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Fate/WizarDragonknight

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エピローグ 前半

 体が動かない。
 体内のオーパーツごとムーの動力源にされている響は、目だけでバングレイたちの様子をうかがっていた。だが未来がずっと付きっ切りで自分のそばにおり、どうすることもできない。

「マスターよ」

 地上への宣言が終わった時、エンジェルがバングレイに問いかけている。

「本当に、人間どもをこのムー大陸に住まわせるつもりか?」

 すると、ラ・ムーの体に寄りかかるバングレイは「ケッ‼ んなわけねえだろ」と吐き捨てた。

「さっきの宣言は逆だよ逆。地上は人間どもを放し飼いにする牧場。狩場はこのムー大陸だ」
「ほう」
「もともとラ・ムーを狩りに来たんだけどよ。こいつの力をバリ見て、こいつは狩るんじゃなくて、俺の武器にした方が面白れぇってなったんだよ。ムーの化け物に襲わせて、逃げ延びた奴らをここに連れてきて、安心しきったところで狩る。そういう寸法だ。地上の人間どもの役割は、数を増やすこと。ある程度に育ったら、ムーに連れて来させて狩る。まあ、ワンサイドゲームじゃ面白くねえだろ? 適当にムーの力でも貸してやって、それで甚振って狩る」
「つまりは人間どもの放牧か」

 そんなことさせない、と響は言いたかった。舌さえも動かなかった。

『うぷぷ。聖杯に頼らずに世界征服しちゃったよ、このマスター』

 モノクマがにやにやとした眼差しをバングレイに向けている。

『でも、聖杯戦争はちゃんとやって欲しいなあ。それに、令呪が今日一日だけしか見滝原の外出を許さないって言ってるじゃん。このままじゃ君、呪いで死んじゃうよ?』
「わーってるよ。なあモノクマ。バリ頼みがあるんだ」
『何?』
「ムー大陸での狩りに入るまでの時間つぶしによ。聖杯戦争の続き。ここ(ムー大陸)でやらねえか?」

 その言葉に、モノクマは『えええええええ!?』と驚きの声を上げた。

『ムー大陸で聖杯戦争をやるの?』
「ああ。残りの参加者も全員、このムー大陸に招待してやる。これからの人間狩りの予行練習にもなるしな」
『うぷ。うぷぷぷぷぷぷぷぷ。あっはははははは!』

 モノクマは、そのシルエットが大きくゆがむほどの笑い声を上げた。

『面白いんじゃない? いいよ、認めるよ!』

 モノクマは笑いながら頷いた。
 監視者は両手を広げ、告げる。

『これから、聖杯戦争の会場は、見滝原からムー大陸に移動しま~す! 参加者の皆様は、ムー大陸に移動するから、十秒で荷物の準備をしてね♡』



 突然脳裏に響いたモノクマの声。
 その事実に、ハルトは驚きの表情をもってコウスケと顔を合わせる。

「おい、今の聞いたか?」
「皆まで言うな。聖杯戦争を、あっちでやるって……」
『はい時間切れ!』

 コウスケが何かを言う前に、目前に銀色のオーロラが出現する。
 かつて、ダークカブトと戦った際にも出現したオーロラ。それが、ハルトたちを飲み込んでいく。
 悲鳴を上げる間もなく、ハルトの視界が銀に包まれていった。

「……!」

 そして目を開ければ、それはもう見滝原公園ではなくなっていた。
 大きく傷ついた遺跡。ヒビだらけの階段。

「なんだこれ……? コウスケは?」

 その異様ともいえる風景に、ハルトは絶句した。
 その上、さっきまですぐそばにいたコウスケの姿も見当たらない。
 そして。

「うわっ……!」

 吹き荒れる突風に、ハルトは思わず顔を伏せる。
 ハルトの眼下に広がるのは、見滝原の街並み。
 その、遥か上空にいる事実に、ハルトは言葉を失った。
 そして、理解した。
 今自分は、前人未到の地にいることに。

 モノクマの宣言通り、ムー大陸の地に足を付けていることに。
 そして、地上を遥か上空に浮かぶムー大陸にいることに。 
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