Fate/WizarDragonknight
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銀から赤へ
「さあ、人間ども! 絶望してファントムを生み出せ!」
その言葉を、これまでハルトは何回聞いてきただろう。
逃げる人の波に逆らいながら、ハルトは思った。
見滝原、その木組みの街と呼ばれる地区の一角にある商店街。
狭い車道が乗り捨てられた車で渋滞になっており、その合間を人々が逃げ惑う。
そして、その先にその姿はあった。
「ファントム……!」
背中から金管楽器のような部位を生やしながら、大声を上げる騎士のような異形。ファントムと呼ばれる、人の絶望から生まれた魔人。人を絶望させ、同じファントムを増やそうとしている。
ハルトはヘルメットを脱ぎ、マシンウィンガーを停める。そのまま、人々の波に逆らって、ファントムへ駆けつけた。
すると、ファントムは逃げる人々とは逆に向かってくるハルトの存在に気付き、鼻で笑った。
「人間……不用心だな。わざわざ絶望しに来たか!」
そのままファントムは、ハルトへ背中の砲台から光弾を放った。
乗り捨てられた車に命中、爆発していくが、その爆風に煽られながら、ハルトはファントムの腰にしがみつく。
「貴様っ!」
「捕まえた!」
ハルトはそのままファントムを、商店街のメインストリートから外へ押し出していく。
「離れろ人間!」
ファントムに押し流され、ハルトは地面を転がる。
「貴様、いい度胸だ。絶望してファントムにしてやろう」
だがハルトはそれを無視しながら、腰のホルスターから指輪を取り出す。
『ドライバーオン プリーズ』
指輪を腰に当てると、その音声とともに、ベルトが変わっていく。安いゴムのベルトから、銀で出来たベルトへ。
「悪いけど、あんまり長々と遊んでいる時間はないんだ」
ハルトはベルトの端にあるつまみを動かす。すると、ベルトの中心にある手のひらのオブジェが、つまみに応じて動く。
『シャバドゥビダッチヘンシーン シャバドゥビダッチヘンシーン』
「だからさっさと終わらせる」
そして、ホルスターからノールックでルビーの指輪を取り出し、左手中指に嵌める。
その頭頂部に付けられている飾りを下ろし、それを顔のようなものにしながら告げる。
「変身」
『フレイム プリーズ』
指輪をベルトにかざす。すると、伸ばした左腕の先に、燃えるように赤い魔法陣が出現した。
『ヒー ヒー ヒーヒーヒー』
それはゆっくりと、ハルトの体を通過していく。ハルトの体を作り変えていくそれは、ハルトから黒いローブとルビーの装飾を持つ魔法使いの降臨の合図だった。
「貴様、指輪の魔法使いか!」
ファントムが剣でハルト___今はウィザードと呼ばれる存在___を指す。
それに対し、ウィザードは別の指輪を右手に入れた。そのままベルトを再度操作し、手のひらの向きを逆にする。
『ルパッチマジックタッチ ゴー ルパッチマジックタッチ ゴー』
「知ってもらえて光栄だね」
ウィザードはそのまま指輪をベルトにかざす。すると、指輪に内包された情報がベルトに読み込まれ、魔法となる。
『コネクト プリーズ』
すると、ウィザードの右手のすぐそばに赤い魔法陣が出現した。
手を突っ込むと、あたかも魔法陣は収納箱だったかのように、銀の銃を吐き出した。ウィザードのベルトと同じ手のオブジェがついたそれは、ウィザーソードガンと呼ばれる銃剣である。
ウィザードはその銃口を向けながら言った。
「すぐに終わらせるよ」
「ぬかせ!」
その挑発に対し、ファントムは盾を構えながら突撃してくる。
盾を持っているのもあって、ソードガンの発砲は通じない。
「だったら……!」
ウィザードは、腰のホルスターから別の指輪を取り出した。同じようにベルトを操作して、読み込ませる。
『ビック プリーズ』
同じように発生した魔法陣に、ウィザードが手を入れる。すると、本来のものとは何倍の大きさとなった腕が、ファントムの体を弾き飛ばした。
「ぬあっ!」
地面を転がったファントムへ、再びウィザードは指輪を入れようとする。
だが、起き上がったファントムが「させるか!」と、背中の射出口より光弾を発射した。
紫色のそれは、容赦なくウィザードの足場を爆発させた。
だが、命中する前、ウィザードはすでに指輪を発動させていた。それは、これまで使っていた魔法行使の指輪ではなく、形態変化の魔法。
『ランド プリーズ ドッドッ ド ド ド ドンッドンッ ドッドッドン』
爆風が晴れた時、すでにルビーのウィザードは、トパーズへと変化、さらにその前には巨大な土壁がその攻撃を防いでいた。
「何っ!?」
「言ったでしょ。速攻で終わらせるって」
ウィザードはさらに指輪を入れ替える。
「新しい指輪。使わせてもらうよ」
『ドリル プリーズ』
ウィザードはその場で回転する。すると、魔法の名前の通り、ウィザードはドリルとなり、地面へ沈んでいった。
「な、何!?」
いなくなったウィザードの姿を探して、ファントムが周囲を警戒する。
だが、探すよりも先に答えは現れる。ファントムの背後に現れたウィザードは、回転蹴りでファントムを打ち倒す。
「これで、終わらせるよ」
ウィザードはそう言いながら、新しい指輪に手を伸ばした。
だがその瞬間、ファントムの言葉をウィザードは聞き逃してしまった。
「勝機発見……! 不用心だな……」
「ハルトさん……?」
怪物に単身で挑んでいったハルトを探して、人がいなくなった街をココアは走っていた。
姉を迎えに行こうとしたら、ウサギに遭遇。ついつい追いかけてしまった矢先で、怪物騒ぎに遭遇。逃げるとき、見覚えのある人影が怪物へ立ち向かっていくのを目撃した。
非現実的な怪物に襲われるのも三回目になる。そんな慣れを覚えてしまっている自分に驚きながら、ココアは見慣れた長身の姿を探した。
その時。
「動くな!」
そんなドスの利いた声が、ココアの注意を引いた。見れば、少し離れた道路に、騎士の姿をした怪物がいた。盾も半壊し、姿も傷ついているが、そんな彼に哀れみを抱けなかったのは、彼の左腕に小さな女の子が捕まっているからだった。
「お前……!」
そして、怪物と向かい合うもう一つの異形。黒いローブに、トパーズのような装飾。魔法使いのような風貌の人がそこにいた。
だが、彼は少女を見ながら、動けないようだった。体を前に進めては、少女の姿をみてまた元に戻している。
「少しでも動いたら、この人間が絶望どころじゃない目にあうぞ?」
怪物が少女の頬に剣を当てる。鋭い刃が、彼女の柔肌を傷つける。
「おっと、動くなと言っているだろ!」
怪物がそう叫びながら、背中の砲台より光弾を発射する。
腰のホルスターへ手を伸ばそうとしていた魔法使いは、それに対して防御できずに被弾、弾き飛ばされた。
「不用心だな。……まさか、このガキゲートだったりしないか? それなら、絶望したらファントムも増えるから一石二鳥だ」
「させるか……!」
魔法使いが唇を噛むが、怪物は光弾での攻撃を怠らない。どんどんダメージが蓄積され、魔法使いの姿は乗り捨てられた車の向こうに見えなくなってしまった。
邪魔者を消した怪物は、そのまま少女を自身の顔と同じ程度の高さへ持ち上げる。恐怖でおびえる少女の顔が、ココアからもよく見えた。
「さあ、お前を助ける者はもういない。絶望してファントムを生み出せ!」
「いけない!」
気付いた時にはもう、ココアは駆け出していた。
何ができるかなど分からない。だが、あの少女を助けるために動かなくてはと、体が勝手に動いていた。
そして。
何がそうさせたのか。
ポーチの中にある、白い棒。それを取り出し、まるで刀を鞘から引き抜くように、それを抜く。
淡い光を放つそれは、ココアの姿を包み、みるみるうちにその姿を変えていった。
そして、その光の中、ココアの意識はだんだん薄れていった。
「ぬおっ!」
そんな声が、ファントムから聞こえてきた。
変身を解除されたハルトは起き上がり、現状確認のために再びファントムと対峙したところに戻ってきた。
そして、言葉を失った。
「……え?」
そこにいたのは、銀。
銀の異形が、裏拳でファントムの顔面を殴り飛ばし、人質となっていた少女を抱えているところだった。
彼(?)はそのまま少女を下ろし、そのまま彼女が逃げ去るのを見送る。そして、ファントムと向かい合うと同時に、その顔をこちらに見せてくれた。
「人間……じゃない……!」
それは、人間といえる姿ではなかった。人類と同じように、円形に近い顔に目、鼻、口はあるのだが、目は白のみで瞳孔もなく、表情も石像のように固定されている。グレーの体色のボディのところどころに赤い装飾がされており、無言のまま、それは格闘ポーズをファントムへ向けた。
「貴様、何物だ!?」
怒り心頭のファントムが怒鳴る。しかし、銀は答えることなく、ファントムへ挑みかかった。
「小癪な!」
ファントムの砲台より放たれた光弾。それは、銀に命中し、的確なダメージを与えていく。
だが、銀は全く痛がる様子を見せない。全身に力を込めて踏ん張っていた。
そして、銀は胸元へ手を握る。
そして、その手を大きく振ると同時に、その姿が赤く変わっていく。もはや銀と形容できないほどに赤の比率が増した彼は、さらに次の動きに入る。
右手に装着された、アンクレットが灯す緑の光。それを天に高く突き上げると、そこから現れた光の雨とともに、あたかも空間のように光が形成されていく。
やがてドーム状に降りていくそれは、彼とファントムの姿をハルトの前から消し去った。
そこには、乗り捨てられた車の他、何も残る物はなかった。
「消えた……!」
ハルトは、ただその事実を茫然と呟くほかなかった。
「な、何だここは……!?」
ファントム、スプリガンは驚いていた。
街で人々を絶望させようとしていたのに、魔法使いどころか、謎の銀の人物の妨害により、計画が全て破綻してしまった。
それだけならばまだしも、この銀___今は赤___の人物の仕業か、今いる空間は、先ほどまで暴れていた空間でさえない。彼が発した光により、現在地が赤土色の地面、オーロラのような空の世界になっていたのだ。
「ええい、貴様、一体何をした!?」
だが、赤がそれに応えるはずもない。掛け声とともに、この敵はスプリガンへ襲い掛かってきた。
「不用心だな!」
スプリガンは、再生成した盾で赤の拳を防ぎ、逆に剣で応戦する。
赤はそれを防御するが、所詮素手。やがて武器を持つスプリガンには旗色が悪くなり、やがてスプリガンの剣の前に体が引き裂かれていく。
「食らえ!」
スプリガンの光弾。それは、赤を周囲の空間ごと爆撃していく。
だが、少し後ずさった赤は、両手を真っすぐ天へ伸ばす。それを胸元で何かを形作る動きをして、地面を指さす。
すると、地面から突風が吹き荒れる。やがて赤土色の成分が混じったそれは竜巻となり、赤の動きに呼応しながらスプリガンを襲う。
「な、何だこれは!?」
スプリガンは盾で防御しようとする。だが、風という形のない攻撃に対し、盾は無力だった。吹き飛んだ盾を見送りながら、スプリガンの体はネジのように赤土へ下半身を埋まらせていった。
「う、動けない……」
さらに、それは赤に対して完全なる無防備だった。
例え動作の大きい動きにしても、スプリガンに抵抗の術がないことを意味していた。
赤は、左手を、次に右手を腰の前に突き出す。交差させた両手から、電子のような光が溢れた。
両腕の間に走る電撃を走らせたまま、肩の高さまで持ち上げる。
次に、赤はその両腕を伸ばし、高く掲げた。両腕に走る電光が、これまでとは比にならないほどの光量となる。
人間なら、直視できない光量。それを両腕に集約させた赤は、両腕をL字に組んだポーズをする。すると、その縦にした部分より、眩いほどの光のエネルギーが発射された。
「ま、まずい!」
防御を最優先と判断したのであろう。スプリガンは、再生成した盾を使い、それを防ごうとした。
光線が盾に命中。だが、連続的な光の前では盾など役に立たず、即座に崩壊、光の奔流はスプリガンに炸裂、そのまま貫通した。
「がはっ!」
体を貫かれたスプリガンの体は、徐々に青くなっていく。
やがて、体の力が抜けたスプリガンは、そのまま倒れ、爆発。赤土色の空間の中で、分子の一つさえも残さずに消滅していった。
空間が波打つ。
「今度はなんだ!?」
超自然的な現象に、ハルトは身構える。
やがて、垂直になった水面のように、空間は破裂。
その中から、例の赤い人影が現れた。
「……」
ハルトは少し黙って見つめていたが、やがて赤がこちらに視線を合わせたため、彼に駆け寄る。
「ふぁ、ファントムは?」
その問に対し、彼は静かに頷くだけだった。
ハルトは唇をきっと結び、さらに問い詰める。
「アンタ、一体何者なんだ? まさか……」
ハルトは彼の肩を掴む。
「聖杯戦争の、参加者なのか!?」
だが、赤はそれには答えない。ハルトの手を取り払い、空を見上げる。
そして。
「ま、待て!」
赤はそのまま、両手を真っすぐ伸ばして空へ飛んでいった。
戦闘機もかくやというスピード。あっという間に空の点となり、見えなくなった赤を睨み、ハルトはため息をついた。
「アイツ……一体何者なんだ?」
だが、そんなハルトの気を引いたのは、近くの物音だった。
見れば、そっちには、見覚えのある少女の姿があった。
「ココアちゃん!」
両ひざに手をついて、息も絶え絶えになっているココアの姿だった。
後書き
コウスケ「……」
響「……さん! コウスケさん!」
コウスケ「ハッ! 目を開けたまま寝てた!」
響「大学大変だね……あ、焼き鳥美味しい」
コウスケ「こいついっつも焼き鳥食ってんな……大変だぜ。ムーのうんたらかんたらのせいで教授も熱中してたからな。レポート課題が毎日のように出てくるんだよ……」
響「へー」
コウスケ「他の授業だってあんのに……なあ、響。少し手伝ってくれねえか?」
響「何すればいいの?」
コウスケ「この参考書の付箋のページにマーカー付けしてある単語を、なんとなくレポートっぽくまとめてくれ」
響「……」←目グルグル
響「わたし、高校生ってこと忘れられてるよ絶対!」
コウスケ「お前高校生だったの!?」
響「今をときめく現役JKですよ私! あ、そろそろ今回のアニメ、どうぞ!」
___だって だって 怖いの。 ふにゃって しちゃって 困るの___
コウスケ「くまみこ! って、俺たちの知り合いに巫女っていなかったか?」
響「可奈美ちゃんと友奈ちゃんが原作だと巫女って呼ばれてる気がする」
コウスケ「放送期間は2016年の4月から6月だぜ」
響「田舎の女の子、雨宿まちちゃんが、熊と一緒に暮らしていく日常コメディ……熊!?」
コウスケ「ああ。熊だ」
響「熊って……喋るんだ……」
コウスケ「映画見て飯食って寝るだけでハチャメチャやるやつがいる世界の人間が何を言ってんだか」
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