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オズの木挽きの馬

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第十一幕その六

「今は満ち足りている」
「そうですか、ただ幸村さんもう戦は」
「ないならそれでいい」
「そうですか」
「やはり泰平がな」
 これがというのです。
「何よりもいい」
「そうお考えですね」
「戦国の世はな、何といってもな」
 幸村さんは恵梨香にお話しました。
「戦が絶えなかった」
「だからですか」
「誰もが泰平を願っておった、功は欲しいが」
 それでもというのです。
「やはりな」
「戦がないことがですね」
「何よりだ、だからオズの国ではな」
「もうですか」
「戦がないのでな」
「幸村さんとしてもですか」
「よい、拙者も十勇士の者達も幸せじゃ」
 笑顔のままで、です。幸村さんはお話するのでした。
「やはりな、ただな」
「ただといいますと」
「最初にステーキを見た時は驚いた」
「ああ、牛肉は」
「ああした料理をするのはな」
 どうしてもというのです。
「見たことがなくてな」
「それで、ですね」
「拙者も驚いた」
「昔の日本ではお肉自体が」
「獣の肉は食することもあったが」
 それでもというのです。
「牛の肉を常に食し」
「ステーキみたいに焼くことはですね」
「なかった、まして牛乳を飲むなぞ」
 幸村さんはこちらのお話もしました。
「なかった」
「そうなんですね」
「蘇や酪、醍醐はあったが」
「ええと、確かどれも牛乳から作る」
「乳製品だな」
「それはあったんですね」
「あったが非常に贅沢な食べものであった」
 そうだったというのです。
「公卿の方や太閤様の様な」
「凄く身分の高い方でないとですか」
「食べられなかった、氷もだ」
 こちらもというのです。
「夏に普通に食するなぞ」
「ありませんでしたか」
「こちらも非常に贅沢なものだった」
 そうだったというのです。
「拙者は大名であったが」
「それでもですか」
「その様な贅沢はまずしなかった」
「そうでしたか」
「質素倹約を心掛けていた、真田家は小さな家だったしな」 
 大名といってもというのです。
「だからな」
「贅沢はされなかったんですね」
「それは武士のすべきことでないとも思ってな」
「父上は非常に質素な方でして」
 大助さんも言ってきました。
「修行と学問、お酒がお好きで」
「それ以外はですか」
「贅沢とは無縁でした」
 そうした人だったというのです。
「そして今もです」
「贅沢なことはですか」
「一切されません」
「そうですか」
「とはいっても今はステーキもかき氷もです」
 そうしたものもというのです。 
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