DQ3 そして現実へ… (リュカ伝その2)
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脱出と救出
<サマンオサ>
ロリコン野郎は美少女を前に、慌てて牢屋の鍵を開け進入してくる。
そしてマリーに抱き付こうと、近づいた次の瞬間…
(ドゴッ!!)
「うげぇ!」
リュカの右手が男の鳩尾に入り、そのままの勢いで男を持ち上げ壁へと押し付ける!
「て、てめぇ…何しやが…ぐはぁ!」
文句を言う男の鳩尾に更に力を加え苦痛を与えるリュカ…
あまりの衝撃に吐血する男。
「黙れ!貴様の様な男に、俺の大事な娘を差し出すわけが無いだろうが!貴様の腐った目玉で、娘を見られるのさえおぞましいのに、汚い手が娘に触れる事など許せるか!!」
リュカに騙された事に気付いた男は、慌てて腰の剣に手を伸ばす………が、その手をリュカに捕まれて、今度は床に顔から押し付けられ、腕を捻り上げられる。
そして必要以上に腕を捻り、苦痛を与え続けるリュカ…
その間にアルルは男の剣を奪い取る。
「ぐぁ…き、貴様等…こんな事をして、ただで済むと思っているのか!」
「くっくっくっ………こんな事しなくても、ただでは済まないんだ…お前がさっき言ったんだ。明日には拷問されて、処刑されると…だったらお前に何をしても、これ以上酷い状況にはならないだろ!?従って数々の鬱憤を晴らす為に、お前を痛めつけてやる!覚悟しておけ…お前が今までにしてきた事が、全部お前に返って来るんだから!」
「ま、待ってくれ!お、俺が悪かった…だから…」
リュカの暗い笑いが、男の恐怖心を臨界に到達させる。
「み、見逃す…お前等全員見逃す!だから助けてくれよ…な!?頼むよ!」
「見逃す……?馬鹿か、お前は!?お前一人が、僕達を見逃してどうなる?明日には、お前の仲間が大挙して僕達を捜すだろう!それに、この城からすら逃げ出せるか分からんし…だから決定なんだよ!お前の事を痛めつけるのは!くっくっくっくっ………」
「だ、だったら良い事を知っている!この牢の奥に、緊急用の脱出用隠し通路があるんだ!俺も現物を確認した事は無いんだけど、間違いなく存在するんだよ!」
「いい加減諦めろ!そんな戯れ言を真に受けるわけ無いだろ!どうせ行った先には、お前の仲間が待機しているんだろ!くっくっくっ…そろそろ時間だぞ…存分に楽しむんだな!」
薄暗い牢内を更に暗くするリュカの笑い声…
アルルは恐怖から言葉を発する事が出来ない…ウルフやハツキ等も同様に…
しかし家族だけは違った…
「お父様、私その人が本当の事を言っていると思います。きっとこの奥に隠し通路がありますわ!」
「リュカ…私も其奴の言っている事は、本当だと思うわよ。それにもし嘘ならば、その時に其奴を殺せば良いのよ!焦る事は無いわ」
「そうですよ父さん。仮に隠し通路を抜けた先に、コイツの仲間が待機してたとしても、その時はコイツを盾にして戦えば良いんです!コイツは仲間に切り刻まれながら死ぬんです!」
男の腕を捻りながら、家族の言葉に考えるリュカ…
「う~ん…そうだな!逃げられるチャンスがあるのかもしれないな!」
リュカは男の両腕を、背中側にねじ上げ立たせると、男を先頭に牢獄を奥へと進む。
数ある牢屋の殆どには、生きた人間は居らず、辛うじて2人だけが生き残っていた。
「アルル…最後の鍵で…」
リュカの指示を受け、アルルが牢屋の戸を開ける。
中には、長時間に渡りレイプされたと見られる女性と、やはり長時間拷問された男性が横たわっていた。
アルルは女性に、ティミーは男性に近付き、ベホイミで傷を癒す…
話を聞くと2人は夫婦で、しかも夫は元兵士…
「何故、兵士の貴方が投獄されたのです?」
「それがよく分からないんです…町の者から聞いた『ラーの鏡』の情報を王様に伝えた所、急に激怒してテロリストにされました…妻まで捕らえて…」
そう言うと、優しく奥さんを抱き寄せ涙する…
「ラーの鏡…それは何処にあるのか分かりますか?」
「えぇ…サマンオサから南東にある洞窟の奥に…」
リュカの顔に笑みがこぼれる。
「よし…それがあれば、あの王様がモンスターであると証明出来るぞ!ティミー、アルル…これで無実の人を傷つけずに、この国を救う事が出来るはず…ともかく、此処を脱出してラーの鏡を入手しよう!」
アルル達全員に、安堵の気持ちが広がる…
まだ危機を脱したわけでは無いのだが、リュカが言葉にすると真実に聞こえてくるのだ!
隠し通路は確かにあった!
リュカは男の腕を後ろ手にねじ上げながら、その隠し通路へと進んで行く。
すると其処には2つの独房があり、片方には中年の男がベットに横たわっている…
助ける為、鍵を開けて近付くリュカ達…
「へ、陛下!?」
先程助けた元兵士が、衰弱しきった中年を見て驚き叫ぶ!
「陛下って…この国の?」
元とは言え、この国の兵士が陛下と声を掛けているのだ…こんな間抜けな質問は他にないだろう…しかし状況的には仕方ない…
リュカの質問に、黙って頷く元兵士…
「やっぱり玉座に居るのは偽者か…だからラーの鏡の事を聞いて、恐れたんだな!ラーの鏡で正体を暴かれたくないから…」
「ではではお父様!ラーの鏡を使って、アイツの化けの皮を剥がしちゃいましょう!そうしたら『イオナズン』でぶっ飛ばしちゃっても良いですか?」
「………あの偽者だけだよ…ぶっ飛ばしても良いのは」
「は~い!」
何となく不安が残る物の、今は此処からの脱出が最優先…
「…カンダタ済まないが、このオッサンを担いでくれ。とても自力で歩けそうにないからな!」
国王だって言ってるのに、『このオッサン』呼ばわりするリュカ…しかし誰も突っ込まずに、通路の奥へと進んで行く。
隠し通路は行き止まり、天井に向けて階段が設置されている。
階段の先は天井ではなく、重そうな鉄の扉になっており、リュカが腕をねじり上げながら男越しに鉄扉を押し上げる。
「ぎゃー!!いでででででで!!!!!痛ってば!!」
リュカが鉄扉を開けきった時には、男の腕はあり得ない方向に捻れており、両腕・両肩とも複雑骨折をしているのが一目で分かる。
「シュールだな…牢獄を抜けると其処は墓地!」
リュカは男を放り捨てると思わず苦笑いする…
「いて~よ~………」
「まさか墓地に続いているとは…」
男の苦痛の叫びを無視しながら、アルルはリュカと周囲を確認する。
辺りは既に薄暗く、墓地特有の不気味さが漂っている。
「くそー…いて~…」
「うるせぇ!今治してやるから黙ってろ!」
そう言うとリュカは、男の両腕をあり得ない方向へ曲げながら、魔法を唱えた…
「ベホマ」
そう…リュカは男の両腕を捻れた状態でくっつけてしまったのだ!
「ひでぇ………」
思わずカンダタが呟く…
「酷くない!この男はマリーを犯そうとしたんだ!殺してやりたいけど、勘弁してやったんだ!命ある事を喜べ!」
リュカファミリーの誰もが…ティミーですら、リュカの言葉に無言で頷く。
そしてウルフも、この腕の曲がった男を増悪の瞳で睨み続ける…
「リュカさん、そいつどうするの?出来れば、フィービー達の元には連れて行きたくないんだけど…」
「…ウルフはどうしたい?」
ウルフは今にも殺しそうな目つきで男を睨む。
「…俺は……俺はコイツをこ「ウルフ様!」
突然ウルフの言葉を遮り、マリーがウルフに抱き付いた!
「ウルフ様にはそんな怖い顔は似合いませんわ!私は優しい顔のウルフ様が大好きですぅ!この男は、こんな腕では碌な人生を送れませんわ…だから放っておきましょうよ、ねっ!?」
マリーはウルフの瞳を見つめながら、可愛く小首を傾げて見せる。
「………う、うん…分かった…マリーがそう言うなら…」
「と言うわけで、コイツは此処に捨てて行きましょう!………でも、フィービーさん達の秘密の隠れ家まで付けられたら厄介ですから……お・と・う・さ・ま♥」
マリーは満面の笑みでリュカを見つめ、右手の親指を立ててみせる…そして笑顔を消すと同時に、親指を下へと向けて合図する。
リュカの行動はマリーの合図と同時だった…
蹲る男の両足目掛け、リュカのドラゴンの杖が勢い良く振り下ろされる!
(ゴキャ!)
鈍い音と共に男の足が脛から折れた!
「うぎゃぁぁぁぁぁ!!」
死人も目覚めそうな悲鳴が、墓地全体に木霊する…
すかさずウルフは男へ近付き、折れた両足へ手を翳すと…「ベホイミ」…と、痛みだけは取り除いてあげた。
そしてリュカ達は、二度と歩けなくなった男を残し、フィービー達の隠れ家へと戻って行く…
ハツキは思う…
「ウルフが遠い存在になってしまったのでは?」と…
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