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保健所にいた時

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第二章

 洋介は瞬時にわかった、保健所のコンクリートと鉄の檻の中で必死に飼い主を呼んでいるのか鳴いている犬は。
「ふわり、ですよね」
「やっぱりそうだよな」
「あいつが保健所に捨てられた時ですか」
「あの馬鹿共を信じていたんだな」
「それで捨てられたって思わないで」
「必死に呼んでるんだよ」
「そうですね」
 洋介は強張った顔で応えた。
「あの二人を」
「それでな」
「ええ、鳴き疲れて悲しそうに寝ましたね」
「そうなったな」
「それで保健所の人の言葉ですが」
 顔にモザイクがかかった人も動画に出ていた。
「酷いですね」
「こうした飼い主がいるってな」
「子供が生まれたばかりで、ですか」
「犬の性格が変わってな」
「それだけで捨てるとかですね」
「いるってな、完全にあいつ等のことだな」
「はい、こう言ってましたから」
 実際にとだ、洋介は他の客のラーメンを作りながら答えた、今日も店は繁盛していて客は多い。それで話をしていても手はしっかり動いているのだ。手際もいい。
「朝から晩まで吠えるって」
「そんなの一日中ケージに入れて散歩にも行かないでな」
「ブラッシングもしない、見向きもしないで」
「吠える筈だ」
「そんなことも考えなかったんですね」
「ああ、それでもういらないだ」
「本当に酷いですね」
 洋介は怒りに満ちた顔と声で答えた。
「聞いて知ってましたが実際に見たら」
「この動画兄さんのスマホに送ろうか」
「お願いします」
 洋介は即答で応えた。
「それじゃあ」
「ああ、そういうことでな」
「親戚中に知らせます」
「あいつ等がどんな奴等かだな」
「あらためて知ってもらう為に」
「社内でも皆この動画観て怒ったさ」
 彼はこうも話した。
「こんな酷いことをしたのかってその目で観てな」
「そうなったんですね」
「あいつ以外は皆観たさ、それで余計にな」
「嫌われてるんですね」
「会長社長も含めてな」
「会社の人全員ですね」
「うちは滅多なことじゃクビにならない会社だが」 
 それでもというのだ。 
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