おっちょこちょいのかよちゃん
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136 政府、命懸けの取引
前書き
《前回》
異世界へ向かう日が訪れた。かよ子達は御穂神社に集まり、御穂津姫によって異世界への入口を開いて貰い、異世界へと向かう。そして日本各地で多くの選ばれし者達が異世界へと旅立っていくのであった!!
いよいよ今回から異世界が舞台です!!
とある世界の某屋敷。かつて殷王朝の女帝として生きていた妲己はそこで多くの女性を遊ばせていた。
「どうかね、坊や?ここのおなごどもは美しいであろう?」
「うん・・・」
そこにいる一人の少年は遊女達に見惚れていた。
「ここにいる女性達を坊やの嫁にして上げてもいいぞ」
「そうだな、お前も私と同じ女が好きだからな」
その屋敷の王もその場にいた。女性達は少年に寄り添う。
「私を嫁にしてくださって」
「私でよければ・・・」
「いいえ、私が!」
(迷うなあ・・・)
少年は多くの女性に群がられて暑苦しいとは思ったが、前にいた「地」ではこのように人気者になる事はなかったので嬉しくも感じていた。
「一緒に温泉に行きましょ。私が背中流してあげますわ」
「ええ!?私も行きます!」
(ど、どうしよう・・・?)
「皆と一緒に行ってやっては良いではないか?おなご、好きであろう?」
妲己が進言した。
「は、はい!」
少年は顔を赤くして遊女達と温泉へと向かうのであった。
かよ子達が異世界へと向かった時と同じ頃、羽田空港に三木首相とその官僚達はいた。
(とうとう来るのか・・・!!)
そして声が聞こえた。
「おはようございます、三木首相」
「お、お前らか・・・?」
首相は目を疑った。数名の男女が現れたが、実際の赤軍のメンバーとは顔が違う。整形でもしたのだろうか?
「諸事情で顔を変えております」
「分かった、ホテルの会議室へ通してやれ」
首相達は彼女らを空港のホテルにある会議室へ通した。
「修、認識術を解いていいわ」
「了解」
配下の男が答えると、顔が変わった。リーダーの重信房子、軍事委員の丸岡修、政治委員の足立正生、そして同じく政治委員の吉村和江の顔になった。
「この丸岡修の認識術で私達の顔を周りからは全くの別人に見えるようにしていたのです」
「そ、そう言う事だったのか」
「それでは話を始めましょう。例のあの道具は持って来て頂けましたでしょうか?」
「ああ、それぞれの所有者に頼んで届けて貰ってある」
首相は官僚の一人に礼の道具を持って来させた。
「これが護符、杖、そして杯だ。それから憲法9条の改正についてだが・・・」
首相は恐る恐る語りだす。
「我々が統率するという形で陸海空軍を持つ事にした。無論、大日本帝国憲法の頃にあったように国民に兵役の義務を持たせようと思う。四月に正式に改正しよう」
房子は改正時期にピンと来た。
「四月?なぜそんな時期にですか?明日からでも宜しいのでは?」
「それはだな、新年度と言う事でその時の方が丁度いいと思ったのだが・・・」
首相は嘘の口実作りに苦労した。
「明日からに、遅くとも来週でお願いできますか?」
「う・・・」
首相は頷くしか選択肢がないと察した。
「分かった、お望み通り明日から改正にする・・・」
「ありがとうございます。もしこの約束を破った場合、どうなるか分かっておりますね?」
「あ、ああ・・・」
「では、この政治委員の足立正生と吉村和江に同行させて頂きましょう」
(なぬ!?)
首相も、官僚も驚いた。これでは本当に全国民の前で交戦権復活の宣言をする羽目となる。
「宜しいですね?」
房子はやや高圧的な態度で確認した。
「ああ」
対して首相は反対できずに承認してしまった。
「では、ありがとうございます。正生、和江、お供しなさい」
「はい」
「それでは、こちらは頂きます。では修、認識術を」
「了解」
丸岡は認識術で房子と自身を、そして吉村と足立も別人の顔にした。
「では、御機嫌よう、首相」
房子は丸岡と共に会議室を出た。
(この、赤軍め・・・。覚えてろよ・・・!!)
首相は取引には成功したものの監視役を付けられて心の中でイライラした。
「では、首相、お願いがあります」
足立が言葉を発する。
「NHK、民放問わず各放送や様々な新聞、雑誌記事を集めて会見をお願いしますよ。戦争を再び復活させるとね」
「う・・・、分かった」
その頃、かよ子達の通う小学校の3年4組の教室。クラスは寂しく感じていた。何しろ7名もの欠席が出ている。それも6名は異世界の戦いに身を投じているためであり、残りの一1名はクリスマス・イブの夕方から行方不明となっているのである。
「たまちゃん、まるちゃんやかよちゃん達、行っちゃったね」
「うん、そうだね。私、まるちゃん達が心配だよ・・・」
とし子やたまえはそのような会話をしていた。
(まるちゃんやかよちゃん、おっちょこちょいするから心配だな・・・。私も行きたかったけど・・・)
たまえは隣のいない親友の机を見て不安に思う。たまえは異能の能力を宿しておらず、敵に対抗する武器も持っていない為に異世界からの召集令状を受け取っていない。その為同行する事はできなかったのだ。
(まるちゃん、どうか無事でいて・・・!!)
たまえは皆の無事を切実に願った。その一方、笹山はクリスマス・イブの日から行方不明になっている男子の事が未だ心配だった。
(藤木君、早く戻ってきて・・・!!)
近所の女子高生やニュースから藤木が異世界に連れて行かれたと聞く。彼の安否が一刻でも早く明確になって欲しかった。そして野良犬に襲われそうになった時、彼がかよ子を見捨てて逃げた事も許してあげたく、かつその時以降邪険な態度を取った事も謝りたい一心だった。その時、戸川先生が入って来た。
「おはようございます。皆さん、席に着いてください」
戸川先生の言葉で皆は着席した。
「本日から暫く、大野君、さくらさん、杉山君、富田君、長山君、そして山田さんが諸事情の為、お休みいたします。また、藤木君も未だに行方不明となっております。少し寂しくなりますが、頑張っていきましょう」
戸川先生はかよ子達が危険な冒険に出ている事や藤木が異世界の地にいる事はあえて口にしなかった。戸川先生自身も生徒をあまり心配させたくないという気持ちがあったのである。しかし、異世界の敵や赤軍が攻め続けている事は事実の為、誰も授業に集中できるような状態ではなかった。
その頃、さくら家では・・・。
「お母さんや、じいさん見なかったかね?」
まる子の祖母がまる子の母に聞く。
「え?見ていませんが、出かけたんですか?」
「ああ、どこにもいないんじゃよ」
「どこ行ったのかしら?」
まる子の祖父が行方不明となっていたのだった。
そして御穂神社から異世界への入口を潜り抜けたかよ子は異世界への通路を渡り歩いていた。
(この先に異世界が待っているんだね・・・)
かよ子は改めて認識する。そして緊張で胸の鼓動が激しくなっている事も感じた。
「かよ子、そわそわしてるの?」
母に聞かれた。
「う、うん・・・」
「お母さんも子供の頃同じように思っていたわ。いつも空襲警報が鳴り止まなくて。この先、生きていけるか心の中でいつも不安だったわ。学校では国の為にいつでも死にますなんて言ってたけど本当は死ぬって恐怖があったのよ」
「お母さん、そうだったんだ・・・」
「でも、異世界に行けるなんてアタシゃワクワクしてるよ。それに学校にも行かなくていいなんてさあ~」
山田親子に対してまる子は非常に呑気だった。
「アンタ、遊びに行くんじゃないのよ」
姉が窘めた。
「石松はもう先に向こうにいるのか?」
大野が気になった。
「そうかもしれませんね、ブー」
そして長い通路の終点には広大な空間が広がっていた。
「ようこそ、異世界へおいでいただきました」
「例の手紙はお持ちでしょうか」
そこには中学生くらいの女子が二名いた。
後書き
次回は・・・
「再会、そして合流」
異世界へと辿り着いたかよ子達。だがその場には思いがけない人物が追って来ていた。そしてかよ子達は今までに知り合ってきた人物と再会する事になる・・・!!
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