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藪知らず

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第二章

「それ故にです」
「何かあってもですか」
「もう問題ありませぬ、それにです」
「陣を破る知恵はですか」
「それがしにもあります、あれは異朝のものです」
「はい、諸葛亮孔明が生み出したものとか」
 綱吉はすぐに応えた、学問に造詣の深い彼はこうしたこともよく知っているのだ。
「天文道に関するもので」
「結界の術の一つです」
「左様ですな」
「諸葛孔明はそれを戦に使い」
「その内に入った者を脅かしましたな」
「そう言われています」
 かつてはというのだ。
「その様に」
「そのことをご存知で」
「それがしの頭の中にはです」
「あの術を破る知恵がおありですか」
「知識がです」
 それがというのだ。
「ありまする」
「それでは」
「はい、それでは」
「藩でも学識の深い者や武勇に秀でた者を連れて」
「行きますか」
「そうしてきます」
 綱吉に終始余裕のある顔で述べてだった。
 光圀は実際にその林に向かった、供の者は佐々十竹それに安積澹泊の二人だった。その二人を連れて行ったが。
 佐々は林に向かう途中で光圀に言った、きりっとした顔立ちの面長の顔の男で眉が太くしっかりしている。
「大殿、我等二人がですな」
「お供ということですな」
 安積も言ってきた、こちらは切れ長の目で四角い顔である。眉は細い。見れば二人共長身で光圀よりも大きい。
「そうなのですな」
「うむ、お主達は文武両道」
 どちらも秀でているというのだ。
「だからじゃ」
「お供に選んでくれましたか」
「そうしてくれましたか」
「うむ」
 その通りだとだ、光圀は二人に答えた。
「そしてわしもな」
「学問にですな」
「武芸も身に着けておられる」
「だからですな」
「どうなろうとも」
「避けられる、それにあの陣のことはわかっておる」
 その八面遁甲の陣のこともというのだ。
「だからな」
「それで、ですな」
「中に入っても術にかかりませぬな」
「左様じゃ、お主達もあの陣のことは知っていよう」
 光圀は自分の後ろを護る様に歩いている二人に問うた。 
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