迷子の犬
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第三章
犬を見て言った。
「よかった、本当にいるんだ」
「ワンワン!」
犬は彼を見ると嬉しそうに鳴いた、そして。
彼の傍に来て尻尾を振った、マーティンもこれでわかった。
「飼い主さんですね」
「はい、この人が」
「再会出来て何よりですね」
「全くです」
「しかしよくここまで来たな」
飼い主のスニーはキュー=サンを見つつ言った。
「レストランからここまで来たことないのに」
「記憶のつてを何とか辿ってなんでしょう」
院長は首を傾げさせた彼に答えた。
「ちらりと見て覚えていた場所を頼りに」
「ここまで来てですか」
「貴方がいると思って」
「そうですか」
「そう思いますが」
「奇跡みたいな話ですね、しかし」
それでもとだ、彼は今度は笑顔で言った。
「こうしてまた一緒になれて何よりです」
「左様ですね」
「はい、今度からは脱走しない様に気をつけます」
「そこはお願いしますね」
「正直心配しましたから」
二人の会話を聞いていたマーティンそして彼の妻はタイ語はわからない、だがそれでも雰囲気で何と話しているのかはわかった、それでだった。
二人は病院の院長そしてスニーと別れてだった。
屋台に入ってそこで鶏肉料理に汁のビーフンを食べた、そうしつつ二人で話した。
「奇跡みたいな話だったね」
「そうよね」
「迷子の犬が道もわからないでやって来るなんて」
「何年か前に貴方の警察署でもあったわね」
「うん、けれどね」
それでもとだ、マーティンは話した。
「その話も奇跡みたいで」
「今度の話もよね」
「こうしたことはあるんだね」
「アメリカでもタイでも」
「そうだね、そして飼い主と出会えてね」
「よかったわね」
「全くだよ、ずっと迷子なんて気の毒だからね」
マーティンはビーフンを食べながら言った、そうしてだった。
犬の話をさらにしていった、その話を楽しくして屋台の食事も楽しんだ。二人の新婚旅行はこのことが一番楽しくいい思い出になったと夫婦は後になっても話した。
迷子の犬 完
2021・5・25
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