DQ3 そして現実へ… (リュカ伝その2)
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別世界より④
<グランバニア>
時は戻り、ビアンカ・ティミー・マリーまでもが、本に吸い込まれてしまった直後の事…
「ど、どうしよう…マ、マーサ様…私…とんでもない事を…」
国王執務室では、顔面蒼白のリュリュが今にも泣きそうな表情で狼狽えている…
「リュリュの所為じゃないわ!あの鈍くさい勇者様が、勝手に巻き込まれただけよ!しかもマリーってば、自分から飛び込んだでしょう…きっとお母さんも、お父さんに会いたくて飛び込んだに違いないわね………しくじった…私も飛び込めば良かったわ!あっち面白そうなんだもん…」
きっとポピーが居なかったら、リュリュは責任を感じて発狂していただろう…
それはマーサも同様だ…
リュリュにパルプンテを唱えさせたのはマーサだ。
何もビアンカ等が居る前で行わなくても、良かったはずなのに…そこまで頭が回らなかったのだ。
「でも、どうする?」
「どうもこうも、助ける為に全力を尽くすだけです!」
ポピーの質問に、まだ思考が定まっていないマーサが声を震わせて答える…それに無言で頷くリュリュ。
「違うわよお祖母様。私が言ってるのは、グランバニアをどうするか…って事よ」
「……グランバニアを?」
「お祖母様テンパりすぎ(笑)………取り敢えず、オジロン大臣を此処に呼んでから話しましょう!」
マーサもリュリュも、ポピーが言わんとする事が理解出来てない…
そんな二人を無視して、ポピーはオジロンを呼び付ける。
「はぁ…またトラブルですかな?」
暫く経過し、オジロンが執務室へ入る…そして開口一番、現状を言い当てた!
「何よ…まだ何も言ってないでしょ!」
「聞かずとも分かる!ポピーが嬉しそうにしている時は、間違いなくトラブルなのだから!」
「叔父上様、ひっど~い♥!そんな風に私の事見てたのね!」
問題事が多すぎて顰めっ面が治らないオジロンと、状況が楽しすぎて笑いが止まらないポピー…
「………ところで、王妃陛下の姿が見えないのは何故ですかな?…嫌な予感しかしないのだが…」
「ビンゴよオジロン!さっすがー!!」
この時のポピーの笑顔は、世界中の男性を虜に出来るほどの美しさだったと言う…笑顔だけは!
「お母さんもティミーもマリーまでも、あっちの世界に行っちゃった、うふ♥」
その場に崩れ落ちるオジロン…
泣きそうなマーサとリュリュ…
一人笑顔のポピーに対し、殺意が芽生える3人。
「な、何故…そんな事に…」
「どうでもいいじゃない、そんな事!それよりこれからよ、これから!どうしましょうかねぇ?」
「どうするって…」
絶望感に打ち拉がれる3人には、ポピーの言いたい事が分からない…
「ちょっとしっかりしてよ!代理で王位に就いていたビアンカ陛下が不在になり、第1王位継承権を持つティミーが不在に、第2王位継承権を持つマリーも居なくなったのよ!さてさて、誰が王様やるのかな?」
「ど、どうすれば良いんだ…わ、私がまた代理を務めれば良いのか!?」
「オジロンじゃ無理ねぇ…以前は貴族達が不満を持って無かったから、オジロンでも統治出来たけど…今の貴族達は、隙あらばクーデターでも起こしたがってるからねぇ…半年後には王家の血筋に連なる者全員を処刑してるわよ!」
ポピーの言葉に吐きそうになるオジロン…
「で、では………そうだ!マーサ殿を代理に据えて、皆でサポート致しましょう!マーサ殿でしたら、先代パパス王よりのカリスマもあり、貴族達の暴走も押さえられるのでは?」
「う~ん…悪くないと思うけど…お祖母様にはお父さん達の救出に全力を尽くしてもらいたいし…政務を行っている余裕は無くない?」
「な、なるほど…リュカの帰還こそが、最大の解決だしな………では、ポピー!お前が代理で王位「馬鹿な事言わないで!」
先程までの笑顔を消し去り、真面目な表情でオジロンを叱るポピー!
「私はもうグランバニアの人間では無いのよ!ラインハットへ嫁いでしまったのよ。私が臨時でも王位を継いだりするわけにはいかないの!」
「くっ…その通りだ!済まぬ…つい…」
絶望感に打ち拉がれ、オジロンは俯いてしまう。
「ポピー…貴女は先程から否定しかしてませんけど、何か妙案はあるのですか!?」
打開策を見いだせない事に苛つき、マーサはポピーにきつく尋ねる。
「うふふふふ…あるわよぉ~!」
同姓ですら見とれてしまうほどの美しいポピーの笑顔…
だが此処にいる者は知っている…
この笑顔の先には、厄介事がひしめき合っている事に…
「先ずオジロンはそのまま国務大臣を続けてもらいます。なので実質グランバニアの政務はオジロンにこなしてもらうのよ!そして私は王位に就けない…だから臨時の宰相として王のサポートに就きます」
「さ、宰相!?しかし…」
「大丈夫、雇われ宰相だから!それに文句を言うヤツは、陛下のカリスマを利用して押さえ込むから♥」
小悪魔の笑顔…いや、大魔王の微笑みと言って良いだろう…
ポピーはこの状況を最大限に楽しもうとしている。
「で………誰を国王代理に………?」
「決まっているでしょう…リュカ陛下のカリスマ性を、最も多く受け継いだ人物よ!」
ポピーの言葉を聞き終えると、オジロン・マーサ共にリュリュを見つめる。
「わ、私!?ム、ムリよ…ムリムリ!!だって…王様としての教育なんて受けてないもの!」
リュリュは大量に汗をかき、後ずさりながら拒絶する。
「リュリュ…お父さんも、王様としての教育なんて受けてないのよ。だから面倒な事は殆ど大臣等に丸投げ!それで良いのよ!」
ポピーはリュリュを抱き寄せて、優しく頭を撫で諭す。
「良く聞いて…貴族達が我が儘を言ったら、私が一手に引き受けて黙らせるわ!貴女は貴族達が私への不満を言ってきたら、何時もの様に優しく聞いてあげればいいの!私が恨まれ、貴女が慕われる…そんな形を作り出すの!…面倒な政務はオジロン達がやってくれるから…ね♡」
「でも…私…出来ないよ…そんな…」
「リュリュ…お父さんが帰ってきて、この国が滅んでいたら悲しむわ!私と一緒にお父さんに褒められましょ!『リュリュのお陰でグランバニアが平和だった!だから僕はリュリュが大好きなんだよ!』って………きっとチューしてくれるわよ」
トドメだった…
「やる!私頑張る!!ポピーちゃん、協力してね!」
母親と男の趣味が同じ彼女にとって、ポピーの言葉はトドメだった!
果たしてこの二人は、グランバニアを平和に統治する事が出来るのか?
リュカの帰る場所は、存在し続けるのあろうか?
こっちの世界も目が離せない!
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