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歪んだ世界の中で

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第五話 少しずつその三

「だからどんな人に言われてもね」
「さっきみたいになんだ」
「うん、断ってるの」
「そんなにいつもなんだ」
 それがどうしてかは希望にもわかった。千春のその外見を見てだ。
 これだけ可愛ければそうなるだろうと思った。まして今の彼女は水着だ。それならば余計にだった。
 だから内心で納得してだ。それから話すのだった。
「そうなんだ」
「けれどね。それでもね」
「断ってるんだね」
「強引な人がいてもね」
 その場合のこともだ。千春は自分から話したのだった。
「大丈夫だよ」
「それはどうしてなの?」
「人はね。千春に見られたり触られたりしたらね」
 彼女がそうすればだ、どうなるかというのだ。
「動けなくなったりするから」
「動けなくなるって」
「希望は別だよ」
 ただしだ。彼は例外だというのだ。
「千春が好きな人はね。別だよ」
「けれど千春ちゃんが好きでない人は」
「それで動けなくなるの」
「だからなんだ」
「千春は人には何もされないよ」
 無邪気そのものの笑顔でだ。にこりと笑ってだった。
 千春は希望に話す。その話を聞いてだ。
 希望は千春に奇妙な、もっと言えば不思議なものを感じた、何故そうなるかとだ。
 だがその前にだ。千春はまた希望に言ってきたのだった。
「それでね。この後ね」
「うん、お昼も食べたし」
「いつも通り三時位まで泳ぐの?」
「そうする?」
「うん、そうしよう。それからね」
 三時位まで泳いでだ。それからだというのだ。
「今日は何処に行くの?」
「ううんと。今日はね」
 千春にプールの後で何処に行くかと問われてだ。希望はだ。
 少し考えた。それから言ったのだった。
「そうだね。何か食べるのもいいけれど」
「他のところに行くのね」
「映画とかどうかな」
「映画?」
「そう。このプールの近くには映画館もあるから」
 それでだというのだ。
「そうしない?一緒に映画観ない?」
「そんな映画あるの?」
「確か今だと」
 何が上演されているかとだ。希望は千春に話した。それはアメリカで話題になっている映画だ。それが丁度日本でも上映されているのだ。
 だからそれを一緒に観ようとだ。千春に話したのである。
「それでいいかな」
「うん、いいよ」
 今回も笑顔で応えてくれた千春だった。
「それじゃあそこに行ってね」
「映画ね。実はね」
 ここでだ。希望はだ。
 少し寂しい顔になってだ。こう千春に話したのだった。
「僕女の子と一緒に映画館行くのもね」
「それは?」
「なかったんだよね」
 このことを話したのである。
「生まれてからずっとね」
「そうだったの?」
「映画は子供の頃。親はそんなの連れて行ってくれなかったんだ」
「どうしてなの?」
「親は僕のことなんかどうでもよかったから」
 それでだというのだ。 
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