戦国異伝供書

「どれだけ有利かわかるな」
「はい、確かに」
「それでは勝てますな」
「如何に織田家といえど」
「そして退けられれば」
「織田家はもう限界じゃ」　
　多くの戦を行いかつ天下を巡ってというのだ、政宗は織田家のそのことを察してそのうえで今言うのだった。
「今度の戦の後は数年はな」
「動けませぬな」
「そしてその数年の間にですな」
「我等は奥羽を制し力を蓄え」
「島津家とも結び」
「東西から織田家を攻める」
「その様にしますな」
「そうじゃ、そうしてじゃ」
　そのうえでというのだ。
「天下を窺うぞ」
「その為の戦ですな」
「これよりの戦は」
「だからですな」
「何としても勝ちますな」
「そうする、では織田家との戦に入るぞ」
　こう言ってだった、政宗は兵を摺上原に進ませた、そして水色の軍勢を見て片倉と成実にこう話した。
「織田家の色は青、伊達家の色は水色」
「果たしてどちらの色が勝つか」
「その勝負ですな」
「そうじゃ」
　そうなるというのだ。
「色で言うとな」
「天下には色がある家が幾つかありますが」
「当家もそのうちの一つですし」
「織田家も然り」
「ならばですな」
「多くの色を備えた家が織田家に従っておる」
　今やそうなっているというのだ。
「浅井家、長曾我部家、武田家、上杉家、毛利家、北条家とな」
「本願寺も家ではないですが灰色ですし」
「徳川家も実のところは」
「盟友であってもな」
　それでもというのだ。
「天下に入っておられる」
「織田家のそれに」
「それではですな」
「織田家の中にある」
「そう言っていいですな」
「しかしわしは違う」
　政宗はここでも強い声で言った。
「織田家に勝つ、そしてな」
「やがては水色が天下を持つ」
「そうなりますな」
「ではこれよりですな」
「戦に向かいますな」
「その様にする」
　強い声のまま言ってだった。
　政宗は戦に赴いた、そして織田家と運命の戦を行うのだった。


第百十七話　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２０・１０・８