入学して早々あんなのが思い出になるって嫌だよね」
いや、紺子と一海だけではない。紺子と一海のクラスメイトにとっても3年生にとっても嫌な思い出になることは間違いない。特に司は剛力のハンカチを盗んだせいで壁に穴が空くほど顔面を殴られ、さらに武道館での模擬戦でも一海の腕をつかんで股間を何度も蹴られたのが大きなトラウマとなっているので無理もないだろう。
そんなことを考えながらパンを食べ終えた2人は袋を捨て、一海がレクリエーションの内容を口にする。
一海「鬼ごっことか言ってたような……」
紺子「鬼ごっこ?」
一海「詳しいことはよくわかんないけどそんな感じだった気がする」
紺子「……………なんか嫌な予感しかしないの私だけ?」
一海「あの変態学園長が追いかけてきたら出雲姐ちゃんにとって最悪だよね。僕だったら思いっきり蹴り飛ばしてるけど」
紺子「牙狼だったら狼男になってボコボコにしてるだろうなぁ。満月見た時以外にも怒ったり喜んだりした時でも変身するって言ってたし」
一海「怒っても変身するの!?」
やがて昼近くになり、すでに着替え終えている紺子と一海はすぐに登校。
校舎に入るなり、すぐに食堂へ。
紺子「おばちゃん、きつねうどん大盛り」
一海「いなり寿司としょうが焼き」
ジャック「はいはい、すぐ作るからね。残したら承知しないよ(なーんでアタイ特製の麻婆豆腐食べないのかねぇ…アタイが何が変なものでも入れてるというのかね)」
夏芽「今日レクリエーションあるからね、腹が減っては戦はできぬっていうからたくさん食べて体力つけるんだよ~」
食堂には生徒たちが次々と集まり、紺子と一海が座っているテーブルに龍華が座る。
龍華「よっ」
紺子「龍華じゃねぇか。何頼んだんだ?」
龍華「決まってんだろ?兄貴と同じスタミナ丼大盛りだよ」
一海「龍華も聞いてたんだね。あの鬼ごっこの話」
龍華「お前ら、夏芽さんかジャックさんに体力つけろって言われたんだろ?スタミナ丼の食券出したら俺も言われてさ、よっぽどハードな鬼ごっこなんだろうな」
紺子「ハードとかそんなレベルじゃねぇかもしれねぇぞ?もし学園長に捕まったら胸揉まれるぞ」
龍華「ああ、そうなんだよ。この前店の前掃除してたら落ちてきてさ、俺の胸いつもサラシ巻いてるから小さく見えるだろ?学園長は全部知ってるような顔しながらホントの大きさ言ってマスターに殴られるまで揉んできやがったんだ。殴られた後は逆さ吊りにされたぜ」
龍華の話を聞いた紺子と一海だったが、一海が自分の仕業だと告発する。
それは停電が起きた後のこと。洗面所の方から大きな音が聞こえ、向かうと辰蛇が紺子と一海のパンツの匂いを嗅いでいた。キレた紺子が殴り飛ばし、続けて一海が家の外で足蹴にした後ムーンサルトキックを浴びせたのである。特に停電中の紺子が本当に怖がっていたことも話してしまった。
龍華「あれお前らがボコボコにしてたの!?てっきりテレポートか何かに失敗したかと思ってたよ!」
一海「ホントに嗅いでたよ。あの時の学園長すごい怖がってたし」
そんな中、直刀が紺子と一海の後ろを通りすぎようとした途端、紺子の肩に当たってしまった。
ブシャアッ
一・龍「「ファッ!?」」
直刀「あ、あ、ああ!?」
直刀が紺子の肩に当たった瞬間、気づけば返り血を浴びていた。そばにいた一海と龍華にもだ。
龍華「紺子が殺された!!この人でなし!!」
直刀「……ごめんなさい、ごめんなさい………ごめんなさい!ごめんなさいぃぃ!!」
直刀はパニックになり、許しを乞いながら逃げていった。
紺子「すぐくっついたからよかったけどさ、あいつの能力触れただけで斬っちゃうとかそういうのなんだな」
この時一海はきつねうどんができるまで倒れた紺子に寄り添って泣きじゃくっていたらしい。あの後きつねうどんができたと夏芽に呼ばれた瞬間紺子はすぐカウンターまで走って受け取り、美味しそうにきつねうどんを食べていた。
龍華「お前あれか?大好物出ると復活するタイプか?」
紺子「うん」
一海「出雲姐ちゃんの体どうなってんの……?これでもし死んでたら………僕、生きる希望が………」
ジャック「ふざけやがってこの留年ゾンビがァァァァァァァァ!!!!まーた残しやがったのかァァァァァァァァァ!!!!」
新入生を歓迎した日同様、一海の言葉を遮るように再びジャックの怒号が響き渡る。紺子と龍華は『またか』と呆れながら昼食を残した美弥妃へ視線を向けた。
ジャック「ホントにあんたは!!何回残せば!!!気が済むんじゃああああああああああああ!!!!」
文字通り、残した美弥妃はまたジャックのナイフ投げを受け、また頭が床に転がった。
転がった頭はヘラヘラ笑っていた。
夏芽「おばちゃん、ちょっと怖いわー…いつか食堂崩れそうで怖いわー……」
昼食が終わり、チャイムが鳴ると、生徒たちはグラウンドに集まっていた。
牙狼「昨日ラインハルト先生が言ってたあの…」
龍哉「ヴォイエヴォーテ先生が言ってた鬼ごっこって…」
麻由美「想像しただけでまたお腹が………」
目にはほとんど生気がない龍哉と牙狼。腹痛が起こる麻由美。他にも呆れ顔の者や脱力感に襲われる者も。
直刀「もし捕まってその人殺しちゃったら……僕は………僕は………」
無亞(大好物で復活する出雲先輩もスゲェがな)
竜奈「しかし、捕まった際抵抗してもいいのだろうか?鬼は斬っても大丈夫なのだろうか?」
ワコ「抵抗はしてもいいけど斬るのはダメだと思うよ」
ディーゴ「どんな鬼ごっこなのかは知らねぇが、俺の運動神経で逆に怖じ気づかせてやるぜ」
紺子「だからって調子乗って人をはねたりすんなよ?大ケガしたらお前のせいだからな」
ディーゴ「そっ…そ、そそそそそそんなことするわけ…なななななないじゃないですかかかかかかか………」
ライエル「心配だなぁ……」
このざわめきの中、アルケーが辰蛇に目を向ける。まるで次へ進めてもいいでしょうかという風に。
アルケー「では、学園長からのお話です」
仕方ないわねと呟くと、辰蛇は朝礼台へ。
辰蛇「皆さん、こんにちは。ただいまより新入生歓迎の日以降延期となったレクリエーションを行いたいと思います。延期となってしまったのは私たちも誠に申し訳なく―――――」
辰蛇が話を進める一方、一部の生徒たちは小声でヒソヒソ話をしていた。
牙狼「トリノ先生が言ってた『生徒の心が折れそうな企画』って一体………」
竜奈「たぶんよくないことが起こる前触れかもしれない。念のため身構えていた方が無難だろう」
舌寺「人は舐められても企画は舐められない、か……今日の俺っちはちょっと真面目にやるとしますかね」
牙狼「何回も同じセリフ聞いてるけどお前が真面目になったこと一度もないだろ。お前も僕の首筋舐めたことあったよな?」
綾野「更衣室に隠れてマスターのお腹を舐めるなど言語道断にもほどがあります。自重する気もなさそうですね」
王臥「こういうキャラは大抵ボコられるのがお約束なんですよね」
だが舌寺はすでに1年の体育が始まる前、紺子の腹を舐めて霜に凍らされ、一海に蹴り飛ばされた挙げ句南原のジャーマンスープレックスを食らうという報復を受けている。
そんな舌寺が言い寄られる中、2年でも。
仁美「鬼って美味しいものなのかな~」
ライエル「いくら食人鬼の君でも食べちゃダメだからね!?」
司「俺様だったら本来の姿に戻って全部焼き尽くしてるがな」
龍哉「するなよ?鬼ごっこの意味なくなるからな?」
一生「ズルして人間に化けてそのまま帰るか……それとも真っ向勝負するか……」
盾子「真っ向勝負して紺子とどっちが鬼に捕まった回数が少ないか競ってみたら?」
紺子「なぜに私を持ってくる!?」
そして1年でも………。
一海(出雲姐ちゃん助けたいけど、みんなバラバラになって逃げちゃうし………やっぱり自分の力で何とかするしかないのかなぁ?)
無亞「かなり体使うから動きやすいセーラー服で来てよかったぜ」
一海「今日もセーラー服?学ランよりその方が似合ってるよ、無亞ちゃん♡」
無亞「無亞ちゃん!?おっ、おまっ!『ちゃん』って呼ぶなよ!/////」
来転「まさか捕まったらひどい目に遭わされる鬼ごっこなのか…!?くっ……殺せ……!」
埋「さすがに殺しはないと思いますよ?」
そう話しているうちに辰蛇の話が終わり、いよいよ彼女が出した企画が発表されることになった。
辰蛇「では、いよいよレクリエーションの企画を発表します!題して―――――」
生徒たちは息を呑み、ついに企画の名称が辰蛇の口から発表される。その発表された名称は………。
辰蛇「―――――『デンジャラス・逃走中』ッ!!」
企画の名称を聞いた無亞は何かが切れたのか、背中から触手が生える。
辰蛇「………あれ?な、無亞君?」
無亞「普通の鬼ごっこじゃ…………」
昨日宇佐間を殴った時と少し違い、空間がひとつ現れたかと思うと、そこから生えた触手が目にも止まらぬ速さで伸び、辰蛇めがけてまっしぐら。
無亞「ねぇのかァァアァアアアァアァァアアアアァァァァア!!?」
辰蛇「ボビガッ!?」
触手が辰蛇の顔面をとらえ、殴り飛ばされた彼女は校舎の壁まで吹き飛ばされ、そこへ叩きつけられた。
殴り飛ばした無亞は何事もなかったかのようなすまし顔。もちろん生徒と教師はざわめく。
剛力「が、学園長ォォォォォォォ!?」
ヴォイエヴォーテ「学園長!」
麻由美「無亞君!?何で学園長殴ったの!?」
無亞「なーに、学園長の考えることなんか全部ろくなことがないからさ。俺なんか女扱いされてスカートめくられてケツなでられたけどさ、ティンダロスがボコボコにしてくれて助かったぜ」
藤一「お前もセクハラ受けてたんかい!?男やから大丈夫やろって思ったけど嘘やろ!?」
無亞「嘘じゃねぇ、マジだ」
もう一度吹き飛ばされた辰蛇の方を見たが、すでに朝礼台に立っていた。
顔面を殴られたせいで鼻血が垂れている。そんなことは気にせず辰蛇はレクリエーションの内容を説明する。
辰蛇「えー、ルールは極めて簡単。学園内なら基本どこへ逃げても隠れてもよしとしますが、門の外から出てはいけません。出た場合、私が直々に連れ戻しますのでご注意ください。あとは個性豊かな鬼ですが、捕まった場合その場できついお仕置きを受けてもらいます。中には先生方が与えるのもいるかもしれません」
生徒一同『!!?』
つまり教師たちも参加するということ。その事実に生徒たちは絶句、そして愕然、唖然、呆然。
そんな彼らを気にせず、辰蛇は再び言葉を紡いだ。
辰蛇「それでは、デンジャラス・逃走中!これよりスタート!!」
短く鳴り響いたラッパの音と共にグラウンドの隅に置かれた黒いステージから白い煙が噴き出し、黒い全身タイツを着た『鬼』が現れた。
胴体には『肘打ち』と書かれていた。
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