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迷子の犬

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第二章

 犬が連れて来られるとだった、男がチコと呼んだ犬は彼を見るなり嬉しそうに彼の方に駆け寄った。
「ワンワン!」
「チコ!ここにいたんだな!」
「ワンワン!」
 犬は男に抱き締められた、そして男は犬を抱き締めたままマーティンに言った。
「こっちに入って来たんだよな」
「それでネットでも情報を伝えたんですが」
「迷子になったんで来たんだな」
「そうかも知れないですね」
「賢い奴だからな」
 抱き締めているそのチコを見つつ言った。
「そうもするな」
「いい子なんですね」
「かなりな、助けてくれて有り難うな」
「いえ、迷子を捜すのも警官の仕事ですから」
 マーティンは男に微笑んで答えた。
「当然のことをしたまでです」
「そう言うんだな」
「警官ですから」
 笑顔で言うマーティンだった、こうしてチコは家に戻った。
 このことがあってから数年後マーティンは結婚し妻と新婚旅行でタイのバンコクに行った、そうしてだった。
 ふとバンコクのある動物病院の前を通るとだった。 
 黒く痩せた大きな耳の犬がガラスの扉の前にいた、それを見て彼は妻のフレデリカ見事な金髪で知的な感じの緑の目ですらりとしたスタイルの彼女に言った。
「ちょっと話を聞いてみるか」
「病院の方に?」
「うん、あの犬はどうしたのかってね」
「首輪してるから飼い犬ね」 
 このことは間違いないととだ、妻は夫に話した。
「そうね」
「そうだね、ただ様子がおかしいから」
「どうしてあそこにいるね」
「それがわからないから」
 だからだというのだ。
「お話を聞いてみよう」
「それじゃあね」 
 二人でこう話してだ、一緒に動物病院に入った、幸い病院の院長はある程度だが英語がわかったので。
 自分達の身分とバンコクにいる理由を話してから院長から話を聞いた、すると。
「そのスニー=チャッカーンさんのですか」
「お家の犬でして」
 院長はマーティンに話した。
「いつも診察はここで受けていますが」
「一匹で」
「はい、名前はキュー=サンといって雄です」
 名前と性別の話もした。
「多分スニーさんと何かの理由ではぐれて」
「ここにですか」
「来て飼い主を待っているのでしょう」
「そうなんですね」
「いつもここにスニーさんと来ているので」
 今は病院の中に入れている彼を見つつ話した。
「ここに来ると会えると思ってでしょう」
「そうですか」
「スニーさんはレストランで働いていていつもこの子を職場に連れて来ています」
 院長はマーティンにこのことも話した。
「そこからはぐれて」
「この病院に来たんですね」
「ですからスニーさんにはもう連絡しました」
 飼い主である彼にはというのだ。
「ですからあと少しで」
「ここに来てくれますか」
「そうかと」
 こうした話をしてからだった。
 二十分程して浅黒い肌で黒い癖のある髪でやや肉付きのいい小柄な中年男が病院に入って来てだった。 
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