ツバサ -DECADE CHRoNiCLE《ディケイドクロニクル》-
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第5話:襲撃のアシオト
前書き
女子は日常を楽しみ、男子は世界をうつろう。
この世界での英雄は何処へと消えていったのか。
某所、何処かの高いビル。
そこの屋上に尚樹とゴーストイマジンの姿があった。
尚樹は忌々しそうに眼下に広がる街を眺めながら呟いている。
「あいつら、一体何処にいやがるんだ」
『早く会ってみたいもんだ。真っ二つに割ってみたい』
「見つからなきゃ意味がないがな……」
大剣を振り回しながら暇を弄ぶゴーストイマジンに、尚樹はイラつきながら言葉を飛ばす。
2人の狙いは、あの時とり逃した妙な一行―――小狼達だ。ディケイドと名乗る部外者に邪魔され、渋々とり逃したが今回はそうはいかない。
拳を握りしめ、歯を食いしばっている尚樹の元に黒服の一人がやってくる。
「申し上げます。例の一団、発見されましたとウワバミ様から連絡がありました」
「はっ、ようやくか。すぐ向かうと伝えろ」
尚樹の命令に従い、黒服はすぐさま屋上を去って行く。
首に手を当てて音を鳴らしながら回すと、尚樹はあるものを懐から取り出す。
黒いパスケースのようなアイテムを手にし、ゴーストに見せながらこう告げる。
「さぁ行くぞ、ゴースト。これからは俺達の狩りの時間だ」
――――
その頃、士達五人は通りすがりで見つけたケバブサンドの販売店にて昼食を取っていた。
情報収集で時間が押して、手軽なものとして選んだのは焼いたチキンをふんだんに使いピタパンで挟んだ食べ物だ。
ユウスケと黒鋼は勢いよく被りつき、その美味しさに舌鼓をうつ。
「うっひょー、美味しいなぁコレ!」
「タレはちと辛いが味は確かだな」
「うーん、オレは甘い方が好きだねー」
ファイは2人が齧り付く姿を見ながら、甘いソースが掛かったケバブサンドを食している。
一方、一足早く食べ終えた小狼と士はとある話題について話していた。
「士さん、一つ訪ねたいことがあるんです」
「なんだ?言ってみろ」
「さっき士さんが言っていた言葉が気になっていていたんです。『ここで仮面ライダーが出てくるはず』と」
「まったく、お前は目ざといな。小狼」
小狼の言葉に士はやれやれといった表情で観念し、自分の知っているライダーについて話を始める。
……士達の今まで旅してきた世界では何処も共通してその世界を守る『仮面ライダー』や、それに準ずる世界を守る戦士たちがいた。
本来ならば彼らのような仮面ライダーもこの世界にいるはずなのだが、今集まっている情報だけ見てもそれに関する情報が見当たらない。
もしかしたら、『元々怪人達が蔓延る世界』なのかもしれない、と士は言葉を続ける。
「……ま、あくまでも俺の推測だけどな。気にするな」
「きっといますよ。士さん達と共に戦ってくれる人達が」
「どうだかな。俺は『全てのライダーを倒す仮面ライダー』ってもっぱらの噂だ」
昼食という束の間のひと時を過ごす士達五人。
だがそこへ、つんざくような悲鳴が響き渡った。同時に破壊される音が聞こえ、そこから人々が逃げる様子が伺える。
異変に気付いたユウスケは士の名前を呼ぶ。
「士!もしかしたら…」
「ああ、わかってる。いくぞ……」
士とユウスケは三人より一足先に現場へ向かっていく。
2人が辿り着くとそこには、怪人達を連れた黒服達の姿があった。足元には怪人達に襲われたと思われる警察官姿の犠牲者達の姿が転がっていた。
それを見た士とユウスケは表情を歪ませる。
「随分と暴れっぷりじゃねえか。お前ら」
「酷い……罪もない人達になんてことをするんだ!!」
怒りと悲しみに孕んだ声を上げて、黒服達を睨み付ける二人。
黒服達は何も答えず、代わりに彼らの傍から出てきたのは二体の怪人……ローマ兵を模した銀色の亀の怪人と、機械めいた外見を持つ緑色の蜘蛛の怪人。
亀の怪人……『トータスロード』と、蜘蛛の怪人……『ソロスパイダー』は二人に襲い掛かろうとする。
「アンノウンにミラーモンスターか」
「士!行くぞ!」
「当然だ!」
2人は襲い掛かってきた二体を何とかいなして距離をつめると、変身の準備を行う。
士はディケイドライバーを腰に装着、ライドブッカーから一枚のカードを取り出して構える。
ユウスケは拳法の構えを取ると、腰に霊石がはめ込まれた銀色のベルト"アークル"が出現する。
それぞれ、準備を終えた二人は揃えて掛け声を言い放った。
「「変身!」」
2人はそれぞれ変身し、士はいくつもの像が重なって、マゼンタの仮面の戦士・ディケイドの姿へと。
一方、ユウスケはその姿を赤い戦士の姿へと変えていく。金色の角に赤い瞳、漆黒の体に赤い装甲……超古代の戦士『仮面ライダークウガ・マイティフォーム』へ変わる。
二人の仮面ライダーが並び立ち、襲いかかる怪人たちへ向かっていった。
――――
一方、その頃。
士達の後を追いかけて向っている小狼・黒鋼・ファイは大きな陸橋に差し掛かっていた。
遠くの方では、士達の変身した仮面ライダー達が怪人達と戦っている姿が伺え、黒鋼がそれを見ながら呟く。
「あいつらは一足先に戦ってるようだな」
「急ぎましょう!」
小狼に言われ、一同は走る速度を上げて現場へ向かおうと駆けていく。
だがそこへ一つの人影が立ち塞がり、黒鋼へ飛び掛かってくる。
「チッ、テメェ何者だ!」
黒鋼は咄嗟の反応へ避けると、襲い掛かってきた相手の姿を確認する。
帽子を深く被った男性は口元をニヤリと歪ませると、黒鋼の顔目掛けて掌底を叩き込もうとする。
寸でのところで相手を突き飛ばす事によって避けた黒鋼は、帽子の男性をよく見た。
黒服達と同じ外見と特徴を持つ彼は、身に着けている衣服についた埃を払う仕草をすると、高らかに声を上げた。
「Ladies and gentleman!先日は仲間が世話になったねぇ?ああ、オレの名前は"ウワバミ"だ。以後お見知りおきを」
オーバーリアクションをしながら、帽子を外す男性……もとい、ウワバミ。
鈍い光を放つブロンドヘアーと、蛇の眼光のように鋭い目付きが三人に突き刺さる。
彼は何処からか取り出したステッキをクルクルと回しながら、小狼達三人に向けて訊ねてみた。
「さーてと、キミ達に特に恨み辛みはないが、対処させてもらうけど……いいかな?」
「えー、あんまりそういうのはちょっとなー」
「つーか、テメェあの黒服達の仲間だろ?だったらブッ倒す相手に変わりはねえ」
嫌がる素振りをするファイと、交戦的な態度を示す黒鋼。
二人の様子をにやついた表情で、回してたステッキを止めると、その杖先を三人に向ける。
「だったら、ちょっと遊んでいこうかな……ソォヤァッ!!」
帽子を深くかぶりすとウワバミは一歩踏み出し、ステッキを振るい翳す。
攻撃を避けると黒鋼はウワバミへ取っ組み合い、身動きを取らせないようにすると小狼へ向けて叫んだ。
「小僧、先に向かえ!」
「わかりました!」
黒鋼の言葉に制され、先にディケイド達の所へ向かう小狼。
走っていく小狼の姿を見ながら、ウワバミは黒鋼達に不気味な笑みを見せながら訊ねてみる。
「おやおや、お仲間をお一人で行かせていいのかい?」
「あん?どういう事だ!」
「なあに、キミ達二人程度でオレを止められると思ったら大間違いってこと!」
「ぐっ!」
一瞬で拘束を解いたウワバミが繰り出した握り拳は黒鋼の胸板に直撃する。
黒鋼はよろめき、その間に彼はバックステップで距離を離していく。
すぐに立ち上がった黒鋼へファイが傍に駆け寄って状態を伺う。
「黒さま、大丈夫」
「問題ない……しかしアイツ、見た目に反してかなり強ェぞ」
「あっはっはっはっは!褒めても何も出ないっての!」
ウワバミは帽子を深く被り直し、再び黒鋼とファイへ向き直る。
その眼には鋭い光を宿して、ステッキを構える。
「さて、と。人数は二人、遊ぶにはちょうどいいかな?」
口元を三日月状に歪ませて、ウワバミは一歩前へ踏み出す。悠々とした気分で二人へ攻撃を仕掛けていった。
―――――
場面は変わり、ディケイドとクウガVSトータスロード&ソロスパイダーの戦闘は続いていた。
ディケイドはライドブッカーによる銃撃を繰り出すも、トータスロードの背中にある甲羅によって弾かれしまう。
そのトータスロードの頭上を飛び越えてジャンプしてきたソロスパイダーが両腕の巨大な爪で襲い掛かる。
『シャアアァァァ!!』
「させるか!」
ディケイドへ爪が迫る寸前、地面を蹴って飛び上がったクウガが横からタックルを仕掛けてソロスパイダーを吹っ飛ばす。ディケイドはソードモードへと変えたライドブッカーでトータスロードを斬りかかっていく、対してトータスロードは両腕の装甲で防ぐと、一歩下がって距離を離した後に天使の輪のような発光体が出現。
すると、トータスロードの体はまるで水に入るかのように地面へ沈んでいく。完全に沈み切り、泳ぐように移動するその様子を見てディケイドは"その能力"を察して舌打ちを打つ。
「お得意の超常現象か……!」
『ギシャアアッ!!』
「ぐああああ!」
地面から飛び上がってきたトータスロードがディケイドへ突撃していく。
トータスロードが何度も突撃され、ディケイドのから火花が散り勢いのあまり地面へと転がり込む。
クウガは相手をしていたソロスパイダーを蹴り飛ばすと、ディケイドに駆け寄って助け起こす。
「士、大丈夫か!」
「なんとかな……ユウスケ、緑のクウガに変われ。何処からか襲ってくる相手なら有効だ」
「なるほど、わかった!超変身!」
ディケイドの助言を元にクウガは構えをとり、その姿を変えていく。
複眼と装甲は緑に変わり、その手には近くにあった拳銃を変化せたボウガン型武器・ペガサスボウガンが握られていた。
全てを察知する超感覚を宿す緑の戦士・クウガ・ペガサスフォーム。
早速周囲の状況を探り、その意識を地面の下へと集中していく。
様々な雑音の中、クウガは地面をかき分ける音……トータスロードの地面の中を潜る物音を聞き取る。
その位置は……ディケイドの後方から聞こえて来た。クウガがディケイド目掛けて叫ぶ。
『ギシャアア!!』
「―――後ろだ!」
襲い掛かっていくトータスロードの気配を既に察知していたクウガは、ペガサスボウガンの引き金を引く。
銃口から発射された空気の弾丸による一撃『ブラストペガサス』が直撃し、地面へと倒れこむ。
本来ならば急所に当たればグロンギですら一発にて仕留められる威力だが、分厚い甲羅によって守られていたのか致命傷にはならずにトータスロードはよろよろと立ち上がる。
しかし、攻撃を緩める隙も与えずディケイド次の一手が叩き込まれる。
「動くなよ、動くと痛いぞ!」
【FINAL-ATTACK-RIDE…DE-DE-DE-DECADE!】
『ギッ!?』
電子音声に気付いて見上げると、いくつものカードの形をしたエフェクトを突っ切ってゆくディケイドの姿があった。
ディケイドの必殺キック『ディメンションキック』が炸裂、トータスロードは十数メートルまで蹴り飛ばされる。
地面へ叩きつけられると光の輪が出現し、その瞬間爆発をしてその身を散っていった。
「まず一体、撃破だな」
「―――士さん!ユウスケさん!」
まず一体倒した事を確認したディケイド達の元へ小狼が駆けつける。
呼びかけられた声に気付き、2人は手を出してそれ以上来ることを制止する。2人のライダーはソロスパイダーの他にやってきた『次なる敵』へ気付いたのだった。
小狼がやってきたのをそのタイミングを見計らってか、黒服達の分けて出てくるものがいた。
―――鬼頭 尚樹とゴーストイマジンだ。
「ようやく出会えたなぁ、餓鬼」
「お前は……」
「お前は確か、あの時いた……」
「ディケイド……いずれお前の相手もしなくちゃならんが、今はその小僧をやるのが先だ。邪魔すんじゃねえぞ」
尚樹は小狼とディケイドを忌々しそうにそう言うと、懐から黒いパスを取り出す。
すると、尚樹の腰に『T』の文字にも『T字の線路』にも見えるバックルのついたベルト出現。
ゴーストイマジンに呼びかけた尚樹は、バックルの横についたスイッチを押すと周囲にくぐもったような音色が響き渡る。
「いくぞ、ゴースト」
『あっはっはっは』
「変身」
【Scull Form】
尚樹は黒いパス・ライダーパスをベルト・ユウキベルトのバックルに翳すと、周囲にフリーエネルギーのエフェクトが発生。
それらが尚樹の体に付着し、銀色のライダースーツのボディに変わると、ゴーストイマジンが彼の体に憑りつき、同時に出現した黒い装甲が装着。
最後に頭部に髑髏がついた海賊帽子を模した仮面が装着され、変身を遂げる。
腰にはマント、首元には線路のようなマフラーがとりつけられ、手にはゴーストイマジンが持っていた大剣が握られている。
まるで仮面ライダーのような姿を見て小狼は驚いた。
「……あれって、まさか……仮面ライダー……?」
「アイツも変身できたのか!?」
「……大体わかった、こういう世界ってことか」
黒服の一人が変身したライダーの姿にクウガは驚き、ディケイドは『この世界でのライダー』の全容を少しばかり理解した。
―――目の前にいる仮面ライダーは、『この世界の人々を脅かす存在』であると。
尚樹の変身した仮面ライダーは、ゴーストイマジンと重ねたような声で名乗り上げた。
『「―――自己紹介ついでに名乗っておくか」』
『「―――オレ達【ネオライダー】が一人、幽汽……仮面ライダー幽汽だ!」』
尚樹の変身した『仮面ライダー幽汽』は、大剣を振りかざしディケイド達へと襲い掛かっていった。
この世界……"ネオライダーの世界"での戦いは、まだ始まったばかりであった。
後書き
どうも地水です。
ようやく本格的にネオライダーの襲撃していく頃合いです。
1話休憩しての挟んでの戦闘シーンは楽しい!
それにしても黒様、普段剣を預かってるモコナを置いてきてよかったのだろうか←
ネオライダーが一番槍、仮面ライダー幽汽!ジオウではいいところないまま終わった幽汽!←
1話でもお話していた通り、かつて誰かがやっていた小説を元にディケクロをやってます。この選抜ライダーの幽汽も当時に添ってやっております。
次回は幽汽との激闘。そこへ現れるのは……?
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