リュカ伝の外伝
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天使とラブソングを……?(第13幕)
(グランバニア城)
ピエッサSIDE
「まぁただ……ハゲマンを大赤字にしてやったんなら最高だね(笑)」
「大赤字だと思いますわ陛下。ピアノの価値を差し引いても、このバイオリンだけで数千Gですから(笑)」
な、何で他人の大赤字を笑顔で喜べるのよ、この二人?
「よし! この話はザマァって事で終わりにして、昨日約束した楽譜を今のうちに渡しておくね」
眩しいくらいの満面の笑みで話を終わらせた陛下は、傍らに置いてあった封筒を手にし、アイリーンへと手渡した。
「“春よ、来い”の楽譜ですね♥」
大事そうに封筒を受け取り中を確認。
私も軽く覗き込む様に中身を見ると、そこには陛下の綺麗な字で『春よ、来い』と書いてある楽譜が……羨ましい。
「ちょっとアイリーン。もう楽譜はあるんだから、それは私に頂戴よ」
「馬鹿じゃないのアンタ! 陛下より頂いた楽譜は、もう楽譜としての価値を超越して芸術品へと昇華してるのよ。持ち帰ったら額に入れて飾るのよ!」
「そんな大袈裟な(笑)」
「大袈裟じゃぁありませんわ! だってもう、楽譜は自分で書いたヤツがありますし!」
「じゃぁやっぱり陛下から頂いた楽譜要らないじゃん。私に頂戴よ」
「楽譜が欲しいのなら私が書いたヤツをやるわ! もうこちとら楽譜無しでも弾けるんじゃ!」
半ギレ気味に自分で書いた楽譜を私に押しつける。
「仲が良いなぁ(笑)」
そんな遣り取りを見て陛下が微笑む。何か嬉しい。
「でも流石だなぁ。まだ丸一日経過してないのに、もうマスターしちゃったんだ。昨日あの後お店で練習したの?」
「は、はい……ちょっとだけ(照)」
「ちょっとどころじゃないでしょう。先刻アンタ私に『2時間練習した』って言ったわよ」
「2時間かぁ……ハバローネ伯は意外と心が広いなぁ」
「2~30分のつもりが、熱中してしまって……」
モジモジとしおらしくするアイリーン……ちょっとイラッとする(笑)
「じゃぁ早速聴かせてもらおうかな、練習の成果を」
「はい。喜んで♥」
陛下に促されピアノに向かうアイリーン。陛下に貰った楽譜を大事そうに仕舞い込んで……って、楽譜使わんのかい!!
・
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「いやぁ~流石だね。曲を教えてからまだ半日しか経ってないのに、もう完璧に自分の曲にしちゃってるね」
「そ、それしか才能が無いモノで……」
謙遜……とは違うわね。
「自信を持って良い才能だよ。僕なんか、ひたすら練習しないと上手くなれない。先刻のバイオリンで解るでしょ?」
「そ、そんな事ありませんわ! 陛下は多分野において凄い才能をお持ちですわ! 勿論音楽関係もです」
「その通りです陛下! それに練習する事こそ、最も大切だと私は思います!」
「そうだねぇ……ピエッサちゃんの傍には、練習しない奴が居るもんねぇ。はぁ~(溜息)」
ん、拙い話題だったかも。
確かに頭に思い浮かんだのはマリーちゃんだけど。
「練習しない……って、あのマリーって娘? 確かに、何時まで経っても下手よね、あの娘」
「そ、そんな事ない……事も無い(小声)……わよ。マ、マリーちゃんはマリーちゃんなりに……その……あの……い、良い娘なの!」
「いやいやピエッサちゃん。良いよ無理しなくて。アイツは根性がねじ曲がってるからね」
「……………う~~~~っ(汗)」
否定できない……もう話題を変えたい!
「……陛下は彼女の事を詳しく存じ上げてるのですか? ま、まさか……妾さんのお一人……!?」
「いやいやいや、違う違う違う! アイツに手を出したら、リュリュがブチ切れる。それに性格面が僕の好みとは真逆!」
「そ、そうですか……失礼な事を言ってしまい申し訳ございません」
まぁ陛下の反応としては、そうなるわよねぇ……
まさか『娘だ』なんて言えないだろうし。
「アイツはね、僕とビアンカの娘なんだ」
「「……え!?」」
言っちゃうのぉぉぉぉぉ!?
「そ、そうだったのですか! わ、私ってば姫様に対して失礼な言動を!!」
ですよね、ですよねぇ!
性格がアレでも姫様になるんですもんね!
「あぁ、そこは気にしないで良いよ。僕とビアンカの娘ってだけで、王位継承権は無いからお姫様扱いしなくていいよ。だから『下手は下手』・『音痴は音痴』とハッキリ言ってくれた方が助かる。まぁでも、テロとかの対象にならないように、わざわざ僕の娘である事は口外しないでね……それで人気が出て、それを実力だと勘違いされても嫌だから」
「解りました。この件は口外致しません……ただ気になるので伺いますが、宰相閣下は存じ上げてるのですか?」
「勿論存じてるわアイリーン。何せその事を前提に私を関わらせたんですから」
「まぁそういう事。仕事上グランバニア王家に関わらざるを得ない連中で、地位の高い者はほぼほぼ知ってるよ。地位が低くても関わってる仕事内容の所為で知ってる奴も居る。何所までの人間が知ってるのかを説明するのは面倒臭いから、基本的にあの娘は王家とは関係ないとしておいて……性格的に王家の恥だから」
「了解致しました……陛下も大変ですね」
「うん……子育てって難しいよ。多くは望んで無いんだけど、強烈に面倒な性格の娘が二人も居る。どうしてこうなったのか……?」
え゛……もう一人居るんですか、あんなのが?
「あ、そうだピエッサちゃん。今回の件……ラインハットの田舎の件の事だけど……アイツには秘密ね。手伝う気も能力も無いクセに、カタチだけ関わって自分の名前を広めようとするから」
「わ、解りました……音響装置の時と同じですね」
「おや? アイリーンちゃんの前で言い切っちゃうって事は、彼女には言っちゃったね」
「あ゛……も、申し訳ございません!」
や、やばいぃ……世間には秘密の案件だったのに!
「いや、良いって……大丈夫。もう今更バレてもマリーには関わる事が出来ないから、全く以て問題ないよ。来週には世間に広めるつもりだし」
よ、良かった……ギリギリセーフで!
「じゃぁ序でに、また新しい物を作ってもらおうと思ってたんだ。次回はアイリーンちゃんにも協力してもらおうと思うから、今の内に概要を言っちゃうね」
「ま、また新しい発明ですか? 既に思い浮かんでたなんて……流石です!」
「いや……思い浮かんでたと言うか……まぁいいや。えっとね、今回作った音響装置と既に存在するアコースティ……ゲフンゲフン……ギターとベースを合体させようと思ってるんだ」
「合体させる?」
「うん。名付けてエレキ……じゃぁなくって“マジカルギター”と“マジカルベース”だ!」
「マジカル……なるほど! 魔法技術と楽器の融合ですね!」
今ので理解出来たの!?
「うん、音楽の幅が広がると思うんだ」
「素敵ですわ陛下! 私に出来る事があれば、何なりとお申し付け下さいませ」
わ、私も協力するつもりだけど、まだ理解が追い付いてない。
「まぁ二人には、開発の手伝いより、世間に広める手伝いをお願いしようと思ってるよ」
「……と言いますと?」
あ、流石のアイリーンにも理解が追い付いてないみたい。
「まあまあ、そう焦らず。その時が来たら詳しく説明するよ……それよりもラインハットの件を先に片付けよう」
「そ、そうですね……まずは一つずつですね」
「さぁて……じゃぁ今回の件について更に話を進めよう」
そう言うと陛下は傍らに置いてあったバインダーを手にし、中から楽譜を出して私達に手渡して下さった。
「今回サンタローズの聖歌隊に教える楽曲だ」
そう言われ私もアイリーンも楽譜に目を落とす。
そこに書かれていた曲名は……
『Hail Holy Queen』
ピエッサSIDE END
後書き
次話、ストーリーが脇道に脱線します。
なので次回は「第14幕」じゃなく
「第13.5幕」です。
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