歪んだ世界の中で
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第五話 少しずつその八
真人にだ。こう言うのだった。
「テーマパークに行こうかな」
「そちらにですか」
「うん、そこに行こうかな」
こうだ。幸せに満ちた顔で言ったのである。
「そう考えたけれどどうかな」
「いいと思いますよ」
真人もだ。幸せそうな微笑みでだ。希望に答えた。
「そうして幸せになっていくことは」
「そういえば友井君いつも言ってたよね」
ふとだ。希望は思い出した。彼がいつも言っているそのことを。
「誰でも幸せになっていいんだって」
「そうです。この世に生きているのなら」
「誰でもだね」
「勿論遠井君もですよ」
「僕ね。ずっとこう思ってたんだ」
自分のだ。これまでの考えである。
「僕は幸せになったらいけない人間だって」
「そうでしたね。そう言っておられましたね」
「うん、けれどそれはなんだ」
「はい、違います」
「誰でも。僕でも」
「幸せになるべきなんです」
なっていいのではなくだ。そうあるべきだとだ。希望に答える彼だった。
「そのことを遠井君もわかったのですね」
「何か随分かかったけれどね」
「ですかわかってくれました」
そしてだ。そのことがだった。
今の希望にだ。こう言ったのである。
「そのことがとても嬉しいです」
「うん、僕もやっとそのことに気付けてね」
それでだ。どうかというのだった。
「嬉しいよ。幸せだよ」
「その遠井君を見て僕もです」
真人もだ。どうかというのだった。
「嬉しいです。それにです」
「それに?」
「この前検診を受けたのですが」
彼の骨折、それのだというのだ。
「お医者様が驚いていました」
「というとまさか」
「はい、骨折は全て治っているそうです」
このことをだ。真人は希望に話すのだった。
「僕の骨折は。それにリハビリの必要もないそうです」
「それならすぐにでも」
「はい、退院できるそうです」
「よかった。じゃあそえって」
「おそらくその方が遠井君にくれたお薬のお陰ですね」
「あれはそこまで効くんだ」
「そうだったみたいですね。素晴らしいお薬ですね」
「千春ちゃんにお礼を言わないといけないね」
自然にだ。希望はこの言葉を出した。
「友井君の怪我を治してくれたから」
「僕の怪我をですか」
「だって。友井君は僕の友達だから」
それ故にだというのだ。
「だからね」
「僕は。そうですか」
「うん、僕達はずっと友達だよね」
「勿論ですよ」
心からの笑みでだ。真人は希望に応えた。
そのうえでだ。彼にその笑顔でだった。
「そう言ってくれる遠井君だから僕も子供の頃から」
「一緒にいてくれてるんだね」
「遠井君が僕に意地悪をしたことはありません」
それは二人の記憶になかった。どちらにもだ。
「いつも優しくて。庇ってくれていますから」
「だから友井君もなんだ」
「行いは返って来るものです」
よいものも悪いものも。真人はその摂理をよくわかっていた。
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