刃こぼれ
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第四章
「いいな」
「そのことは何があろうとも」
「なら行くといい、達者でな」
住職は音八を送ることにした、僧も飴屋もだった。
彼を送り出した、そして数年後。
三人は寺に戻ってきた音八から話を聞いた、その話はというと。
「そうか、無事にか」
「仇討ちを果たしました」
音八は住職に答えた。
「そうしました」
「一体どの様にして仇を取った」
住職は音八にそのことを問うた。
「それで」
「はい、小田原の刀鍛冶に弟子入りしまして」
「そこでか」
「数年修行をしていますと」
その時にというのだ。
「一人の浪人が刀を研ぎに来ましたが」
「その浪人がか」
今度は僧が尋ねた。
「仇だったのか」
「刀の刃にこぼれがあったので」
「その訳を聞くとか」
「小夜の中山の峠で」
そこでというのだ。
「身重の女を切りそこで石まで切ったとのことで」
「あの石か」
飴家はすぐにわかった。
「そういえば傷もあったか」
「そのことからです」
「その浪人が仇とわかったか」
「それでその場で、です」
まさにその時にというのだ。
「一太刀で」
「切りましたか」
「そうしました、その後で師にも話をして」
「わかってもらったか」
「そうして小田原を後にして」
そのうえでというのだ。
「ここに報告に来ました」
「全てわかった、それでじゃが」
住職は全て聞いてから音八に尋ねた。
「これからどうする」
「これからですか」
「左様、仇は取った」
それは果たしたというのだ。
「願いはな、だがそなたはまだ生きている」
「はい、この通り」
「まだこの世の生はある」
「その生で、ですね」
「一体何をするか」
「憎い仇ではありました」
源八は住職に静かな声で答えた。
「確かに、ですがそれでも人でした」
「人を殺めたからか」
「仇討ちは罪に問われませぬが」
それでもというのだ。
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