異生神妖魔学園
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まともな美術?
休日が終わり、紺子、一海、牙狼が学園に到着する。
放送室から辰蛇の叫び声が聞こえてくるが、牙狼以外無視してそれぞれ教室に向かった。
牙狼「学園長!?どうしたんですかその格好!」
辰蛇「フゴォォォォ!フゴォオオオオオ!(どうしたじゃないよぉ!助けてぇぇぇ!)」
無論、牙狼は唖然。
逆さ吊りにされた辰蛇がボールギャグを噛ませられた口から必死に助けを求める声を出す。
牙狼「遠呂智の仕業だってのはわかってるけど……助けなきゃまずいな」
辰蛇「ありがとう!ホントにありがとう牙狼く~ん!」
下ろされた辰蛇は礼を言いながら礼拝するように何度も頭を下げる。それを見ていた牙狼は苦笑していた。
辰蛇「一生あのままだったら間違いなく死んでたよぉ~!」
牙狼「わかったからそれやめてください。そもそも何が原因であんな風に吊るされてたんですか?」
辰蛇「許人君のペットに手出して、校内放送でいたずらしようとしたら遠呂智君に捕まって事情聴取されて、結果あのザマになっちゃったのよね……」
だがなんという不運か、たまたま放送室を通りかかろうとした綾野の耳に入ってしまった。
話を聞いた綾野は放送室に入り、辰蛇の前に立つ。
綾野「もう一度吊るしてさしあげましょうか?学園長」
辰蛇「いやああああああ!!綾野ちゃんいやああああああああ!!」
見ると、綾野の顔にある線の色が緑になっていた。いつも無表情なので感情のないアンドロイドのように見えるが、実を言うと彼女にも喜怒哀楽といった感情がある。
それは顔にある線。普段の色は黒だが、感情を表に出す際は線の色が変わるらしい。喜びならオレンジ、怒りなら赤、悲しみなら青、そして先ほどの楽しみなら緑………といった風にそれぞれ。
なぜ緑になったかは辰蛇にはもうわかっていた。彼女は自分のさらけ出された恥ずかしい姿を見たがっている。だがこれ以上吊るされたら体がもたない。恐怖のあまり絶叫し、さらに続ける。
辰蛇「暴力はやめてください死んでしまいます~!学園長の私がいなくなったらみんな寂しいと思うじゃないですか~!」
牙狼「学園長………で、綾野の反応は?」
綾野「………殺しはしませんが、自分の身は自分で救ってください」
言っている意味がよくわからない辰蛇だったが、綾野は口を大きく開け、そこから炎を辰蛇に向けて吐き出した。
辰蛇「ヴィェァァァァアアアアアアアアア!!」
牙狼「綾野ォォォォ!!?何学園長燃やしてんの!?」
火だるまになった辰蛇は奇声をあげながら放送室を飛び出した。
途中、廊下から教師たちの声が放送室まで聞こえたような気がした。
剛力「学園長ォォォォォォ!!?朝から一体何がァァァァァァ!!?」
ラインハルト「落ち着いてください、剛力殿。きっと生徒のいたずらに違いない」
ユウジ11「話す暇あるなら逃げようぜ。トリノ、お前代わりに頼むわ」
トリノ「だからって僕を巻き添えにしようとするなァァァァァ!!ギャアアアアなんちゃって着物に火がーーーー!!」
大狼「はわわわわぁ!!烏丸先生も燃えてるぅ!!」
ヴォイエヴォーテ「ユウジ殿!!そなたは何をしているのかわかっているのか!!」
南原「そんなことより早く逃げるですよー!!私たちまで燃えちゃうですよー!!」
放送室で彼らの声を聞いていた牙狼と綾野だったが。
牙狼「……もうこれ絶対学園壊滅するんじゃないかな」
綾野「大丈夫でしょう。よほどのことがない限り」
牙狼「いや、君が学園長燃やしたこと自体がよほどのことだからね!?」
ところ変わって、ここは美術室。紺子たちがいる。
チャイムが授業開始の合図を知らせ、美術室にその担当の教師が入ってくる。
???「フッハハハハハハ!久しぶりだな、2年の諸君!」
彼の名は『コーティア・フェルクディース』。ソロモン72柱の悪魔『ダンタリオン』、序列71番の大公爵を名乗る悪魔。
筋肉質な上半身だが、服は着ずズボンのみ。額には角が1本生え、手には書物の代わりに美術の教科書を持っている。
紺子(コーティア先生今日も明るいなぁ…)
ライエル「先生、何で先生っていつもそんなに明るいんですか?ていうかダンタリオンって封印されてたんじゃ…」
コーティア「ソロモンの奴に使役されていたが、このように今は自由なのだ!ならば我がこの学園にいる者を傷つけられ、怒り狂うのも自由よなぁ?」
ディーゴ「うちの担任と同じなんですね」
コーティア「それに人生は楽しまなければ損!我もようやく自由になり、最近は趣味のゴルフとビリヤードに走っているのさ!学園長もいじって当然だ!」
一生「やめてくださいよ!?ていうかさっきまで学園長の悲鳴聞こえてたんですけど!」
コーティア「………自己紹介が遅れてたな。我はコーティア・フェルクディース!種族は悪魔、ソロモン72柱の大公爵、ダンタリオン!美術を受け持つ教師なり!」
そう言って右手に持っている教科書のページを閉じる。
コーティア「我の知識量は豊富。だがこの学園に美術を教えられる者がいない。そこで美術以外いろいろ教えられる我がこの担当に選ばれたのだ。休み時間の間は美術以外のことも聞いてもよい。何でも教えてやろう」
ディーゴ「うおおお!!先生マジですか!?じゃあ教科以外のことも…!」
コーティア「お前たちの趣味でも構わん。自分のことに集中するのはとてもいいことだ。さて、長引かせてしまったな。今日の内容だが…………教科書を開け」
紺子(さっき教科書閉じる必要あった?)
教科書の内容を確認し、コーティアがこう言った。
コーティア「よし、今日は写生の授業だ。お前たちには絵心があるか?友の絵を描いたことはあるか?」
もちろん誰も手を挙げない。それもそのはず、いくら仲がよくても、さすがにお互いの似顔絵を写生したことは一度もないからだ。
コーティア「なんとなく予想はしてたが誰もいないか………ではお前たちには早速ペアを組んでもらう」
龍哉「ペア?」
コーティア「これも人生の経験のうちのひとつさ。我だって烏丸の似顔絵を描いている。それを今からやってもらう」
司「うわっ、めんどくせぇなぁ…俺様あんまり絵心ねぇよ……」
コーティア「絵心がなく思うように上手く描けなくてもしっかり『よくやった』と評価してやる。だがふざけて描いた者は………いや、やはり黙っておこう」
冷火(黙っておくとか絶対嫌な予感しかしねぇ!!)
このクラスの人数は16人。2人1ペアになれば合計8ペア完成する。
クラス全員それぞれ立ち上がり、誰と組むかそれぞれ話しかける。特に紺子は龍華と組むことになった。
龍華「ちゃんと上手く描けよ?」
紺子「わかってるって。かわいく描いてやるから」
紺子と一度も話したことのないライエルは龍哉と組み。
ライエル「いつになったら僕は紺子ちゃんと話せるようになるのかな…」
龍哉「昼休みにお悩み相談室開いてるから来た方がいいぜ。何でも答えてやるから」
ライエル「うん…でもどうしようかなぁ………」
特に一生は辰美と組んだことにより安心していた。ライバルの紺子と組んだら似顔絵対決になりかねないと思ったのだろう。
もちろん許人は高見とつき合っているためすぐにペアを組むことができ、結果このようになった。
・紺子×龍華
・龍哉×ライエル
・ディーゴ×仁美
・司×冷火
・辰美×一生
・獄宴×セー
・乱×盾子
・許人×高見
コーティア「皆組み終わったようだな。では各自取りかかれ」
ディーゴ「俺の得意科目体育と社会の歴史だから上手く描けるかどうか……」
仁美「頑張って描けばそれなりに私と似るんじゃな~い?」
許人「これで一緒になれたね。ちゃんと君そっくりに描いてあげるよ」
高見「ぽっ/////」
許人の一言に照れたのか、顔を赤らめる高見であった。
龍華(細けぇトコ苦手なんだよな……)
独り言を呟き、紺子の顔を見ながら絵を描く。
細かいところといえば髪の毛や光の当たり具合など、初心者にとってはかなり手こずってしまう部分だ。全員鉛筆で描いているので描き直すことは可能だが、細かい部分を間違えると本当に大変である。
龍華は間違えないようにその部分を表現しようとするが、手が震えて思うように上手く描けない。
龍華(紺子はちゃんと描いてんのか?)
対照的に紺子は無表情で画用紙に黙々と描いている。
心配になった龍華は彼女が描いている絵を覗いてみた。
今日は龍華と似顔絵を描いて楽しかった。
出雲紺子
龍華「作文じゃねーか!!?こんな時間に書いてんじゃねーよ!!今美術だぞ、美術!!国語の時間じゃねーだろ!!」
紺子「え、違うの?」
コーティア「そこ、うるさいぞ」
消すのは面倒だと思ったのか、画用紙を裏返す紺子であった。
コーティア(絵ではなく作文とはな……世の中には面白い人外がいるものだ)
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