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GATE ショッカー 彼の地にて、斯く戦えり

作者:日本男児
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第3話 強硬派壊滅!!新たな脅威!

ネオショッカー州 ゲルマニアエリア とある教会



不穏分子(テロリスト)共の役立たずが!!!」


礼拝堂に男の怒号が響き渡る。礼拝堂には数名の男達がおり、他の顔ぶれも落ち着きがなかった。


「普段はゴキブリみたいにしぶとい癖にこういう時は使い物になりやがらねぇ!!」
「どうする?どうする?」


男達は忙しなくウロウロと礼拝堂の中を歩き回る。
彼らこそ、アンチショッカー同盟に異世界からの来賓の情報を流した張本人である、強硬派の防衛軍の青年将校だ。

普段は『大首領様の為、帝国と日本国という賊軍を討ち滅ぼせ!』と声高らかに叫ぶ彼らだが、本音を言えばこの世界のことなどどうでもよかった。彼らの頭の中は自己の保身や出世でいっぱいだった。

とはいえ、彼らも元からこうだったわけではない。元々は千堂と同じ……いや、千堂以上にショッカーの掲げる正義や理想を信じていた者が殆どだ。しかし、実際には全ての人間がショッカーの掲げる理想を享受できているわけではない。

まさに彼らがその典型だった。
彼らは無能ではなかったが不幸にも『活躍の場』が足りなかった。自身の優秀さをいかんなく発揮できる活躍の場が少ないがゆえに自分達がいかに優秀かをアピールできず、組織の中で成り上がることは難しかった。

だがそんな状況の中でも彼らは自身の野望をおいそれと諦めるほど単純ではなく、より一層、職務を全うしてずっと耐え忍んできた。
自分達がいつか軍、ひいてはショッカーの中で成り上がれる日を夢見て。



それでも現実は厳しかった。ショッカー世界において防衛軍人の活躍の機会は、たまに来る災害派遣任務か不穏分子の掃討任務ぐらいしかない。前者は専ら、戦闘員の仕事であり、後者に至っては"めぼしい任務"を経験豊富な軍人達が持っていってしまう。
その中に割り込めるのは余程のコネがあるか、『優秀』と評価されているかのどちらかである。


そんな時だった。銀座に『門』が開いて帝国・日本という不穏分子よりも遥かに巨大で弱々しい他勢力が現れたのは。



彼らにとってこれは一世一代のチャンスだった。
もしも戦線が拡大し、そこで武功を建てることができれば自身が人的資源として優秀であることをアピールでき、これからの出世も見込める。また、ショッカーに大きく貢献したとして怪人にもなれるだろう。


だが彼らの期待に反して政府上層部は帝国を戦闘ではなく経済で征服する方針を示し、日本とは共闘関係(表向き)を結んでしまった。
(※日本世界征服作戦自体は極秘扱いなため、軍ではなくGOD秘密警察の仕事である)
そうなってはタカ派発言しかしない彼らは自ずと邪魔になり、要職から解かれ、軍隊の中で肩身の狭い思いをする羽目になった。中には地方に左遷されるという憂き目を見た者もいたほどだ。

この『青年将校』のグループはこのまま自然消滅してしまうのではないかと誰もが思った時、



天は彼らに味方した。
 



日本国のマスメディアが反ショッカー報道を開始したのだ。そしてそれを知ったネオショッカー大首領が激怒し、独自に対日強硬派という一派を成立させたことで彼らは先見の明がある若き青年将校として何とかこの派閥で中心的勢力として居座ることができた。

しかし、今やその地位すら危うい。


「とにかく、次の行動に出るより他はない。でもどうすれば」
「これ以上、何をすれば……」


彼らが思惑を巡らしている中、教会の扉が勢いよく開かれた。
彼らが何事かと注視すると紺色の一群がなだれ込んでくる。ショッカー警察の武装警官だ。


突然のことに青年将校達は対応できず、そのまま警官によって腹ばいに地面に押し倒され、手を後ろでに回される。


「離せ!!お前ら、誰に手錠をかけてるか分かってるのか!?」


「黙れ!貴様らには『利敵行為』の容疑がかかっている!!大人しく縄につけ!」


「何ィ!利敵行為なんかしてないぞ!!」 
「やめ、やめろぉ!!離せぇぇぇ!!」


電子手錠で拘束されながら、青年将校達はわめき続ける。往生際が悪いとはこのことだ。彼らはそのままショッカー警察の本部へと送られ、事情聴取を受けた後、死刑が確定した。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――
日本エリア 東京 大首領宮殿


謁見の間にて、ショッカー大首領は玉座に座ってある人物の報告を聞いていた。報告をしているのは白いスーツを着た青年だ。
彼こそ、GOD秘密警察の第1室長、アポロガイストである。
彼がわざわざ根城であるニューヨークから遠く離れた東京に訪れたのは大首領に直接、"裏切り者"の処遇に関する報告をするためだ。
 

「ご要望通り、テロリストに関与した青年将校は処分しました」


ショッカー大首領は三角頭巾越しの1つ目で、(ひざまず)いて忠誠を顕にしているアポロガイストをジロリと見ると、重々しい声を放つ。


「そうか、これに関して強硬派の出身地の大首領や大幹部に動きはないか?」


「ハッ、ネオショッカー、ドグマ、クライシスの首領や大幹部達もまさか青年将校が不穏分子と通じていたとは予想外だったようで、一様に困惑した様子を見せております」


「なるほど。…しかし、奴等にも監督責任というものがある。私からきつく言っておかねばな」


大首領の明らかに怒気を孕んだ声にアポロガイストは震え上がった。その過程で一体、何人の血が流れることか、想像しただけで冷血な彼でさえ恐ろしかった。
ともかく、これでネオショッカーやドクマらの発言力は低下したのは確実なため、強硬派の壊滅は確定したと言ってもいい。

「さて、間もなく使節団派遣だが、彼の世界征服はどこまで進んでいる?」


アポロガイストは気持ちを切り替えて征服作戦の進捗状況を報告する。


「まず日本国ですが、つい数日前に国内の主要な原発や水道などのインフラ設備に戦闘員を潜り込ませることに成功しました。EP党による政権獲得工作も併せれば日本国の征服は間もなく完了するかと……」


アポロガイストは大首領の三角頭巾の奥にある単眼が怪しく光るのを感じた。どうやら満足しているようだ。


「フフ、そうか。ライダーがいないだけでここまでスムーズに進むとはな。…では他の支部は?」


「ハッ、ご存知の通り、ベルリン支部はネオナチ団体への工作を行っており、ヒトデヒットラーからの報告によるとドイツ国内の4割の掌握に成功したとのこと。
ニューヨーク支部は支部長のサソリジェロニモが主導で貧困層や被差別階層に対する扇動を行っています。これが功を奏し、彼の国に相当数の現地協力者を養成することができました」


「素晴らしい。思った以上の戦果ではないか。香港支部の方はどうだ?」


「香港支部はムカデヨウキヒが担当しており、中国国内の民主活動家やチベット・ウイグルなどの抵抗組織に銃火器の貸与などを行っています。また、1週間前に武漢市にあるウィルス研究所の乗っ取りに成功したので、そこで新型ウィルスの研究開発を行わせています」


「抵抗組織に新型ウィルスか……これらを使って彼の国を混乱させ、さらに国力を削ぐというわけだな?」


「そうです。同国の国内を混乱させ、ゆくゆくは傀儡政権を樹立させようと思っております。
アフリカやロシアに対しても中国と同様の作戦を計画しており、テロリストや抵抗組織に支援を行っております」


「アポロガイストよ、素晴らしい。素晴らしい進捗速度だ。このまま征服計画を進めよ。成功の暁には貴様によりよい椅子を用意しよう」
 

「ハハッ!!ありがたき幸せ」


ショッカーの日本世界征服作戦は着々と進んでいた。  

――――――――――――――――――――――――――
アメリカ合衆国 ホワイトハウス


ホワイトハウスの大統領執務室ではデュレルが満足そうな笑みを浮かべていた。
ショッカーとの会談を日本とアメリカで独占することができたからだ。
これから自分達を待ち受けるであろう莫大な利益を想像し、デュレルは口元に弧を描いた。



「フフ……我が国と日本が交渉の席を独占することに成功したわけだが、ショッカー側の世界を市場とした場合、その利益はどれほどになりそうかね?」


「国務省からの見立てですが、かなりの利益が見込めると思われます。ショッカー世界は人口が異常なほど多いので食料や資源を中心に売り込むとよいでしょう」


補佐官もまた、デュレルと同様に笑みを浮かべていた。


「フフ、そうだな。なんとしても異世界との交易は我がステイツが独占するのだ」


ここにきて、アメリカの黒い面が如実に現れていた。他国との交渉の場で、隙あらば自分達が主導権を握れる環境を整え、都合の良い資料や甘い言葉で利権に入り込む。全ては多国籍企業が他国でマネーゲームを行うためである。

彼ら多国籍企業は利益を上げるためなら何でもする。
政府に圧力をかけて始めさせた石油利権目当ての戦争でイラク人を劣化ウラン弾で虐殺しようと、中共と組んでウイグル自治区でウイグル人を奴隷のように強制労働させようと心が痛まないのだ。


だが、そこまでしても結局、富を得るのは1%の富裕層だけ。
貧困層はその利益にありつくこともできず、時間を追うごとに肥大化する富裕層に経済面で搾取される。
いや、経済面だけならまだいい。学校給食にファストフード会社が参入している現状では『健康』すら搾取されている。その悪性ぶりは凄まじく、彼ら貧困層の最後の勤め先である軍隊に入ろうにも入隊検査の時点で弾かれる程だ。
かといって病院に行けば高額な医療費を請求される。

政府もこれを止めることはしない。99%の民を金儲けの対象としか見ていないからだ。『国民皆保険制度は社会主義の道だ』と政府が声高らかに叫んでいる辺りにその思惑が見え隠れしている。
そして、ただでさえ苦しい生活をしている貧困層に商業主義に走った肥大化したキリスト教会…いわゆる『メガチャーチ』が近づき、二重に搾取する。


国内は矛盾と不満だらけ。到底、『自由の国』と言えるものではない。
デュレル自身もその事を問題とは思ってはいるが手の打ちようがなかった。
なぜなら、彼もまた富裕層やユダヤロビーの支持なくして大統領の職を続けることが不可能だからだ。


「ふむ、では他国の反応は?我が国の独壇場となるのはさぞ悔しいだろうな」


「その…他国ですが、不穏な動きを見せつつあります。それに未確認情報ではありますが、南北コリアが"実力行使"に出るという情報がCIAの元に飛び込んでまいりました」


秘書官の言葉にデュレルは驚き、思わず立ち上がった。


「じ、実力行使だと!?そんなことをすれば一体、どんなことになるか!やめさせるべきだ!!」


「いえ、大統領。これはチャンスですよ」

 
「チャンスだと?何のだ?」


「CIAの工作員がことごとくショッカー側の門の潜入に失敗しているのはご存知ですね?」


CIAはこれまでに何度もショッカー世界に対する潜入作戦を計画していた。しかし、いずれも失敗に終わっている。
アメリカに限らず、ロシアや中国など日本側世界の工作員達はありとあらゆる手段でショッカー側世界に潜入しようと試みたがどうやってもオ・ンドゥルゴ基地に入り込む前に発見され、捕縛されていた。
事前の準備や証拠隠滅は完璧だったはずだ。…にも関わらず、オ・ンドゥルゴ基地の監視や警備は人知を超えるほどに厳重過ぎたのだ。

中にはショッカーに対する諜報自体を中止する国が出る一方、アメリカやロシアは超大国としてのプライドが邪魔し、諦めることができなかった。


「今回のコリアの実力行使に乗じれば、ショッカー側の戦闘データを集めることができます。日本には我が国の預かり知らないことと白を切ればいいんです」


補佐官からの言葉にデュレルは「うむむ」と唸る。迷っている様子だ。それを見た補佐官はあと一押だと確信し、口を開いた。


「何れにせよ、改造人間の戦闘能力が不明瞭です。これを利用しない手はありません。それに…我が国が中露やコリアに遅れをとってもいいので?」


「……分かった。作戦を許可しよう」


デュレルが渋々、頷くと、補佐官は得意そうな顔をした。

――――――――――――――――――――――――――
中国 中南海 国家主席執務室



アメリカが策謀を巡らす中、中国国家主席の薹 徳愁は頭を抱えていた。
というのもここ最近、国内…とりわけ、チベットやウイグルでの反中運動が過激化しつつあるという報告を受けたからだ。
反中運動についての報告書の中には見たこともない自動小銃や戦闘服で武装したウイグル人の写真が貼付されていた。さらには兵士の中には怪物を見たという証言をする者まで出ていた。前者はともかく、後者の方は報告した兵士の正気を疑ってしまう。

薹 徳愁は大方、CIAが裏で支援しているのだろうと結論づけた。あの組織にはかつてチベットの抵抗組織を支援していた過去があるからだ。


「まぁ、適当に弾圧を強めておけば大丈夫か。いくら装備がよくなろうと、あんな野蛮人共なぞ中華民族の敵ではない。どうせ、イスラム教国やアメリカ企業はこっちの味方だ」


これまで通り、アメリカ企業にはウイグルの安価な労働力を、イスラム教国にはウイグル人の臓器を売ればいい。一度、利権に巻き込んでしまえば連中がこちらを批判することはない。連中だって感情や同胞意識よりも利益を優先するからだ。
抵抗運動など好きにさせておけ。時期になったら徹底的に弾圧し、天安門事件の時のように風化するのを待とう。


「問題は対ショッカー外交だ。日本とアメリカに交渉を独占されたのは痛いな」


国家安全部からの情報によればアメリカがショッカーの使節団との会談権を勝ち取ったという。全く忌々しい。
日本とアメリカと交渉を開始したとなれば、ショッカーがこれからアメリカ陣営に取り込まれていくことはほぼ確実となる。そうなれば、ショッカー製の進んだ武器や技術が自衛隊や米軍に渡ることとなり、今後の太平洋進出に支障をきたすことになる。


それだけは絶対に防がねばならない。その上で可能ならばショッカーをこちらの陣営に引き込みたい。ショッカー製の兵器を輸入し、運用ノウハウを学べば我が中華民族は永遠に世界に君臨できるというのに。


どうすれば、どうすればショッカーは日米との関係を断ち切って、こちら側に接近してくるんだ。


薹 徳愁は悩んだ。悩んだ。悩んだ。そして悩んだ末に彼の頭に一筋の光明が射した。


そうだ、日本とアメリカに対して不信感を持たせればいい!
決して信用できない危険な相手だとショッカーの上層部に認識させるのだ。


ちょうどショッカーの使節団の訪日が間もなくだ。
奴らをアメリカの仕業に見せかけて襲撃することができれば今後、ショッカーはアメリカと手を組むことはないだろう。それと同時に『警備が不十分』として、招待国である日本との信頼関係を失わせることもできるはずだ。


そうなれば、自ずとショッカーは日米という自由主義陣営ではなく、我が国に接近してくるだろう。善は急げだ。


薹 徳愁は早急に作戦を計画させるべく、国家安全部に電話をかけた。そしてその数日後、作戦は承認され、実行準備が整った。

――――――――――――――――――――――――――
米中の方針さえ換えた対ショッカー外交。それは某半島国家も同様だった。尤も、この国の対ショッカー外交は悪い意味で他国と一線を画すものだった。



大韓民国 青瓦台 大統領府



「大統領……本当によろしいのですか?この『作戦』、成功する見込みがどれだけあるか……」


大統領が『ショッカーに賠償を請求しましょう』と不敵に微笑んでから早一週間。首相は大統領執務室で『作戦』を実行していいのか尋ねていた。おおよそ作戦といえるものではないそれに首相は不安を覚えていたのだ。


「何度言わせるの!?失敗するはずがないじゃない!!いい?もう一度、この完璧な作戦内容を聞きなさい!」


大統領執務室にて、金槿恵は鼻息を荒くして、つばを撒き散らしながら話す。


「ショッカーの使節団を拘束し、その上で多額の賠償を請求するの!!そして、さらに異世界の韓半島(ハンバンド)を解放するよう要求するのよ!!!」


そう、これこそ金槿恵が立案した狂気の作戦であった。
首相はますます顔が暗くなり、気分が悪くなった。


多額の賠償金請求。さらにショッカー世界の朝鮮半島の割譲要求。



狂ってる。
第一、ショッカーがそんな要求を飲むはずがない。我が国が彼らに敵視されショッカーとの交流が永久的に不可能になる。宣戦布告と取られても文句は言えない。

それだけにとどまらす、韓国が世界中から敵対視されてしまい、良くて経済は混乱、最悪の場合は諸外国から国交断絶通告の嵐が舞い込む可能性がある。


彼は愛国心とかそういった崇高な物は一切、持ち合わせていない。
彼も他の政府高官と同じで、利権に吸い付いて甘い汁さえ吸えれば何でも良かった。
だがこのままでは大韓民国という沈みゆく泥船に乗る羽目になってしまい、自分もそれに巻き込まれてしまう。
それだけはごめんだった。


「…そうだ!なんなら北韓(北朝鮮)との合同作戦に変更して2対1でショッカーと戦いましょう!アイツら、曲がりなりにも核兵器を持っているわけだし!!きっといける!」


どうやら大統領は韓国が北朝鮮と対立していることすら忘れてしまったようだ。
しかし、自分は首相、眼の前の女は大統領。大統領命令を拒否するには立場が違い過ぎた。


「……分かりました。国家情報院に伝えます」


首相は渋々、大統領から命令書を受理して執務室から出ていった。金槿恵は妄想にふけっているのかニヤニヤと笑っていた。
そんな様子に青筋をたてながらも、彼は命令書を懐に入れて静かに廊下を過ぎ去り、そのまま国家情報院に向かった。




その後、すぐに韓国政府は北朝鮮に対し、合同工作作戦を提案。北朝鮮の朴正恩は突然のことに戸惑いながらもこれを了承。近々、日本を訪れるというショッカー訪日団に打撃を与えるべく暗躍するのだった。





プレイヤーは揃った。それぞれの国がそれぞれの思惑を胸に動き出す。
―そしてショッカー使節団、訪日当日を迎えた。
 
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