イベリス
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十話 アルバイトその三
「本当にね」
「はじめてだろ」
「けれどいいことだからね」
「頑張ってくるんだぞ」
「真面目に働いてくるのよ」
「そうするわ。真面目に働いて」
そうしてとだ、咲は両親に答えた。
「お金稼ぐはね」
「お金を稼ぐだけじゃなくてな」
父はそう言う娘に笑って話した。
「世の中の色々なことも知ってな」
「そしてなの」
「学ぶんだ」
「世の中のこともなの」
「それが仕事なんだ」
「お金貰うだけじゃないの」
「そうだ、色々経験もするからな」
だからだというのだ。
「働くことはいいんだ」
「そうなのね」
「だからな」
「アルバイトはいいのね」
「仕事はな」
「そうなのね」
「自分を磨くことにもなる」
仕事はというのだ。
「だからどんどん働いてこい」
「そうするわね」
「そしてな」
父はさらに言った。
「今以上に人間としてだ」
「成長するのね」
「そうなるんだ」
こう娘に言った。
「仕事の中の経験を積んでな」
「だからなのね」
「頑張ってな」
「働いてくることね」
「そうだ」
まさにというのだ。
「そうして来い」
「お母さんもそう思うわ。お母さんもパートしてるでしょ」
母も言ってきた。
「そうしたらね」
「パートでもなのね」
「その中でね」
「やっぱり経験を積んで」
「自分を磨けるのよ」
「そうなのね」
「だからね」
それでというのだ。
「働いてきなさい、ただお金を稼いでも」
母は娘にこうも言った。
「無駄遣いはね」
「駄目よね」
「お金があってもよ」
それでもというのだ。
「無駄に使うことはね」
「駄目よね」
「貯金して」
「いざという時に置いておく」
「そうよ、お金は大事よ」
「何といってもね」
咲もお金のことはその通りだと頷いた。
「だから無駄遣いなんかしたら」
「幾ら持っていてもね」
「あっという間になくなるわね」
「ほら、五十億以上稼いだ野球選手いたでしょ」
「あの刺青入れた」
咲は母が今言った選手が誰かすぐにわかった、それでその選手の顔を脳裏に思い浮かべながら母に応えた。
「覚醒剤もやってた」
「あの人自分が稼いだお金何処に行ったってね」
「言ってるの」
「今お金なくてね」
そうした状態に陥ってというのだ。
ページ上へ戻る