猫が漫画家を救ったお話
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第一章
猫が漫画家を救ったお話
漫画家の矢部慎吾はこの時自宅と出版社の丁度中間にあるファミリーレストランにおいて担当の池田五郎と話していた、外見は茶色の髪の毛で眼鏡をかけた小さな目の青年である。大学にいる間に漫画家の賞に応募して入賞して大学を卒業と共にデビューした、背は一七〇位で痩せている。私服はラフなものである。
その彼は今大柄で丸々としていて色黒で丸い目の池田に難しい顔で言われていた。
「うちは子供が相手の」
「月刊誌ですね」
「はい、今までの様な」
そうしてというのだ。
「青年誌とはやはり」
「違いますね」
「これまでは週刊誌で」
「それで青年誌で」
「ですから」
それでとだ、矢部も言った。
「僕も考えていますが」
「それでもですか」
「デビューしてずっと青年誌で書いてきて」
「子供が読む漫画はですね」
「読んできましたが」
それでもと言うのだった。
「自分が描くとなると」
「やはり難しいですね」
「はい」
矢部は唸って言った。
「今実感しています」
「そうですね、ですがこっちもです」
池田は矢部に真面目な顔で話した。
「先生ならです」
「子供雑誌でもですね」
「いい漫画を描いてくれる」
こう見込んでというのだ。
「お願いしています」
「丁度青年誌での連載も終わりましたし」
「野球漫画の」
「野球は学生の頃やってましたからね」
高校までだ、大学では前から漫画が好きだったので漫画研究会に入ってそこで漫画を描いて今に至るのだ。
「描けてました、ですが野球の次は」
「別のジャンルで、ですね」
「描いて」
そしてというのだ。
「やっていきたいですが」
「それでもですか」
「どういったジャンルで子供が詠んでくれるか」
それがというのだ。
「どうしてもです」
「難しいですね」
「正直今苦しんでいます」
矢部の偽らざる本音だった。
「まさに」
「そうですね」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「もう少し考えてみます」
「そうですか、私も一緒に」
「お願いします」
二人で話してだ、そしてだった。
矢部は池田と共に漫画のことを話していったが二人共この時はこれといったアイディアが出ずまた今度と話してだった。
今は別れた、そのうえで。
矢部は自宅兼仕事場のマンションに戻った、それでアシスタントとも話したがやはりいいアイディアは出なかった。
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