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律儀に

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第六章

「本当に」
「律儀尽くしだな」
「ああ、心から思ったよ」
 こう言って自分の曲を歌う、だが八幡の曲ははじめて歌う曲であり振り付けもしなかった。お世辞にも上手とも言えなかった。
 だが沙織はその彼に何も言わず歌い続けた、その後で。
 夕方帰路についた時に沙織は八幡に問うた。
「もう終わりだな」
「ああ、後はな」
 八幡は沙織に返した。
「お前の家の前までな」
「送ってくれるか」
「そうするな」
「いつもそうしているな」
「女の子一人帰すなんてな」 
 そうしたことはというのだ。
「よくないからな」
「だからか」
「家までな」
 沙織のそこまでというのだ
「送るな」
「今回もだな」
「そうさせてもらうな」
「わかった、ではな」
「帰ろうな」
「そうしよう」
 沙織は八幡の言葉に頷き彼に家まで送ってもらった、そして玄関の前でお別れとなったその時にだった。
 ふとだ、沙織は八幡にこんなことを言った。
「君がよかったらだ」
「何だよ」
「寄り道をしてもよかった」
「寄り道って何処だよ」
「ホテルだ」
 この言葉を小声で出した。
「そこにな」
「おい、嘘だろ」
「嘘は嫌いだ」
「お前はそうだけれどな」
「交際しているからな」
 それでというのだ。
「そこに寄ってもだ」
「よかったのかよ」
「避妊具も用意していた」
 それもというのだ。
「君の指の大きさからサイズも考えてな」
「指のかよ」
「人差し指の大きさというからな」
 そのサイズはというのだ。
「用意しておいたが」
「あのな、それはな」
「その気はないか」
「あってもな」
 八幡はどうかという顔で返した。
「早いだろ」
「ホテルはか」
「ああ、キスもまだなんだぞ」
「キスもそこでだ」
「ホテルの中でか」
「そう考えていたが」
「そんなことは成り行きでいいだろ」
 これが八幡の考えだった。
「そのうちな、付き合っているうちにな」
「していくものか」
「デートの回数や付き合ってる期間とかでな」
 そうしたものでというのだ。
「決めてくものじゃにだろ」
「成り行きか」
「それでいいだろ」
「そうか」
「ああ、だからな」
 それでというのだ。 
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