八条学園騒動記
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第六百十五話 またコーヒーを淹れるその五
「現実は」
「そうよね」
「本当に完全に清潔な世界なんてね」
「人間では有り得ないし」
「そしてそれを目指したら」
「かえって悪い社会になるのね」
「そういうものだと思うよ、人間には悪い心があって」
このことは事実でというのだ。
「そして独善にも走るからね、他人も認めなくなったりもね」
「あるわね」
「そう、だからね」
「完全に清潔な世界は」
「危険だしね」
「目指すものでもないわね」
「例えばユダヤ人を悪として」
菅は具体的な例も出した、それは連合の人間ならばそれこそ誰もが知っている話であり話を聞いている面々もそれはと目で応えた。
「どうするか」
「ナチスね」
「それね」
ジュディだけでなくカトリも言った。
「敗戦も恐慌もユダヤ人のせい」
「そう言ってね」
「徹底的に弾圧して虐殺した」
「そうしたわね」
「そうもなったしね」
ナチスのその悪行も話した。
「それで悪い奴とされていた人を排除したら」
「あれだな、排除しろと言っていた奴がな」
フックが応えた。
「実はな」
「その悪いとされていたよりもね」
「遥かに悪い奴でな」
「実は裏工作とかもしていて」
「その悪い奴を排除した後で出て来て」
「その場を完全に取り仕切って」
「やりたい放題でな」
フックは眉を顰めさせて話した。
「もう悪の限りを尽くす」
「そうしたこともあるよ」
「悪い奴さえいなくなればよくなる、だな」
「そう言ってね」
「もっと悪い奴が出て来てな」
「完全に清浄な世界になると言っていたのに」
そのさらに悪い奴がというのだ。
「それがだよ」
「余計に酷くなるな」
「そうなることだってあるよ」
「それも世の中だな」
「うん、悪意持った奴が善人ぶることもね」
「人間あるな」
「こうした奴は論外でね」
菅はさらに言った。
「冗談抜きにこうした奴こそ排除しないと」
「腐るな」
「そう、その場がね」
「そうだよな」
「そう言って街の治安取り仕切ってる自警団漫画で読んだことあるよ」
ルシエンが言ってきた。
「俺達は正しいことをしているってね」
「言ってたんだ」
「うん、けれどね」
「自警団って危ないよ」
菅はここでも無表情だった。
「法律の制御受けないから」
「警察と違ってね」
「だからちょっと勘違いしたら」
その時点でというのだ。
「物凄く簡単にね」
「マフィアになるね」
「だから辺境外縁部もね」
連合の国境の外にあった諸星系だ、百億単位の不法出国者がいてそれぞれコミュニティを形成していた。
「無法地帯だったんだ」
「自警団はあったけれど」
「その自警団がね」
「問題だね、その漫画でもね」
ルシエンはさらに話した。
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