水に入って
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第一章
水に入って
オーストラリアのコフス=ハーパーでのことだ。
ケニー家の面々は家長であるディビットの友人の別荘を借りてそうして夏のバカンスを過ごしていた。
その中には二歳の男の子アレクサンダーもいた、一家全員金髪で目は黒でありアレクサンダーもそうだった。
そこには一家の家族であり頼れる友人であるレアーラ、スタッフシャード=ブルテリアの雄で腹が白い黒犬の彼もいた。
一家は幸せに夏のバカンスを楽しんでいた、だが。
ふとだ、一家の長女でアレクサンダーの姉でありメアリーが言った。
「アレクサンダーは何処?」
「その辺りにいない?」
母のエリザベスが応えた。
「あの子なら」
「お家の何処にもいないけれど」
「じゃあお外かしら」
「近所で遊んでるんだろ」
父は気軽な感じで言った。
「そうなんだろ」
「そうかしら」
「だからな」
「特になの」
「心配はいらないだろ、まだ小さいけれどな」
二歳だが、というのだ。
「近くなら問題ないさ」
「この近くなら」
「別に危ない場所もないしな」
別荘の近くにはとだ、父はこう言った。だが。
ここでレアーラの声が別荘の扉から聞こえてきた。
「ワンワンワン!」
「レアーラが鳴いてるわね」
「そうよね」
二人で話した。
「何かいつもより大きくて」
「必死だけれど」
「どうしたのかしら」
「何かあったのかしら」
「まさか」
父は嫌なものを察した、そしてだった。
別荘の扉を開けてそうしてレアーラに問うた。
「何があったんだ?」
「ワンワンワン!」
レアーラは父が出て来るとだった。
急いである場所に駆けて行った、その時父の方を振り向いていたので父はそれがついて来て欲しいという仕草と見てだった。
彼についていった、すると。
湖にアレクサンダーがいた、湖の中にうつ伏せに寝ている。アレクサンダーは自分から湖の中に入っていったが。
彼の大きさではアレクサンダーは助けられないことは明らかだった、それで父もだった。
すぐに湖に入ってそうして息子を救い出し。
携帯でレスキューを要請し息子をヘリで病院に運んでもらった、だが。
医師は一家に話した。
「駄目かも知れません、そして助かっても」
「それでもですか」
「助かってもですか」
「はい、脳に障害が残る可能性が高いです」
こう言うのだった、一家は医師の言葉に絶望するしかなかった。
そして何とかと神に祈っていたが。
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