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イベリス

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第一話 卒業してその十六

「いいわね」
「わかったわ」
 咲も素直に頷いた。
「そうするわ」
「そうしてね」
「ええ、肝に銘じておくわ」
 咲も強い声で答えた。
「私もね」
「くれぐれもね、咲ちゃんの為によ」
「私の為にも」
「身の安全のね」
 まさにその為にというのだ。
「私も咲ちゃんには幸せになって欲しいし」
「幸せになの」
「ええ、従妹で子供の頃から仲いいでしょ」
 だからだというのだ。
「それでよ、妹みたいなものだから」
「それでなの」
「咲ちゃんには変な人と付き合ったりね」
「悪い道に入ったり」
「そうはなって欲しくないから」
 ここでも愛は真剣な顔で話した。
「だからよ」
「それでなの」
「そう、言うのよ」
 今もというのだ。
「そうしているのよ」
「そうなのね、じゃあね」
「ええ、よく覚えておいてね」
「そうしておくわ」 
 咲も確かな声で答えた。
「よく覚えたから」
「そうしてね、それと東京は全体を歩くと」
 今度は東京そのものの話だった。
「凄く面白いから」
「東京自体はいい場所ってことね」
「危険な場所があって」
 そしてというのだ。
「悪い人やお店やものはあっても」
「全体的にいい場所ね」
「実際そう思うでしょ」
 愛はこのことは陽気に話した。
「咲ちゃんも」
「ええ、まだ全体は見て回ってないけれど」
 基本的に足立区から出ていないからだ、中学を卒業するまで家と学校を行き来するのが常であったからだ。
「それでもね」
「時々叔父さんや叔母さんと外出もしたわね」
「ええ、そうしてきたわ」
「それもよかったでしょ」
「色々面白い場所があって」
「そうした街だから」
 それでというのだ。
「全体的に見てね」
「面白い場所ね」
「多分世界屈指の」
 そこまでのというのだ。
「そうした街だから」
「楽しめばいいのね」
「山手線定期使って行き来出来るでしょ」
 愛はこのことも話した。
「そうでしょ」
「高校電車で行くし」
 その山手線を使ってとだ、咲も答えた。
「そうなったわ」
「だったらね」
 それならというのだ。
「これを機にね」
「東京のあちこちをなのね」
「行ってみたらいいわ」 
 危険な場所には行かないことは気をつけつつというのだ。
「是非ね」
「行っていい場所教えてくれる?」
「そうしたところになの」
「具体的にね」
「いいわよ、私の知ってる限りでね」
 愛は笑って答えた。
「そうさせてもらうわ」
「それじゃあね」
「まあね、高校生が行く場所ならね」
 それならとだった。 
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