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クラディールに憑依しました

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ボスの部屋に着きました

「――――シリカ? 何で扉を閉めたんだ?」
「え? あの、挟み撃ちとか怖くて――――閉めた方が良いかなと…………」
「その扉開くか?」


 シリカが扉を開けようとドアノブを探すが…………もちろんそんな物はボス部屋には無いし、押し戸だったから中からは押して開けるのは無理だ。


「…………開けられないみたいです…………もしかして、いけませんでしたか?」
「うん、いけなかったな? ――――アルゴ転移結晶いくつある?」

「コッチの予備は一つだけダ」
「転移結晶持ってない奴手を上げ!」


 リズとシリカが手を上げる。


「アルゴ、リズに転移結晶を渡してくれ」
「五万コル」
「買った――――シリカは俺の転移結晶を渡すから、危なくなったら何処の街でも良いから街の名前を言って転移しろ」


 アルゴに金を渡して、落ち込んでるシリカに無理やり転移結晶を握らせと、奥の玉座からフロアボスが飛び降りた。


「あの――――ごめんなさい」
「謝るのは後だ、時間が無い」


 玉座の奥から出てきたのは第一層のフロアボス・コボルド・ロードの色違いだった。
 取り巻きのコボルド・センチネルが六体――――こちらはアルゴを含めても五人…………不味いな。


「敵の数が多い、シリカとリズは取り付かれる前に転移しろ、威力偵察は俺達だけでも出来る」
「嫌よ、無理しない程度には働かせて貰うわ」
「あたしも、少しだけでも手伝わせて下さい!」

「――――危なくなったら絶対転移しろよ?」
「解ってる」
「はい!」


「それじゃ、右から抜けて玉座に取り付くぞ、あの高さだ、このステージの段差はアレで間違いない――――陣取るぞ!」
『了解』


 コボルド・センチネルが俺達に合わせて走って来るが――――様子がおかしい、先頭のアスナには無関心だと?
 完全にアスナを無視して擦違った、アスナは戸惑いながらもコボルド・センチネルにソードスキルを叩き込むがタゲが移らない。
 コイツ等一体何に反応してるんだ――――ヘイト調整が出来ないなんて異常だろ!?


「――――シリカっ!! お前だッ!! 一度戻れッ!!」
「えっ!?」


 立ち止まったシリカの前に踊り出て、両手剣のソードスキルでセンチネルを薙ぎ払う。
 ――――返す刀で、ソードスキルを繋げて二体目もノックバックさせた。


「レベルだッ!! この中で一番レベルの低い奴を狙う様に設定されてるッ!
 リズ、スイッチを頼む――――アスナはコボルド・ロードを押さえてくれッ!! アルゴはシリカを連れて玉座へ!!」


 シリカを追うセンチネルを、後ろからソードスキルを当てて、スイッチでリズが止めを刺す。


「先に上がレ」


 アルゴが玉座にシリカを逃がし、センチネルにソードスキルを叩き込む。


「あたしも戦いますッ!!」
「状況が把握できるまで大人しくしてロ、アイツが困るゾ」
「――――はい」


 シリカが玉座に上がるとモンスターの様子が変わった――――振り向いて俺の後ろに…………リズかッ!?


「な!? 何よコイツ等!?」
「タゲがリズに移った、お前も玉座へ急げッ!!」


 俺とアスナでソードスキルをスイッチしながら、リズの道を開く。


「大体の強さは判っタ、これ以上は無理ダ、全員転移してくレ!」


 リズとアルゴが玉座に上り転移結晶を取り出す。


「シリカ、リズ、転移急げッ!!」
「はい!」
「転移!」
「先に行くゾ」


 三人が第十層の街を唱えて転移する、俺とアスナも玉座に辿り着いた。


「アスナも飛べッ!」
「――――待って」


 アスナが俺の腕を掴む。


「…………どうした?」
「あなたの転移結晶を見せて」
「これか?」


 アスナにチラリと見せて引っ込める。


「――――それ…………解毒結晶でしょ?」
「…………やっぱりお前の目は誤魔化せないか」
「明らかに色が違うでしょ、さっき共通タブを設定した時にあなたのアイテムは全て閲覧したわ。
 ――――転移結晶は……一つだけだったわ」


「リズとシリカの共通タブに別けて入れてるんだよ、お前との共通タブからは見えて無いだけさ」
「それならシリカちゃんに転移結晶を渡す必要も無いし、リズに転移結晶を買ってあげたりしないよね? 共通タブから取り出して使うだけで良いんだから」
「…………あぁ、そうだそうだ、間違えてたよ、共通タブに入れてない、俺個人のアイテムストレージの中だった」

「なら、今メニューから出して見せて」
「――――参った…………手持ちの転移結晶はアレだけだったからな、残りは倉庫だ」
「…………死ぬ心算なの?」


 アスナが俺を掴む手に力を入れる。


「いや? 死ぬ心算なんてねーよ――――試してみたかっただけだよ、今の俺が何処までやれるかを」
「――――それで、それで死んだりしたら、元も子も無いのよ!?」
「俺の命だ、好きな様に使わせてくれ、レベルだって安全マージンは軽く超えてるんだしさ」

「何が…………何がいけなかったの!? 何でこんな事になるの!?
 わたしはもう――――誰も死なせたくなんか無いのに!」
「立派な考えだが、人は死ぬ時は死ぬ、形が有るからには崩壊は必然だ。
 ――――それに、デスゲームには何の意味も無いって誰かが言ってたな」

「意味が無いなんて、ただの思考停止よ。
 ――――考える事を止めて、ただ腐っていくのを待つ為だけの、ただの言い訳だわ」
「あぁ、そうだな、誰もがお前の様に強かったら、こんなデスゲームなんて直ぐ終わってるよ。
 今度同じ事を言う奴が居たら、ぶっ飛ばして言ってやれ、俺は此処で死ぬ心算は無いからな。
 ……………………実はコリドーを持ってるんだ、それで帰るよ、だから先に帰っててくれ――――」

「…………嘘吐き……コリドーなんて持ってなかった…………なかったよ、持ってるなら今直ぐ見せてよ!
 シリカちゃんの事はどうするの? わたしだけじゃ無理だよ、あなたが居ないと最前線には連れて行けないんだよ?」
「リズと一緒に居させれば――――って、死ぬ気は無いって言ったろうが、さっさと転移してあの扉を開けて来い」

「――――本当に死ぬ気は無いのね? どれくらい持たせられるの?」
「一日や二日は余裕だ、ポーションもある、何も問題は無い」
「問題だらけよ、出来るだけ攻略組の人を呼んでくるから――――必ず生き残りなさいよ? ボスを倒した後お説教だからね」
「あぁ、ほら行けよ血盟騎士団副団長、攻略組の要、お前にはプレイヤー開放って言う使命があるんだ……さっさと行け」
「――――転移…………」


 アスナが転移した後、コボルド・ロードとセンチネルを玉座から見下ろしていると、笑いが込上げてくる。
 リズが倒したセンチネルもリポップした様で六体に戻っているが、特に問題は無い。


「――――さぁ、段差の恐ろしさを思い知らせてやるッ!!」


 コボルド・ロードは俺を睨んだまま――――段差に引っかかって足踏みを続けている。
 HPが減っているセンチネルの一匹に狙いを絞って、先ずは部位欠損ダメージが狙えるかどうかを試す。
 段差の上から両手剣で武器を持った右腕を切り飛ばしたが、HPが少なすぎた為、そのまま殺してしまった。

 随分と弱い――――だが、経験値が美味いな、手持ちの武器に残された耐久度が心配だが、雑魚狩りでレベルを上げるか。
 フッと、頭上が明るくなった――――コボルド・ロードが俺にソードスキルを振り下ろす瞬間だった。
 咄嗟にソードスキルを発動させて相殺したが、俺のHPが二割削れる――――不味いな、今の攻撃は段差が通用しない。


 手持ちのポーションは多めに持って来てるから暫くは持つが…………絶対尽きるな、無駄な動きを最適化しなくては。 
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