リュカ伝の外伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
天使とラブソングを……?(第9幕)
前書き
新年明けましておめでとうございます。
本年もリュカ伝共々 あちゃ を
宜しくお願い致します。
(グランバニア:ナハト・クナイペ)
キャロラインSIDE
突如“陛下?”と呼ばれてた客がピアノを弾きだした。
オーナーのハバローネ伯も先刻アイリーンが『陛下!』と大声で叫んだ為、何事かと思い事務所から出てきてた。
明るいステージに登ったオッサンは確かに王様らしかったが、念のためにオーナーにあのオッサンが本当に国王陛下なのか聞いてみる。
すると「お前は陛下のお顔を知らないのか!?」と怒られた。
だから思わず「知ってるけど、こんな店に来るとは思わないじゃん!」と言ってしまった。
「『こんな店』とは何だ!」と、また怒られたが「静かにしてくれ!」と同僚のウェイターである“ヴート・ジョロキュア”に注意される。陛下の奏でる曲を聴きたいらしい。
心の中で舌打ちをしたが、陛下の曲に耳を傾けると凄ー良い曲だった。
未だに何で陛下がこんな場所でピアノの弾き語りをしてるのかが解らないのだけど、もっと聞いていたくなる凄ー良い曲だ。
弾き終わりステージから降りるとこちら(主にオーナー)に手を振り終わったことを告げる。
すると数組残ってた客席から、盛大なスタンディングオベーションを受ける。
オーナーや他の店員も盛大な拍手を惜しまない……そうか、陛下の演奏を聴き終えたのだから拍手しなきゃ!
店内に拍手が響き渡ると、陛下はそれを抑える様に両手をかざして鳴り止ませる。
そして先程の席に戻り、またアイリーンと何か会話を始める。
さて……我々は如何したモノか?
「みんな……閉店時間を過ぎた。陛下以外のお客様に退店を促してくれ」
そうか、陛下は追い出せないけど、他の客は追い出せるんだ。
陛下のことが気になって出て行こうとしないから叩き出さないと!
・
・
・
・
・
陛下以外の客の追い出しに成功。
客らは口々に『いやぁ~陛下の生弾き語りが聴けるとは……残ってて正解でしたよ』と言いながら帰って行く。こっちとしては何時までも客が残ってて不満でしたよ。
残りの客が帰っていくのを見計らってたのか、陛下も席を立ち出口へと向かってくる。
半歩後ろには普段では見ることの出来ないくらいの輝かしい笑顔のアイリーン。
悔しいが美人だ。
「悪かったねハバネロ伯。閉店時間後まで居座っちゃって」
「いえいえ、とんでもございません」
名前を間違えられてるのだが訂正できないでいる(笑)
「じゃぁそういう訳なんで、明日学校が終わったらピエッサちゃんと城までお願い。その時先刻の曲の楽譜を渡すから」
「はい。了解致しました」
“先刻の曲の楽譜”って……
あの曲を貰ったの!?
いいなぁ~~~~~! 美人は得だなぁ~~~!
「じゃぁお会計お願いするよ。オレンジジュース2杯頼んだから、12Gだよね?」
「いいえ陛下! その12Gを受け取る訳にはまいりません」
そ、そうよね……王様から金取るなんて出来ないわよね。
「そういう訳にはいかないよ。ちゃんと税金払ってるんでしょ? だとしたら料金は支払わないと」
いやいや……王様からは……ねぇ。
「いえ、勘違いなさらないで下さい。私どもは真っ当な商売をしておりますので、当店で飲食をして頂ければ陛下からでも料金はお受け取り致します。ですが今回はそれに該当しません」
「……どゆこと?」
うん、どゆこと?
「陛下は先程、当店のステージにてお客様相手に演奏を披露されました。当店は飲食と共に音楽を提供する店……そのステージで曲を披露すれば、それに対して演奏料を支払わねばなりません。本来でしたらそれなりの額の出演料なのですが、今回は唐突に発生したステージ……普段よりも少額の出演料となります。その金額が偶然12Gでして、わざわざ陛下の懐からお金を取り出して頂く必要が無いという訳でございます」
「なるほど……粋だねぇ」
上手い言い訳ね。
恩着せがましくなく、金を取らないのね。
「貴族だと思って舐めてたよ、ハバネロ伯」
「あ、因みに私はハバローネ伯爵でございます」
おお、訂正した。
「うん、分かった。もう憶えた。ハバローネ伯爵ね」
どうやらちゃんと陛下に名前を覚えてもらえたらしく、オーナーは深々と頭を下げる。
それを見て“スッ”と手を上げ、頭を上げる様に指示する陛下は格好いい。誰だ、金持って無さそうなオッサンなんて言ったのは!?
そして陛下は格好いいまま、店を出て行った。
私たちは全員で頭を下げてお見送りをする。
……私だけワンテンポ頭を下げるのが遅れちゃったけど(テヘッ♥)
「……いやぁ~まさか、陛下が急に来店されるとは思わなかったよ。君が関わり合ったのは聞いてたけど、尋ねて来るとはね」
「私も驚きましたわ」
「聞いて良いかな、如何いった用件だったのかな?」
「内容はここでは話せないとの事でしたが、私へ仕事のオファーとの事です。詳しい内容は明日お城で伺わせてもらいますが……」
仕事のオファー!? す、凄い……天才で美人は得だなぁ!
「ふむ……では陛下がこの店で弾き語りを披露して頂いたのは、如何いった訳だい?」
「今回の仕事への報酬です」
ほ、報酬で陛下から曲を貰えるなんて……凄い……のか?
「あ、それよりキャロ! あんた気を付けなさいよ……陛下には聞こえてたからね。お客様の事を『オッサン』呼ばわりした事とか、『貧乏人』って言ってた事とか」
ゲッ……聞こえてたの!?
「君はそんな事をお客様に言ってるのか!?」
「あ、いや……聞こえてないと思って」
だって小声だったわよ!
「陛下はね、幼少の頃から危険な世界を冒険なさってて、あらゆる事柄へ対処できる様に鍛錬なさってるの。あんたの小声なんか、店の外からだって聞き取れるのよ!」
流石にそれはないだろう……
「それと……」
何だか突然雰囲気が変わる。
何だ?
「陛下の事を侮辱して……あんた殺すわよ!」
「ちょ……ま、待って! 知らなかったんだって。あのオッサ……男性が王様だって! 目が……目が怖い! ど、瞳孔開いてる……目が怖いって!」
「まぁまぁアイリーン、落ち着いて。陛下は(女性限定で)お優しい方だから怒ってはいなかったのだろ?」
「ええ、あまり叱るな……と」
「じゃぁもう許してあげなさい」
助かったぁ~……マジ殺されるかと思ったぁ~……オーナーに助けられた。
怖ー、この女マジ怖ー。
「キャロラインも、客商売なのだから思ってても口に出さない様に!」
「はい。以後気を付けます」
この女怖ーから。
「ふっ、バーカ」
私の後ろでヴートが私を馬鹿にする。
マジむかつくんですけどぉ~!
「さて……お客様も全て帰られたし、我々は閉店の為に後片付けをしよう。アイリーンはピアノの練習をしたいんじゃないのかな?」
「え……そうですね。ピアノ使わせてもらえないか、お願いしようと思ってましたわ」
「今日は特別に良いよ、使って。我々は君の演奏をBGMに、後片付けをするとしよう」
「ありがとうございますオーナー」
いーなぁー! 天才で美人で巨乳は得だなぁ!
王様から楽曲提供されて、その上後片付けをしなくて済むんだもん。
先刻私を脅した時とは打って変わって、ルンルン気分を振りまいてピアノへ向かうアイリーン。
私はモップ片手に床清掃だ。
だが彼女は流石としか言い様がない。
たった一回しか聴いてないのに、もう何十年と弾き語ってきたかの様に、先程陛下が披露された曲を奏でてる。
いーなぁー! 天才で美人で巨乳で王様に伝があって……乳くらいよこせ!
キャロラインSIDE END
後書き
新年早々新キャラばかりw
新キャラの名前の由来は唐辛子です。まぁ分かりますね。
キャロを気に入ってます。
ページ上へ戻る