英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~
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第115話
前書き
今年最後の更新です
~ログナー侯爵邸・エントランス~
「あ、貴方達は……!」
「”鉄機隊”……!」
「ここで立ちはだかりますか、継母上…………」
「そ、それにエリゼ君まで……」
「あっ!ヤッホー、アーちゃん!内戦以来になるね!みんなからは話には聞いたけど、ホントにリィンの仲間になったんだね~。」
デュバリィ達の登場にセドリックは驚き、ラウラは真剣な表情で声を上げ、ミュラーは複雑そうな表情でオリエを、マキアスは不安そうな表情でエリゼをそれぞれ見つめ、ミリアムは呑気な様子でアルティナに声をかけた。
「ミリアムさん……話だけは伺っていましたが、本当に蘇生に成功したんですね……」
ミリアムに声をかけられたアルティナは口元に笑みを浮かべてミリアムを見つめたがすぐに気を取り直して表情を戻した。
「フフ、我らに協力している新たな参謀が考えた其方達に対する”策”を乗り越え、更には”灰色の騎士”に新たに仕える事になった”飛天魔”をも乗り越えてここに到着した事……見事だ。」
「ハイデル・ログナーの保護の為に別行動している”紫電”と”嵐の銀閃”以外にも”守護騎士”を含めて何人か見かけない事からして……どうやら、”守護騎士”達は貴方達を先に向かわせる為に残って”飛天魔”の相手をしているようね。」
「―――――皇太子殿下までこの場にいらっしゃっているという事は、シュライデン伯爵との一騎打ちに勝利されたご様子。代々アルノール皇家に仕えているヴァンダール家の一員として、皇太子殿下の飛躍的な成長には心より嬉しく思っております。」
「……ここまでたどり着いた事には正直驚きました。ですが、兄様の邪魔はさせません。―――――ましてや未だ兄様の優しさに付け込む事を止めずに兄様を求めようとする人達には。」
アイネスは感心した様子で、エンネアは興味ありげな表情で、オリエは静かな表情でそれぞれトワ達を見回し、エリゼは静かな表情で呟いた後厳しい表情でトワ達を睨んだ。
「あん……?」
「わたし達がリィンの優しさに付け込む事を止めずにリィンを求めているってどういう事?」
エリゼが口にした言葉を不思議に思ったアッシュは眉を顰め、フィーは真剣な表情で訊ねた。
「……ちょうどいい機会ですから、皆さんにも教えておきます。去年の内戦が勃発する少し前―――――ドライケルス広場で演説をしていたオズボーン宰相がクロウさんに狙撃される3日前にはエリスにもそうですが兄様やセレーネにもメンフィル帝国政府よりクロイス家の”資産凍結宣言”によって国内の緊張が高まっているエレボニアに滞在し続ける事は危険である為、それぞれが通っている学院を休学し、エレボニア帝国内の状況が落ち着くまで故郷に帰省して滞在し続けた方がよいという警告の書状が届けられていました。」
「な―――――」
「内戦が勃発する3日前にリィン達にそのような書状が………」
「……まあ常識で考えればメンフィル帝国政府の対応は当然の対応だろうな。」
「ええ……ましてやリィン君達はメンフィル帝国の貴族である上、リフィア殿下の専属侍女長を務める事ができている事でリウイ陛下達から信頼されているエリゼちゃんの家族とリウイ陛下達にとってはほとんど”身内”も同然の関係を結んでいるツーヤちゃんの妹ですからね……」
「それらの事実に加えてメンフィル帝国の事だから、恐らくエレボニアに潜ませていた諜報関係者達の報告によって内戦勃発の日が近い事も感付いていただろうから、幾らオリビエの頼みに応じてトールズに留学させたとはいえ、そのような危険地帯にリウイ陛下達が懇意にしている人物達の関係者を置いておく訳にはいかないというのが”本音”だったのだろうな。」
エリゼが口にした驚愕の事実を知った仲間達がそれぞれ血相を変えている中オリヴァルト皇子は絶句し、ラウラは真剣な表情で呟き、アガットとアネラス、ミュラーは複雑そうな表情で呟いた。
「でもリィンとセレーネはそんな手紙が届いたなんて話はしなかったよね~?今回の戦争の前に届いた帰還指示の手紙が届いた事は話してくれたのに。」
「……恐らくだけど、君達を気遣って話さなかったんだろうね。」
「うん……内戦勃発前に届いた手紙はあくまでユミルに帰省する事を促す”警告”であって、”メンフィル帝国政府が正式に発効した政府による命令の手紙”じゃないもの。」
ミリアムの疑問に対してアンゼリカとトワは複雑そうな表情でそれぞれの推測を口にし
「……なるほどな。エリゼ嬢ちゃんのその様子からするとリィン達が内戦に関わる事は本音を言えば反対だったんだな?」
「当り前です。幾ら留学先で親しい関係になったとはいえ、兄様達がエレボニアの為にそこまでする”義理”はありません。――――――その結果兄様とセレーネは友人と思っていた人物に裏切られた上内戦では何度も苦しい目に遭わせられ、エリスは拉致されて兄様達に助けられるまで虜囚の身となってしまいました。」
「…………」
静かな表情で呟いたクロウの指摘に対して答えたエリゼの答えを聞いたアルティナは辛そうな表情で黙り込み
「―――俺が原因でリィン達が内戦で苦しめられた件もそうだが、その件で俺はエリゼ嬢ちゃんに憎まれて当然の存在なのは否定しねぇし、言い訳もしねぇよ。だが、内戦の件で俺以外のⅦ組メンバーを責めるのは筋違いじゃねぇか?」
「クロウ君……」
「クロウ………」
エリゼの答えに対して覚悟を決めた表情を浮かべたクロウの答えを聞いたトワとクロチルダは辛そうな表情でクロウを見つめた。
「いいえ、”内心兄様達が自分達と一緒に内戦に関わってもらわなければ困ると思っていた”クロウさん以外のⅦ組の人達もクロウさん程ではないにしても、兄様達を苦しめる事になった”原因”です。」
「わ、私達が”内心リィンさん達が私達と一緒に内戦に関わってもらわなければ困ると思っていた”ってどういう事ですか……!?私達はそのような事、一度も考えた事はありません……!」
クロウの指摘を否定して答えたエリゼが口にした驚愕の答えを聞いたその場にいる多くの者達が血相を変えている中エマは真剣な表情で反論した。
「他のⅦ組の方々は一端置いておくとして、エマさん。貴女とセリーヌさんだけは私の言葉を絶対に否定できないのでは?――――――”兄様がヴァリマール――――――灰の騎神の起動者であると最初から知っていて、兄様がヴァリマールの起動者になるように導いた貴女達は。”」
「……ッ!そ、それは…………」
「…………………そうね。ヴィータに届くためには”起動者”―――――リィンの協力が必要不可欠で、あの時リィンに抜けられたらアタシ達は冗談抜きで手詰まりになっていた事は否定しないわ。」
「エマ……………セリーヌ………」
しかしエリゼの痛烈な指摘によって反論できなくなったエマは息を飲んだ後辛そうな表情で答えを濁し、セリーヌは少しの間目を伏せて黙って居た後目を見開いてエリゼを見つめながら複雑そうな表情で肯定の答えを口にし、クロチルダは辛そうな表情でエマとセリーヌを見つめた。
「更にエマさんとクロウさん以外のⅦ組の方々に問わせて頂きます……”資産凍結宣言”後エレボニア帝国が緊張状態に陥り、内戦が勃発するまで皆さんは兄様達を気遣って一度でもエレボニアが元の状況に落ち着くまでユミル、もしくはメンフィル帝国の”本国”に帰国した方がいいような助言を行った事はありますか?」
「それは………」
「……一部の生徒達が一時的に休学して実家に戻った話は耳にしていたが、Ⅶ組の中からはそのような話すら挙がらなかったな……」
「ん……むしろあんな状況で誰一人抜ける訳にはいかないような雰囲気になっていたね。」
エリゼの問いかけに対してマキアスが複雑そうな表情で答えを濁している中、重々しい様子を纏って呟いたユーシスの言葉に頷いたフィーは複雑そうな表情を浮かべて当時の自分達を思い返した。
「そしてオリヴァルト殿下。恐らく殿下の事ですから、”資産凍結宣言”後のエレボニアはいつ内戦が勃発してもおかしくない状況であると察していたと思われます。それなのにも関わらず兄様達に内戦に巻き込まれる前に”祖国”であるメンフィル帝国に帰国すべきという警告を一度でも行いましたか?――――――予め言っておきますが内戦勃発時アルフィンさんとエリスの為にトヴァルさんに二人を保護させて貴族連合軍の目からかいくぐってユミル―――――貴族連合軍の目が届きにくい安全地帯に避難させる依頼を出していたのですから、内戦勃発が近い事を悟っていなかったという”言い訳”は通じませんよ。」
「……ッ!!……………………それは…………………」
「おい……まさかとは思うが、マジでシュバルツァー達にエリゼが今言ったような事をしなかったのかよ?」
「さ、さすがにそれはかなり不味いんじゃ………幾ら殿下の頼みでリィン君達がトールズに留学していたとはいえ、リィン君達の祖国は”メンフィル帝国”なのですから、国内が不安定な状況になれば、その状況によって起こる事件で外国人が巻き込まれたら当然国際問題に発展しますから、そうならない為にもそれぞれの国の大使の人達もそうですが、エレボニアの政府、もしくは皇家の関係者が外国人に避難勧告を出すのは”常識”ですし……ましてや、リィン君は本来だったら既に訓練兵卒業後の配属先も決まっていたも同然だったにも関わらずリウイ陛下直々に動いてもらってエレボニアに留学してもらったのに、そのリィン君に避難勧告すらせず、内戦が勃発してリィン君に”万が一”の事があれば今回の戦争の件以上の国際問題へと発展したでしょうし。」
厳しい表情を浮かべたエリゼの指摘に対して反論できず目を見開いて息を飲んだ後辛そうな表情で答えを濁しているオリヴァルト皇子の様子を見ていたアガットは真剣な表情でオリヴァルト皇子を見つめ、アネラスは複雑そうな表情でオリヴァルト皇子に指摘した。
「ああ…………恥ずかしながら、私達は内戦が勃発した際の対応に備えて色々と忙しく、内戦が勃発してトールズ士官学院が襲撃された際にⅦ組のみんなを逃がしたように、私達―――――カレイジャスが囮になって、リィン君達はⅦ組のみんなと逃がす事を考えていたから、リィン君達に内戦勃発前に”警告”を行うという考えは最初から考えすらしなかったよ………その件についてはエリゼ君やアガット君達の想像通り、私の落ち度だ……”リィン君達がⅦ組にいる事が当然”と判断していた私の傲慢な考えがエリゼ君達が今言った当然の事を怠ってしまったのだろうね……」
「……その件に関しては俺も同罪だ。……そんな当たり前の事に気づかず主に忠告しなかった俺も”アルノールの懐刀”と称されていたヴァンダール家の一員として失格だ……」
「兄上…………」
「………………」
アガットとアネラスの言葉に対してオリヴァルト皇子は辛そうな表情で肩を落として答え、ミュラーは無念そうな表情を浮かべて答え、セドリックは心配そうな表情でオリヴァルト皇子を見つめ、オリエは重々しい様子を纏って目を伏せて黙り込んでいた。
「……………ハッ、なるほどな……アンタは今回の戦争でもパイセン達がシュバルツァーの優しさに付け込む事を止めずにシュバルツァー達を求めているって意味は、要するにパイセン達は今回の戦争でも内戦の時のようにシュバルツァー達は自分達の身を顧みない所か、自分達がエレボニアの戦争相手の国を祖国だったとしてもパイセン達に無条件で協力してくれる事を押し付けようとしているって事だろう?」
「……少々乱暴な言い方ではありますが、概ねアッシュさんの言う通りです。」
「フム、なるほどな………」
「ふふっ、ミルディーヌ公女が予想していたように、確かに彼らにとっては痛烈な指摘ではあるわね。」
「ええ……ですが、エリゼ・シュバルツァーは決して間違った事は言ってはいませんわ。」
「はい……リィンさん達の祖国は”エレボニア帝国ではなく、メンフィル帝国”なのですから、Ⅶ組やオリヴァルト殿下はリィンさん達がメンフィル帝国―――――いえ、”外国人”であるという部分に関してもう少し考慮すべきでしたね。」
エリゼ達の話を聞いて考え込んだ後やがて答えが出たアッシュは鼻を鳴らしてエリゼに指摘し、アッシュの指摘にエリゼが肯定している中アイネスは納得した表情を浮かべ、苦笑しながらトワ達を見つめるエンネアの言葉に頷いたデュバリィは真剣な表情を浮かべ、アルティナは静かな表情でトワ達を見つめた。
「兄様達の事ですから、今回の戦争を知れば内戦の時のように何とかⅦ組の皆さんと合流して、今回の戦争を解決するという無謀な行動に出る事を心配していましたが………エレボニア帝国を救う――――――要するに国として存続させる為に、敢えてメンフィル帝国側に付き、Ⅶ組と決別してくれたことには本当に安心しました。”Ⅶ組に所属している一部の人達やアルノール皇家という兄様や私達――――――シュバルツァー家にとっての疫病神”と距離を置くことを決めてくれたのですから。」
「ぼ、僕達の一部の人達や殿下達が”疫病神”って……!」
「多分だが俺とユーシスの事を指しているんだろうな。」
「後はリィンを”起動者”として導いたエマとアタシって所でしょうね。」
「サラもそうなんじゃないの?内戦の件ではリィンとセレーネの担当教官としてメンフィル関係でもっと考えないといけなかったと思うし。」
「……………………」
「俺とクロウに関してはいい!クロウは言うまでもない事だが、実際父と兄がお前達シュバルツァー家に対して決して許されざる所業を行ってしまい、俺はそれらの事実に目を背けてシュバルツァー家に対して何の償いもしなかったのだから、俺――――――”アルバレア公爵家がシュバルツァー男爵家にとっての疫病神”になってしまった事は否定や言い訳をするつもりはない。だが、他の者達もそうだが、殿下達――――――アルノール皇家の方々に対してそのようなあまりにも不敬な呼ばわりをするのは、幾ら何でも間違っている!」
「ユーシス……」
エリゼが口にした驚愕の指摘にその場にいる多くの者達が血相を変えて驚いている中マキアスは信じられない表情を浮かべ、クロウは静かな表情で呟き、複雑そうな表情で呟いたセリーヌの言葉を聞いたエマは辛そうな表情で黙り込み、フィーはジト目で呟き、真剣な表情を浮かべて自分と実家の事を貶して仲間達を庇ってエリゼに反論するユーシスの様子をミリアムは辛そうな表情で見つめていた。
「並行世界のキーアさんに改変される前の兄様と私――――――つまり、”本来の歴史の兄様と私”の事についてレン皇女殿下やロイドさん達から聞いているのならば、私が皆さん――――――特に”アルノール皇家が私達シュバルツァー家にとっての疫病神”である事は否定できないはずです。」
「それはどういう意味だ……!今までもそうだが”本来の歴史”でも殿下達は其方やリィンを苦しめるような事は行っていないぞ……!」
ユーシスの指摘に対して答えたエリゼの答えを聞いたラウラは厳しい表情で反論した。
「まだわからないのでしたら、教えてさしあげましょう。……まずは言うまでもなく、オリヴァルト殿下。兄様を”Ⅶ組”の”重心”の素質がある事を見抜き、そして兄様がそうなってくれることを期待し、兄様を”Ⅶ組”に配属させるように手配した結果、兄様は内戦に深く関わる事になり、何度も苦難に立ち向かうことになり……その結果”本来の歴史”では”英雄”――――――”灰色の騎士”としてオズボーン宰相に利用される身となり、”巨イナル黄昏”の発動後は囚われの身となり……救出されてからは”巨イナル黄昏を引き起こしてしまった張本人という罪悪感”を抱くようになり、また兄様自身私達の世界のセドリック殿下のように呪われた身となってしまい……その結果”世界を救う為ならば自分が犠牲になればいいという”考えを抱かせて、かなりの高確率で”巨イナル黄昏”による”呪い”を世界から解き放つ為に兄様が犠牲になるという結末になっていたとの事。私達の世界の兄様はリフィアやリウイ陛下達――――――メンフィル帝国の存在で、そのような惨い人生になる可能性に発展する事は確実にありえないでしょうが………どちらにしても、兄様が波瀾万丈な人生を送ることになった切っ掛けを作ったのはオリヴァルト殿下が兄様をⅦ組の重心にすることを望んだことが一番の原因です。”本来の歴史”と、”今”。どちらも兄様が”Ⅶ組”以外のトールズの一生徒―――――いえ、トールズに限らず他の学術機関の生徒になっているか、何らかの仕事に就いていたのならば、そのような波瀾万丈な人生を送る事になる可能性に発展しなかった事は十分に考えられました。」
「そ、それは…………」
「……………ハハ………………実際その通りになってしまっているから、反論できないね…………」
「オリビエ…………」
「「………………………………」」
エリゼの説明を聞いたトワが辛そうな表情で答えを濁している中、肩を落として悲痛そうな表情を浮かべて呟いたオリヴァルト皇子の様子をミュラーは辛そうな表情で見守り、アガットとアネラスは複雑そうな表情で黙り込んでいた。
「次にアルフィンさんと皇太子殿下。アルフィンさんは”本来の歴史”では私自身、”今の歴史”ではエリスと親しくなったことで去年の”夏至祭”では帝国解放戦線に拉致されかけ、内戦勃発後はアルフィンさんの身柄を狙ったアルバレア公爵が雇った猟兵達によってユミルが襲撃され……その結果父様は重傷を負い、更にはエリスや私自身が拉致され、兄様達に助けられるまで幽閉の身となっていました。――――――アルフィンさんと親しくなければ、アルフィンさんの身柄を狙った帝国解放戦線に拉致されるような事は起こらなかったでしょうし、アルバレア公爵に限らず貴族連合軍にその身を狙われていたアルフィンさんを故郷に避難させて襲撃事件が起こるような事もなかったでしょうね。」
「幾ら何でもそれはエリゼの考え過ぎなんじゃないの~?夏至祭の件はともかく、”蒼の深淵”は元々結社の計画と疑似的な”相克”を発生させる為に内戦でヴァリマールとオルディーネを戦わせることを考えていたんだから、アルフィン皇女がユミルに避難していなくてもどの道エリゼかエリスは攫われていたんじゃないの~?」
「そうね………夏至祭の件はともかく、内戦の件は例えアルフィン皇女がユミルに避難していなくても、リィン君を内戦に関わってもらう為にもエリス―――――いえ、シュバルツァー家の関係者の誰かの拉致をアルティナに命じていたでしょうから責められるべき人物は私よ。」
「姉さん………」
「……………………」
エリゼの指摘に対して反論したミリアムの指摘に静かな表情で同意したクロチルダの様子をエマは辛そうな表情で見つめ、エリスを拉致した張本人であるアルティナは辛そうな表情で黙り込み
「それに内戦でカイエン公達によるエリス君の拉致監禁に目を瞑っていた事は当然として夏至祭の件にしても、責められるべき人物はGを含めた”帝国解放戦線”――――――いや、彼らのリーダーたるクロウだよ。」
「ああ…………成功の有無はともかく、アルフィン皇女の拉致計画を考えたのはGだが、それを承認したのは俺自身だから、G達もそうだが当然俺にも責任がある事も否定しねぇよ。」
「クロウ君……」
静かな表情で指摘したアンゼリカの指摘に同意したクロウの様子をトワは辛そうな表情で見つめていた。
「……エリゼさん。その口ぶりから察するに、もしかしてエリゼさんは今でもアルフィンの事を許していなく、リィンさんとの関係もそうですがエリスさんとの関係も内心よく思っていないんですか……?」
「いいえ。アルフィンさんの事は既に許していますし、兄様やエリスとの関係についても特に思う所はありません。アルフィンさんはオリヴァルト殿下達と違って、既に”償い”を実行していますし、それどころか皇族の方でありながら祖国や家族を敵に回してでも兄様達を支えるという”覚悟”を示し続けられているのですから。」
「”償い”………メンフィルがエレボニアに求めていた和解条約の一つのアルフィン皇女が身分を捨ててリィンの使用人兼娼婦になる件か。アルフィン皇女が祖国や家族を敵に回してでもリィン達側としてリィン達と共にエレボニア帝国と戦っているから、アルフィン皇女の事を受け入れているような事を言っているから察するに、エリスを拉致した張本人のアルティナや、貴族連合軍の”主宰”だったカイエン公の親類のミュゼを受け入れているのもその辺りが関係しているの?」
辛そうな表情を浮かべたセドリックの問いかけに答えたエリゼの説明を聞いてある事に気づいたフィーは真剣な表情でエリゼに訊ねた。
「はい。アルティナさんは当時カイエン公達の指示に従うように刷り込まれたも同然の状態の上クロスベルでの迎撃戦で私自身の手で”少々やり過ぎてしまった”と反省する程痛い思いをさせましたし……何よりも先日休養の為にユミルに兄様達と帰った際にエリスの件で父様と母様に誠心誠意謝罪しましたし、それ以前もこの戦争でクロスベルでの迎撃戦で囚われた後兄様に保護されてからは兄様とエリス、私に対して献身的に支えてくれていますからアルフィンさん同様今の兄様達を支えてくださっている事に感謝していますし、ミュゼさんに関してはミュゼさん自身は去年の内戦には一切関わっていませんから、幾ら前カイエン公の親族とはいえ、兄様達の件に何の関りもしなかった方に怒りを抱くような筋違いな事はしません。」
「エリゼ様………」
フィーの問いかけに頷いたエリゼの話を聞いてエリゼの自分に対する今の印象を知ったアルティナは目を丸くして驚きの表情を浮かべた。
「話を続けますが、皇太子殿下の件に関しては今この場にいる皇太子殿下に対しては特に思う所はありません。」
「え……ですが、エリゼさんは先程僕の事も”疫病神”みたいな事を言っていましたが……」
話を戻したエリゼの話を聞いたセドリックは戸惑いの表情で指摘した。
「”本来の歴史の皇太子殿下”でしたらともかく、”今この場にいる皇太子殿下”に対してはそのような不敬な事は考えていません。」
「へ……”本来の歴史の皇太子殿下”……?――――――あ。」
「……そういえば、”本来の歴史の皇太子”は内戦から2年後に鉄血宰相に浸透するあまり、鉄血の子供達の新たな一員になって、”巨イナル黄昏”発動後は”鉄血宰相”に協力していたって話だから、当然リィンやアタシ達の”敵”として阻んだのでしょうね。」
「それは……」
「あ………」
エリゼの話を聞いて戸惑っていたマキアスだったがある事に気づくと呆けた声を出し、目を細めて呟いたセリーヌの話を聞いたミュラーは複雑そうな表情を浮かべ、セドリックは呆けた声を出した後複雑そうな表情で黙り込んだ。
「……そして最後にユーゲント皇帝陛下。オズボーン宰相を信頼し続けた結果内戦を勃発させ、更には本来の歴史の兄様が犠牲になる可能性が高かった”黄昏”関連の大騒動へと発展させた事もそうですが、父様と親しい関係であったにも関わらず父様が兄様を養子にした件で父様と母様が”尊き血”を重視する愚かな血統主義のエレボニア貴族達に罵倒され、父様達が事実上の社交界からの追放をされた件に対して何の対応もしなかった所か、父様に謝罪の手紙すら送らなかった――――――要するに父様を見捨てた挙句今までの関係を”切り捨てた”のですから、そのような仕打ちを受けたにも関わらず今だユーゲント皇帝陛下を含めたアルノール皇家の方々に敬意を払っている父様達やトールズやアストライアに通っている事でアルノール皇家の方々との親交を結んだ兄様達はともかく、今までメンフィル帝国の皇女であるリフィアの専属侍女長として仕え続けている事でメンフィル帝国やリフィアを含めたメンフィル皇家の方々を近くで見続けた私からすればユーゲント皇帝陛下はオリヴァルト殿下以上の”疫病神”だと思っています。」
「エリゼちゃん………」
「……………………」
「其方の気持ちもわからなくもないが、その考えは間違っている、エリゼ!皇族―――――ましてや”皇帝”が特定の人物を特別扱いし続ければ、周りの者達がそれをよしとせず、その結果争いが起こり、最悪皇帝からその特別扱いされていた特定の人物が失われるという可能性がある為皇家の方々は常に公平性が保つ事を求められるのだ……!恐らく陛下も其方の両親の件に関しても内心では責任を感じおられるはずだ……!」
「まあ、実際ユーゲント陛下がオジサンを特別扱いし続けた結果、内戦は勃発したもんね~。」
「ちょっ、ミリアム……!?」
「いい加減貴様はその場の空気を読む事と、目上の者達に対する態度を改める事を学べ、阿呆!」
エリゼのユーゲント三世に対する厳しい考えを知ったトワは悲しそうな表情でエリゼを見つめ、オリエは目を伏せて重々しい様子を纏って黙り込み、ラウラは真剣な表情で反論し、ラウラに続くように呑気そうな様子で呟いたミリアムの言葉にその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中マキアスは慌てた様子で、ユーシスは顔に青筋を立ててそれぞれ声を上げた。
「ラウラさんの仰っていることにも一理ある事は理解しています。ですがお忘れではありませんか?私もその皇族の方々に”特別扱い”されている人物の一人であり、そしてその件に関して周囲の方々も受け入れているという事実を。」
「!!」
「確かにエリゼ君もメンフィル皇家に”特別扱い”されている人物の一人だね……実際エリゼ君がメンフィル皇家から特別扱いされていたから、夏至祭でのテロ事件でエリス君の救出の為にリウイ陛下達が直々に動いたと言っても過言ではないし、よく考えてみるとアルフィン殿下の件にしても恐らくリィン君とエリス君の今回の戦争の件で窮地の立場に立たされたアルフィン殿下を助けようとしている思いを無下にしないエリゼ君に対しての気遣いもあったんだろうね。」
「それにエリゼちゃんに限らず、エステルちゃんにミントちゃん、ツーヤちゃんとリウイ陛下達はそれぞれ特定の人物を特別扱いしているというエリゼちゃん以外の実例もありますし、それらの件によってメンフィル帝国内では何か問題が起こったような話は聞いた事がありませんよね……?」
「まあ、エステル達の件で内心思う所がある連中は存在しているかもしれねぇが、それを表にするような度胸はねぇだろうな。――――――何せ文句を言うべき相手はあの”英雄王”達で、しかもメンフィルは”実力主義”だからな。」
エリゼの指摘にラウラが目を見開いている中、アンゼリカとアネラスは複雑そうな表情で答え、アガットは疲れた表情で呟いた。
「……エリゼ君。要するに君は私達アルノール皇家の事をリウイ陛下達と違い、皇族でありながら宰相殿やカイエン公達を抑えつける力もない愚かで無力な皇族と評価し、そんな私達は君達”シュバルツァー家にとって百害あって一利なしの存在”と思っているのかい?」
「オリビエ………」
静かな表情でエリゼに問いかけるオリヴァルト皇子の様子をミュラーは辛そうな表情で見守り
「―――逆に聞きますが、”百日戦役”後シュバルツァー家がメンフィルの貴族に帰属してからもなお、父様達もそうですが兄様やエリスもアルノール皇家やエレボニア帝国に対して様々な貢献をしたにも関わらず、それらに対して何か一つでも報いてくれたことがありましたか?」
「……ッ!そう………だね……”本来の歴史”と”今”、どちらにしても君達シュバルツァー家から受けた恩に対して何一つ報いる事をしない所か仇で返し続けているね、私達は……」
「……………………」
「くっ……例え国は違えど、一貴族の身でその国にとって最も尊き存在である皇族の方々に対して見返りを求める事もそうだが、そのような不敬な評価をする”資格”等許されるものではないのがわからないのか、エリゼ……!」
エリゼの問いかけに息を飲んだオリヴァルト皇子は辛そうな表情で肩を落とし、セドリックは辛そうな表情で黙り込み、ユーシスは唇をかみしめてエリゼを睨んだ。
「ハッ……幾ら貶す相手が外国―――――ましてや”敵国”の関係者とはいえ、メイドが皇族相手に、それも本人達の目の前で躊躇なく”疫病神”呼ばわりして他にも色々と貶す言葉を口にできるなんて、実はアンタも”呪い”に侵されているんじゃねぇのか?」
「あ……ッ!」
「確かに以前のエリゼ君の口から出るとは思えない過激かつ強烈な発言ばかりだったね……」
「ん。それを考えるとエリゼも”呪い”に侵されている事でわたし達に対してあそこまで敵対心を向けるようになった可能性は十分に考えられるね。」
するとその時鼻を鳴らした後目を細めてエリゼを睨むアッシュのエリゼへの指摘を聞いたその場にいる多くの者達が血相を変えている中トワは声を上げ、アンゼリカとフィーは真剣な表情で呟いてエリゼを見つめたがラクウェルで会った”呪い”に侵された者達――――――ヒューゴ達のようにエリゼの足元からは黒い瘴気が現れなかった。
「あん……?」
「ヒューゴ達の時みたいに、呪いの力は現れないね。」
幾ら待ってもエリゼの周囲に黒い瘴気が現れない事を不思議に思ったアッシュは眉を顰め、フィーは戸惑いの表情で呟いた。
「……なるほど。”巨イナル黄昏”による呪いに侵された今のエレボニアの状況を考えると、私も呪いに侵されているという皆さんの推測も理解できますが………私にも兄様程ではないにしても、”女神”たるアイドス様や”魔神”であられるベルフェゴール様、それにユリーシャさん達――――――”天使”の”加護”がある事をベルフェゴール様から教えられていると、ベルフェゴール様本人が私達に話しましたから、私は”絶対に”皆さんが想像しているような状況に陥らない事くらいはすぐにわかるはずです。」
「ふえ……?エリゼちゃんにアイドスさん達の”加護”……?あ”。それってもしかして、オリヴァルト殿下達から教えてもらった……!」
「”性魔術”とやらかよ……」
一方アッシュ達の話を聞いたエリゼは静かな表情で指摘し、エリゼの指摘の意味が理解できないアネラスは戸惑いの表情を浮かべたがすぐに心当たりを思い出すと表情を引き攣らせ、アガットは呆れた表情で呟き、アネラスやアガット同様”性魔術”とアイドス達の存在を思い出したトワ達はそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「あー……確かに言われてみれば、エリゼ嬢ちゃんにもあのリア充野郎が集めた存在自体が冗談抜きのドチートな存在の新たな女連中の”加護”が宿っているだろうから、リィンのハーレムメンバーの一人のエリゼ嬢ちゃんが”呪い”に侵されるなんてことはまずありえないな。」
「ええ……しかも”女神”に”魔王”、”天使”のそれぞれの”加護”が重なっているでしょうから、幾ら”巨イナル黄昏”の”呪い”だろうと、”超越者”二柱に加えて天使の”加護”なんてどう考えても破れないわよ。」
「フフ、まさかこんな形でリィン君の重度な”妹思い”と”たらし”がエリゼを守るなんて、ある意味凄いわね。」
「全くですよ。冗談抜きで私もリィン君の”たらし”の才能が欲しいくらいですよ。」
我に返ったクロウとセリーヌは呆れた表情で呟き、クロチルダとアンゼリカは苦笑していた。
「で、でもそうなると……今のエリゼさんは”正常な状態”という事になりますから……」
「エリゼがさっきまで言った事は、今まで誰にも言わなかったエリゼの”本音”だったんだろうね。」
「それは………」
一方ある事に気づいたエマは不安そうな表情を浮かべ、フィーは真剣な表情で呟き、二人の言葉を聞いたラウラは複雑そうな表情を浮かべた。
「……リフィアに仕える前―――――いえ、兄様と共にディル=リフィーナにあるメンフィル帝国の”本国”で学ぶまでは私はそのような恐れ多い考えや発言をするような事はなかったでしょう。――――――ですが、メンフィル帝国は今までの私の”価値観”を変えてくれました。実力を示し、信頼を勝ち取る事ができれば貴賤、性別、年齢、そして過去の経緯等関係なく誰でも相応の地位に着くことができるメンフィル帝国の”実力主義”がこの世で正しい考えであり、皇族とは”自分達が特別扱いする人物の為ならば例え相手が自国の大貴族どころか他国の貴族や皇族であろうとも、自分達の判断が正しいと認めさせ、そして押し通す力”がある事を。」
「じ、”実力主義”に関しては僕も理解できるし頷ける話だが、皇族の件に関しては幾ら何でも滅茶苦茶を言っていないか!?」
「ただ、その滅茶苦茶を体現しているのがリウイ陛下達――――――メンフィル皇家が実際に存在しているんだから、リィン君を養子にしたシュバルツァー男爵夫妻がエレボニアの貴族達から爪弾きにされた件でユーゲント皇帝陛下や”血統主義”のエレボニアの貴族達を恨んでいるエリゼ君がそんな価値観を抱いてしまうのも無理もない話ではあるね………」
「……皇族自身の実力も当然関係はしているでしょうけど、今まで聞いたメンフィル―――――いえ、ディル=リフィーナの文化等についての話から察するにディル=リフィーナの一国家の”王族”は遥か昔のゼムリア大陸の国家のように”王族が絶対的存在という価値観”も存続し続けているでしょうから、メンフィルの皇族達がそんな無茶を押し通して周りの者達に認めさせる”力”があるのもその価値観が存続し続けていることも関係しているのでしょうね。」
静かな表情で答えたエリゼの答えを聞いたマキアスは信じられない表情で指摘し、アンゼリカは疲れた表情で呟き、セリーヌは静かな表情で推測を口にした。
「ハッ、よりにもよって貴族のお嬢が”身分”を否定する言葉を口にする考えに染まるとか、メンフィルはどんなイカレた国なんだよ。」
「そしてエリゼがそのような考えに染まった一番の原因は間違いなく”尊き血”を重視するエレボニアが生み続けている”歪み”なのだろうな……」
「……………………」
アッシュは鼻を鳴らして皮肉な言葉を口にし、アッシュの言葉に対してラウラは複雑そうな表情で答え、ユーシスは重々しい様子を纏って黙り込んでいた。
「―――並行世界のキーアさんには本当に心から感謝しています。”本来の歴史”と違い、兄様は兄様自身の実力を正しく評価してくれる国によって相応の立場を用意してもらえ、兄様が兄様自身の為ならば”敵”の命を奪う事もそうですが祖国や家族、友人に刃を向ける事になっても躊躇わず兄様に力を貸してくださる心強き”真の仲間”の方々と出会わせてくれたのですから!――――――その証拠が”メンフィル帝国”と”灰獅子隊”です!今の兄様達にとって貴方達”Ⅶ組”はもはや”不要の存在”です!」
「ハッ、なるほどな。つまりエリゼ嬢ちゃんからすればリィン達のやり方に賛同しない俺達は”真の仲間”とやらじゃない――――――”仮初の仲間”って所か。だったら、その考えが間違っていることを俺達自身で証明してやるぜ!!」
「ハハ、そうだね。――――――親父殿が殺されない為とこれ以上の犠牲を出させない為にも、そこを通してもらうよ、エリゼ君!」
「――――――みんな!わたし達の目的はアンちゃんにログナー侯爵閣下を取り押さえさせる事だから、みんなで協力してアンちゃんと何人かを先に向かわせる隙を作るよ……!」
「はい……!」
「この場にはいないアリサ達……そしてリィン達の分も背負って我らの力を其方達に示して見せる……!」
「例え相手がどれだけ強大な相手だろうと……」
「わたし達は絶対に退けない……!」
「お前がリィン達にとっては”不要”と判断した”Ⅶ組”の底力、思い知るがいい!」
「全力全開で行くよ~、オーちゃん!アーちゃんとクーちゃんもにもオーちゃんの力、たっぷり見せてあげるね!」
そして闘気を全身に纏ったエリゼが太刀をトワ達に向けて宣言するとクロウは鼻を鳴らした後不敵な笑みを浮かべて宣言し、クロウの言葉にアンゼリカは頷いた後仲間達と共に戦闘の構えをし、トワの号令にエマは頷き、ラウラとマキアス、フィー、ユーシスはそれぞれ闘志を高めてエリゼを睨み、ミリアムは無邪気な笑みを浮かべてオーバルギアに乗り込んだ後アルティナに声をかけ
「ですから、クラウ=ソラスをそのような呼び方で呼ぶのは……いえ、ミリアムさんには言うだけ無駄でしたね。リィンさんにエリゼ様のサポートを任された事もありますが、こんな私を許してくれた所か受け入れてくれたリィンさんやエリゼ様達の為に……全力でミリアムさん達を阻ませてもらいます……!」
「―――――――!」
ミリアムに声をかけられたアルティナは反論しかけたがすぐに諦めるとやがて真剣な表情を浮かべて答え、クラウ=ソラスもアルティナに続くように機械音を出した。
「ハッ、オレはシュバルツァー達やアンタ関連の件には興味ないが、オレ達の邪魔をするんだったら例え相手が女だろうと加減はしねぇぜ!」
「へっ、”重剣”の力、特と思い知りやがれっ!」
「エリゼちゃんの同門の先輩弟子として……遊撃士として、全身全霊で挑ませてもらうよっ!」
アッシュとアガットは不敵な笑みを浮かべ、アネラスは真剣な表情でエリゼを見つめて宣言し
「……エリゼ君の言う通り、シュバルツァー家は私達アルノール皇家の至らなさと愚かさに何度も巻き込まれたのだからエリゼ君に限らず、リィン君達も私達を恨み、蔑む事に対して反論の余地はない。……だけど、それでもこんな私達をまだ見捨てないでいてくれる者達へのせめてもの恩返しの為に、彼らの道を切り拓かせてもらうよ……!」
「僕もアルノール皇家の一員として……エレボニアの唯一の帝位継承権を持つ者としての力を証明させてもらいます……!」
「”アルノールの懐刀”として、例え相手が同じ一族の者であろうと、”主”の為に一切の加減は致しません、継母上……!」
オリヴァルト皇子とセドリック、ミュラーは決意の表情を浮かべて宣言し
「ふふっ、それでいいのです、ミュラーさん。――――――オリエ・ヴァンダール、アルフィン皇女殿下の為……メンフィル帝国から受けた恩に対する”義理”を果たす為……”紅き翼”の”壁”として、立ちはだからせて頂きます……!」
ミュラーの宣言にオリエは微笑んだ後双剣を構えて迎撃の態勢に入った。
「な、何だか傍から見れば私達はエリゼ・シュバルツァーの”取り巻き”のような存在に見える雰囲気になってしまいましたが……―――――エリンで宣言したように、私達の邪魔をするのですから、正々堂々とした対決で貴方達を叩き潰してさしあげますわ――――――”有角の若獅子”達!」
「ふふっ、伝説の”槍の聖女”たるリアンヌ様に見出された”現代の鉄騎隊”たる私達”鉄機隊”の力、見せてあげるわ……!」
「いざ、尋常に勝負―――!」
「八葉一刀流”六の型”奥義皆伝エリゼ・シュバルツァー………兄様達と私の未来の為に、全力で貴方達を阻ませてもらいます……!」
一方デュバリィはジト目になって答えた後すぐに表情を引き締めて戦闘の構えをし、デュバリィに続くようにエンネアとアイネスもそれぞれ戦闘の構えをして迎撃態勢に入り、エリゼは決意の表情で宣言した後デュバリィ達と共にトワ達との戦闘を開始した!
少し前―――――
~離れ~
エリゼ達とトワ達の戦いが始まる少し前、リィン達と共に屋敷に突入したジェダルはフルーレティにある指示を出してフルーレティと別行動をしてハイデルを探している中、離れを見つけると離れの中を確かめる為に扉を開こうとしたが、扉は取っ手の部分が南京錠によって閉められていた為、自身の得物を振るって扉を破壊して離れに押し入った。
「ヒィィィィィ……ッ!?ま、まさかメンフィル・クロスベル連合の狼藉者達か……!?あ、兄――――――いや、ログナー侯は私じゃないぞ!?私はログナー侯によって今まで不当な理由でここに監禁されていたのだ!」
扉が破壊される様子を見たハイデル元取締役は悲鳴を上げた後表情を青褪めさせながら扉が破壊された事で発生した煙の中から出てくるであろう人物に対して言い訳をしていた。
「俺の標的はログナー侯爵ではなく、お前だから、どれだけ命乞いをしても無駄だ。」
すると煙の中から出てきたジェダルがハイデル元取締役を見つめて指摘した。
「なあっ!?あ、兄上ではなく、私の命を狙って……!?な、何で私の命を……!」
ジェダルの言葉に驚いたハイデル元取締役は表情を青褪めさせてジェダルを見つめた。
「お前の”暗殺”を依頼され、その依頼を請けた――――――それだけの事だ。」
「い、”依頼”で私を……!い、一体誰が私の命を狙って……!――――――いや、今”依頼”と言ったな?――――――私と”取引”をしてくれないかね?勿論取引の内容は私の命を狙う依頼を破棄する事で、その依頼人を私に教える事だ!その代わり私の暗殺依頼の件のj報酬の3倍……いや、10倍は出そうじゃないか!金が目当てである猟兵の君にとっては悪くない取引だろう!?」
ジェダルの話を聞いたハイデル元取締役は信じられない表情を浮かべた後すぐに気を取り直して必死な様子でジェダルに取引を持ち掛けた。
「断る。俺は”猟兵”ではないし、俺は一度結んだ”約束”は相手から破ってこなければ、俺は絶対にその約束を破らない。――――――だから死ね。」
「ヒィィィィィ……ッ!だ、誰か私を助けてくれ――――――ッ!」
そしてハイデル元取締役の躊躇なく断ったジェダルが自身の得物である大剣を構え、それを見たハイデル元取締役が悲鳴を上げたその時
「――――――させないわよ!」
「!!」
離れにシェラザードと共に突入したサラがジェダル目掛けて銃撃し、背後からの銃撃に気づいたジェダルは側面に跳躍して回避し
「セイッ!」
「ハアッ!」
更にシェラザードが鞭を振るって追撃するとジェダルは大剣を振るって襲い掛かる鞭を弾き返した。
「お、お前は確かトールズの……!」
「Ⅶ組担当教官サラ・バレスタインよ。何とか間に合ったようね。――――――って、アンタは……!ハイデル卿の命を狙っている暗殺者ってのはアンタの事だったのね……!」
「あの暗殺者の事、サラは知っているのかしら?」
二人の登場に驚いているハイデル元取締役に名乗ったサラはジェダルに視線を向けると血相を変え、サラの様子が気になったシェラザードはサラに訊ねた。
「”アルスター”が襲撃された際にエステル達が出会った異世界の傭兵一行の一人よ!名前は確か……ジェダル・シュヴァルカだったかしら?」
「彼が例の…………――――――あたしはシェラザード・ハーヴェイ。遊撃士協会所属A級正遊撃士よ。規約第二項に従ってハイデル卿を保護させてもらうわ。」
「おおおっ!?こ、これぞまさに女神の導き!遊撃士よ、後で大金を支払ってやるから、とっととそこの狼藉者を追い払うがいい!」
サラの説明を聞いたシェラザードは真剣な表情でジェダルを見つめて宣言し、シェラザードの宣言を聞いたハイデル元取締役は声を上げた後シェラザードに指示をした。
「ハア……話に聞いていた通り確かにどこぞの誰かを思い出させるような”小悪党”ね………ジェダルだったかしら?確かサラ達の話によると、貴方はクロスベルのギルドに”協力者”という形で雇われているそうね。そんな状況でありながらギルドの規約に触れる依頼を請けてそれがクロスベルのギルドに判明すれば、後で何らかのペナルティを科せられると思うから、ここはお互いの為に退いてくれないかしら?」
「断る。そもそもクロスベルの遊撃士協会との関係もあくまで”傭兵”として本来遊撃士達が請ける”依頼”を請けているだけで、ヴァイスハイト皇帝達――――――クロスベル帝国から来る”傭兵としての依頼”には口を挟まない事や報告の義務もない事をミシェルに言ってある上、ミシェルもその件には若干不本意な様子を見せてはいたが同意している。要するにクロスベルの遊撃士協会と俺はヴァイスハイト皇帝達同様互いを利用し合う関係だ。」
ハイデル元取締役の言葉を聞いてふとギルバートの顔を思い浮かべて呆れた表情で溜息を吐いた後気を取り直したシェラザードの要請に対してジェダルは取り付く島もない様子で断りの答えを口にした
「典型的な”猟兵”の考え方ね……――――――交渉決裂か。サラ、彼の戦闘能力はどれ程なのか知っているかしら?」
「”星杯”から脱出したあたし達を拘束しようとしていたジョルジュ達に対してリィン達が迎撃した際に、猟兵王相手に一人で優勢な様子でやり合っていたから、最低でも執行者の上位クラス……多分だけどあの”剣帝”とも互角か、下手すれば”剣帝”以上だと思うわ……!」
ジェダルの答えを聞いたシェラザードは溜息を吐いた後表情を引き締めてサラにジェダルの事を訊ね、訊ねられたサラは厳しい表情で答えた。
「嘘でしょ……?二大猟兵団の片割れの団長相手に一人で優勢な様子でやり合ったって……確かにそれ程の使い手なら、あの”剣帝”ともまともにやり合えるでしょうね。正直、あたしとサラの二人がかりでもかなり厳しい相手になるわね。」
サラの情報を聞いたシェラザードは信じられない表情でジェダルを見つめた後疲れた表情で溜息を吐いた。
「そういう訳であたし達が逃げる時間を稼いであげるから、ハイデル卿は自力でこの場から脱出してどこか別の場所に隠れなさい!」
そしてサラがハイデル元取締役に視線を向けて指示をしたその時
「みすみす標的を逃がすような真似を俺が許すと思っているの……か!」
「ヒィィィィィ……ッ!?」
ジェダルは懐から投擲用の短剣を取り出すと共にハイデル元取締役目掛けて短剣を投擲し、それを見たハイデル元取締役が悲鳴を上げて固まったがジェダルの一挙一動を警戒していたサラが銃で短剣を撃って短剣を弾き飛ばし、シェラザードは短い詠唱による魔術でジェダルに牽制攻撃を行ってジェダルにその場から離れさせた。
「今よ!出口に向かって走りなさい!」
「うわああああああ……っ!な、なんで私がこんな目に……っ!」
ジェダルがその場から離れた瞬間サラがハイデル元取締役を睨んで声をかけるとハイデル元取締役は悲鳴を上げてその場から走り去った。
「逃がすか……!」
それを見たジェダルはハイデル元取締役の後を追おうとしたが、サラとシェラザードが扉があった場所――――――離れの出入口付近で立ちはだかった。
「ハイデル卿の後は追わせないわよ……!」
「アンタには一応カレル離宮で助けてもらった”恩”はあるけど……だからと言って、あたしの目の前で教え子が死んでほしくないと思っている人物を殺させないわ!」
「……………あくまで俺の邪魔をするのならば、速攻で制圧するまでだ。」
シェラザードとサラと対峙したジェダルは静かな表情で呟いた後全身に闘気を纏ってシェラザードとサラとの戦闘を開始した――――――!
後書き
来年はまさかの待望の軌跡シリーズ新章のカルバード編であるクロの軌跡もそうですが、コンキスタと天結いの続編が出る事には驚きましたww特に実質ほぼアペンドのようなコンキスタはともかく、天結いの続編に関してはエウシュリーが前作の続編を出すなんて、戦女神、幻燐シリーズ以来ですし、何よりも前作メインシナリオで出てきて仲間になったヒロイン全員リストラなしというのも嬉しい要素ではありますねww(その代わり、新ヒロインが少ないという欠点もありますが(汗))
なお、次回のエリゼ達との戦闘BGMは創の軌跡の”The Road to All-Out War”か”NO END NO WORLD -Instrumental Ver.-”、ジェダルとの戦闘BGMはグラセスタの”力こそが正義”だと思ってください♪それと灰の騎士の成り上がりで創の軌跡で登場し、恐らくクロの軌跡でも登場するキャラが超フライング登場&リィン陣営、Ⅶ組陣営、特務支援課陣営のいずれかの仲間になる流れを思いつきましたので、ルーレ篇が終わって2~3話進んで始まる次の展開の話でそのキャラが出てくる予定です!!(早っ!!)
それでは皆さん、よいお年を………
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