ガードレールのナマケモノ
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第一章
ガードレールのナマケモノ
エクアドル東部のロストリオス州でのことだ。
高速道路を車で移動していたホセ=コルテスと妻のイザベラはこの時ドライブと景色とお喋りを楽しんでいた。
「昼は何を食べようかしら」
「肉がいいな」
夫は妻にこう返した、二人共黒髪で目も黒い、そして浅黒い肌だ。夫の顔立ちは明るく顎が割れていて髪の毛は縮れ背は一七〇程だ。妻は波がかった黒髪ではっきりとした目と紅の大きな唇で眉は濃い。背は一五〇程で胸はかなりのものだ。二人共ズボンにシャツというラフな格好だ。それで休日のドライブを楽しんでいるのだ。
「シェラスコ食いたいな」
「シェラスコなの」
「ああ、どうだ?」
「いいわね」
妻は夫のその言葉に頷いた。
「じゃあこの近くにシェラスコのお店あるし」
「それじゃあな」
「そこに行きましょう」
「それで肉食おうな」
笑顔で話した、そしてだった。
二人は今はドライブを楽しんでいた、すると。
ふとだ、助手席にいる妻は前にあるものを見て運転している夫に言った。
「ガードレールに何かいるわよ」
「何か?」
「ええ、猫か犬かしら」
妻は最初はこう思った。
「まさか」
「野良だったら保護するか」
「そうね、ほったらかしはいけないし」
「保護施設に連絡してな」
「里親探してもらいましょう」
「それがいいな」
夫婦でこう話してだった。
それでその生きものの近くに車を停めてだった。
生きものを見ると夫婦は驚いた。
「ナマケモノか」
「ジャングルにいる筈なのに」
「近くのジャングルから迷い出たのか?」
「そうかも知れないわね」
「これはな」
「ク~~~」
ナマケモノはガードレースにしがみついている、爪はかなり長く鋭いがしがみついたまま動こうとしない。
そのナマケモノを見てだ、夫は妻に話した。
「どうする?」
「この子のことね」
「ああ、施設に連絡するか」
「犬や猫みたいに」
「そうするか?」
「そうね、犬や猫だったらそうするつもりだったし」
「だったら一時保護してな」
そうしてというのだ。
「施設に引き渡すか」
「そうした方がいいわね」
「じゃあ昼飯の前にな」
まさにその前にとだ、夫は妻に話した。
「施設寄るか」
「ええ、そっちも幸い近くにあるし」
妻は自分のスマートフォンを出して施設の場所をチェックして話した。
「まずはね」
「この子をな」
「施設に渡しましょう」
こう話してだった、二人はナマケモノを拾い。
車の後部座席に置いた、幸いナマケモノは殆ど動けないので無事にそうすることが出来た。そしてだった。
ナマケモノを施設に渡した、すると。
施設の人は夫婦に驚いて言った。
「あの、こんなことは」
「珍しいか」
「そうなのね」
「はい、ナマケモノはジャングルにいて」
それでというのだ。
「あまり木から降りなくてじっとしています」
「そうだよな」
「そうした生きものね」
「そのナマケモノが高速道路にですか」
「出てな」
「それでガードレールにしがみついていたの」
「そんなこともあるんですね、ですが」
それでもとだ、施設の人は言った。
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