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戦国異伝供書

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第百二十九話 灰からはぐれた者達へその四

「上様の周りをお守りするな」
「だからですか」
「ここでそうした話をしてもな」
 それでもというのだ。
「別におかしくない」
「左様でありますか」
「そうじゃ」
 こう言うのだった。
「最早な」
「左様でありますか」
「だからですか」
「我等の話もですか」
「それだけの働きをしてきたからな」
 最初は一介の忍達でもそれぞれ旗本になる様なというのだ。
「だからな」
「これよりですか」
「我等の話もですか」
「聞かせてもらう」
 こう煉獄達に話した。
「よいな」
「さすれば」
 居士が応えてだった。 
 彼は茶を飲んでからその話をはじめた、その話はというと。
 居士は都で師と知り合い彼に弟子入りし飛騨で修業を続けた、そして妖術を一通り教わるとだった。
 師である年老いた男にこう問われた。
「お主今の世をどう思うか」
「この戦国の世を」
「憂うべきものと思わぬか」
「はい」
 まさにとだ、居士は師に答えた。
「それは」
「早く終わらせたいな」
「戦で苦しむのは力なき者達です」
 居士はこうも答えた。
「都でもです」
「応仁の頃よりな」
「荒れ果ててです」
「最早狐狸と夜盗の巣じゃ」
「商いをしていましても」
「まともにであるな」
「それがしも苦労しました」
 都で商いをしていたがというのだ。
「実に」
「そうであったな」
「はい」
「それをな」
 まさにというのだ。
「これよりはな」
「はい、その世をですか」
「憂えるなら考えるのだ」
「それがしに何が出来るか」
「その術でな」
「妖術で」
「他にもあらゆる学問を授けた」
 師はこうも話した。
「だからな」
「その学問で、ですか」
「何が出来るか」
「戦国の世をどうにかする為に」
「考えるのじゃ」
 こう居士に言うのだった。
「これよりな。わしはもうじゃ」
「お歳で」
「最早長くない」
 寿命、それが近付いているというのだ。
「だからな」
「後はですか」
「お主はまだ生きる、だからな」
「生きるだけですな」
「何かせよ」
 戦国の世に対してというのだ。
「考えてな」
「さすれば」
 居士は師の言葉に頷いた、そしてだった。 
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