クラディールに憑依しました
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色々ありました
アスナが転移門に戻ると、アルゴ、シリカ、リズ、の三人が待っていた。
「――――アスナ…………どうしたの!? 何かあったの!? あいつは!?」
「…………あの人は残りました――――転移結晶が無かったの」
「それって!? ――――あたしに転移結晶を渡したから?」
リズとシリカの表情が蒼白になる。
「オイ、それは本当カ!?」
「えぇ、わたしは攻略組を集めます、アルゴはコリドーを記録したプレイヤーに心当たりはあるかしら? 多分あいつだと思うけど」
「そう思ってメッセージを送ってるのだガ、返って来なイ、寝ている可能性があるナ」
「あいつが寝てる宿泊施設って判る? 行って直接起こせないかしら?」
「解っタ、試してみよウ」
アルゴが急ぎ足で街中へ消えて行った。
「リズはシリカちゃんと一緒に居て、絶対に迷宮区に戻っちゃ駄目よ?」
「わかったわ」
「――――でも、あたしのせいで残ったんですよね!?」
「フレンドリストからあの人が迷宮区の外に出たか判る筈だから、出て来たら呼びかけて、わたしは攻略組を集めるから」
「シリカ、行きましょう――――あたし達ははじまりの街であいつの言ってた倉庫へ行かないと」
「――――でも!?」
「良く聞いて、あいつはSTRを上げて沢山アイテムを持ってるけど、昨日見せて貰った両手剣はどれもボロボロだった。
片手剣もあたし達が見ている前でアスナと戦ってボロボロになってたでしょ? 今のあいつには、まともな装備が無いの。
あたしの露店にある剣だけじゃ足りないの、いくらあたしが鍛冶屋でも素材が無ければ武器も防具も作れないわ。
――――だから、はじまりの街であいつの倉庫から材料を集めるの…………あたしの仕事を手伝ってくれる?」
「…………はい」
「決まりね、アスナ、コッチはコッチでしっかりやるから――――アスナもしっかりね」
「うん、リズも頑張って」
アスナは攻略組を集めに血盟騎士団のホームへ、シリカとリズははじまりの街へと向かった。
始まりの街に到着したシリカとリズは倉庫を目指していた。
「アレが言ってた倉庫ね…………転移門広場の裏に借りてるとは言ってたけど――――大き過ぎでしょ」
「…………少し小さいですけど、学校の体育館を思い出しますね」
管理NPCを呼び出して倉庫を開けて貰うと、中には簡易の鍛冶場道具と素材が並んでいた。
「…………素材が山盛りですね」
「――――この並べてある木箱、剣一本分の素材と限界値まで鍛えられる素材がしっかり分けてあるわ」
「そうなんですか?」
「えぇ、あたしの仕事は鉄鎚を振るくらいよ…………一体何時から用意してたんだか」
並べてある木箱は、ざっと見ても七十は超えていた、奥には蓋が開けられたままでコルが山盛りになった宝箱まである。
「リ、リズさん――――あれって、宝箱ですよね」
「アレが使えって言ってたお金? 怖くて金額見たく無いんだけど? 今は必要ないし、見なかった事にしましょう」
「…………はい」
リズが炉に火を入れて、シリカはフレンドリストを見つめ続けた。
「ねぇ、シリカはさ、あいつの事が好きなの?」
「……………………えっと、良く解りません、初めて会った時はぶつかったのに心配してくれて。
チーズケーキも譲ってくれましたし、目付きの怖い人だと思ったんですけど。
結構良い人で――――無駄遣いで宿代が無くなっちゃった時も、お金を送ってくれて……。
けど凄い怖い人で、でもあたしを助けてくれて、牢獄コリドーまで使って、あの何て言うかその。
あたしの…………あ、えっと――――よく解らないです」
シリカが顔を真っ赤にして伏せる。
「…………結構好かれてるのね、あいつ」
「え!? あ、悪い人じゃないですよ!?」
「それは解ってるわよ…………ただね、今回の事だってそうだけど――――あいつ危ない奴よ?
このままあいつが帰ってこなかったら、あたし達がどれだけ傷付くかなんて、これっぽっちも考えてない。
――――いや、考える事すらできない奴だわ…………こんなにみんなに心配掛けて、帰って来たらこき使ってやるわ」
「リズさんも心配なんですか?」
「――――別に? 会ってまだ二日だけど、まぁ、あいつ程このデスゲームを楽しんでる奴なんて見た事が無いわ。
女の子に毒を飲ませて楽しんでるし、倫理コード解除して遊ぶし、最悪で最低な奴よ、正直ムカつく。
…………でも、あいつに会う事であたしは鍛冶屋として大切な物を見つめ直せたと思う、断じてあいつのおかげじゃないけどね」
炉にインゴットや素材を入れて加熱を始めた。
「さて、そろそろ始めますか、作業中は集中してて音が聞こえない事があるから、話かけるなら気を付けてね」
「はい!」
………………
…………
……
第十層血盟騎士団ホーム、団長室にて。
「ボス部屋の発見、そして威力偵察の途中で扉が閉る事故、転移結晶の不足――――とんだ失態だ」
「申し訳ありません」
「いや、クラディールからは、こう言う事も有るだろうと話はしていたんだ、アスナ君が気に病む事ではないよ」
「――――え!?」
「起こせる問題は出来るだけ起こして、それをアスナ君やシリカ君に対処させると言っていたからね。
マッチポンプ、自分のマッチで放火して自分でポンプを動かして消火する、自作自演とも言う。
――――彼はそう言う事が得意だそうだよ、今回もその一つだろう。
彼はこうなる前に、何時でも待ったをかけられた筈だ、そして彼はそれをしなかった。
今頃はボスの取り巻きを何度も倒して――――のんきにレベルでも上げているじゃないかね?
彼のレベルは二十八だと聞いている、第九層のボスから見ても、単独突破の可能性も無い訳ではない」
「――――では、血盟騎士団は動かせないと?」
「動かせないとは言って無い、そのボス部屋前のコリドーと持ち主が見付かったら救出部隊を結成しよう。
今我々は安全マージンを稼いでいる途中だ、今直ぐボスと戦う訳には行かない、救出のみだ」
「解りました、ありがとうございます」
「礼を言われる事ではないよ、二日目にして迷宮区の発見とフロアボスの部屋、凄い快挙じゃないか。
きっと他のプレイヤー達の希望となるだろう、救出任務、アスナ君が指揮を取ってくれたまえ」
「はい、血盟騎士団副団長アスナ、これより救出任務に着任します」
とある宿泊施設にて。
「起きろキリ坊」
「うあぁ!? ――――アルゴか!? 気配を消して部屋に入るなよ!? 何で此処が判ったんだ!?」
ベットの上で飛び上がった彼の名は、キリト、他のプレイヤーからはビーターや黒の剣士と呼ばれるソロプレイヤーで攻略組の一人。
迷宮区から疲れて帰って来た彼は寝る前に、何かあった時の為にと、寝室のドアをフレンドなら誰でも開けられるように設定していた。
「企業秘密ダ、それより今日迷宮区のボス部屋の前にコリドーを設定したナ、そいつを寄越セ、もちろん言い値ダ」
「お前が言い値!? 明日はアインクラッドが墜落するんじゃないのか!?」
「――――急げ、威力偵察で馬鹿が一人、ボス部屋に閉じ込められた、金はそいつが払う」
キリトはメニューを開くとアルゴからのメッセージに気付きながら、コリドーを取り出してアルゴに手渡した。
「――――金は要らない、変わりに新しいコリドーを設定して俺に返してくれ」
「了解しタ、これから救出作業に向かウ――――キリ坊も一緒に来るカ?」
「あぁ、一緒に行こう」
キリトはメニューを開き、クローゼットから簡単な補充を済ますと、アルゴと共に部屋を後にした。
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