戦国異伝供書
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第百二十五話 誘い出しその二
「敵を見れば自ら出向かれ倒される」
「そうした方なので」
「我等が沖田畷に入れば」
「必ず来られ」
「攻めて来られますな」
「非常に血の気が多いといえば」
どうかとだ、義久は話した。
「まさにです」
「その通りですな」
「そうした方なので」
だからこそというのだ。
「確実にです」
「沖田畷で戦となりますな」
「ですからここは」
「沖田畷に入ればいいですな」
「そうです、ただ」
義久は有馬に強い声で返した。
「勝つには一つ大事なことがあります」
「といいますと」
「はい、我等が一丸になることです」
このことも言うのだった。
「それがです」
「そのことですか」
「我等は家が違いまする」
「家が違うとなりますと」
「やはり何かと違います」
家が違う、そのことでというのだ。
「ですからそこをです」
「乱れることのない様に」
「そうしてです」
そのうえでというのだ。
「戦うべきです」
「それが大事ですか」
「肝要です」
大事どころかというのだ、義久はこのことを言うのだった。それはとにかく両家が一丸になることだというのだ。
「何といいましても」
「そのことをですか」
「確かにしていきましょうぞ」
「若し我等がですか」
「共に動かねば」
その時はというのだ。
「我等は敗れます」
「そうなるからですか」
「何があっても」
まさにというのだ。
「揉めるべきではありませぬ」
「そういうことですな」
「そのことを確かにしていきましょうぞ」
何といってもというのだ。
「ここは」
「それでは」
有馬は義久の話を聞いてこう返した。
「これより双方の絆を深める為にです」
「その為にですか」
「共に酒を飲み語り合いますか」
「ですな、そうしてお互いに絆を深めましょう」
こうしてだった、島津家と有馬家は共にだった。
酒を飲みそうして語り合い絆を深め合った、夜はそうして昼も共に飯を食った。同じ釜で飯を食うこともして。
絆を深めそのうえでだった。
翁畷に向かっていた、義久はその進軍中でまた言った。
「うむ、両家の絆はな」
「深まっていますな」
「共に飯を食い酒を飲み」
「そして語り合っているので」
「それで、ですな」
「両家の軍勢は一丸になっていますな」
「うむ」
島津家の家臣達に応えた、共に馬に乗り進軍中に話した。
「よいことじゃ」
「若し共に戦う者達が争えば」
「もうそれで負けまする」
「ましてやこちらが寡兵なら」
「勝てる筈がありませぬ」
「左様、だからじゃ」
そう考えてというのだ。
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