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水に入って

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第二章

 息子は数日後目を覚ましてそうして言った。
「お母さん?」
「えっ、目覚めたのね」
「よかった、助かったか」
 母も父もそして姉もだった。
 我が子が言葉を出して目を覚ましたことに笑顔になった、そうして。
 以後アレクサンダーはリハビリを受けた、しかし脳に障害もなく無事にだった。
 退院して普通の生活に戻れた、その我が子を見てだった。
 父は母に自宅で言った。
「若しもあの時」
「ええ、レアーラが呼んでくれなかったら」
 母もこう応えた。
「その時はね」
「アレクサンダーはどうなっていたか」
「考えるだけでも怖いわ」
「レアーラが助けてくれたんだ」
 こう言うのだった。
「間違いなくな」
「そうよね」
「犬が人間を助けるなんて」
「よく聞くけれど」
「本当にあるんだな」
「そうよね」
 二人でこう話した。
「レアーラがそうしてくれたから」
「事実だって言えるな」
「本当にね」
「レアーラ、有り難う」
 父は彼に心から感謝の言葉を述べた。
「お前のお陰でアレクサンダーは助かった」
「貴方がいたからよ」
 母も言った。
「アレクサンダーは無事なのよ」
「お前は最高の家族だ」
「私達は貴方と一緒にいられて幸せよ」
「だからこれからもな」
「ずっと一緒にいましょう」
「ワン」
 レアーラは自分に言う両親に一声鳴いて応えた、そうして。
 今は寝ているアレクサンダーの傍に向かった、そうして彼に優しい目を向けながら寝転がり丸くなった。そんな彼を見て娘も言った。
「レアーラは最高ね」
「全くだ、こうした子がいてくれてな」
「私達は本当に幸せよ」
「アレクサンダーを救ってくれて」
「今も傍にいて護ってくれてるから」
「こんないい子が家族でね」
 娘はそんな彼と弟を見てにこりとなってこうも言った。
「私達本当に幸せね」
「全くだな」
「こんないいことはないわ」 
 一家で話した、レアーラはその彼等の笑顔を受けつつアレクサンダーを見守っていた。その顔にはこれ以上はないまでの慈愛があった。


水に入って   完


                2021・3・21 
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