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戦国異伝供書

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第百十六話 摺上原の合戦その九

 鉄砲騎馬隊の中でも腕の立つしかもまさに命知らずの者達を三人選んで行かせた。そうしてであった。
 その者達を金上達に向かわせた、三組の一騎打ちはかなり激しいもので暫くの間四つに組んだものだった。
 しかし伊達家きっての猛将成実が選んだだけあってだった。
 伊達家が選んだ三人は強かった、そして三人共一騎打ちに勝った。それを見て伊達家は三人に喝采を送ったが。
 義広だけでなく芦名家の軍勢は金上達の決死の戦いの間にだった。
 無事退くことが出来た、それでだった。
 政宗は戦局を見て言った。
「追うのはこれまでじゃ」
「そうされますか」
「今日はな、それで戦を止めてな」
「そうしてですか」
「勝鬨を挙げ首実検を行い」
 こう小次郎に話した。
「そしてじゃ」
「休みますか」
「そうする」
 こう述べた。
「今日はな、また明日じゃ」
「明日からですな」
「今度は黒川城に向かう」
 そうするというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「これで終わりじゃ、ではな」
 こう話してだった。
 政宗は戦を止めさせて勝鬨をあげさせた、その後で。
 首実検も行い酒を出させて祝いとした、その後で。
 政宗は諸将にこう言った。
「では明日よりな」
「黒川城に向かいますな」
「会津のあの城に」
「芦名家の本城に」
「そうする、そして城に着けばな」
 その時はというのだ。
「よいな」
「次は城攻めですな」
「それにかかりますな」
「これより」
「そうする、よいな」
 次の戦のことも話した。
「そしてあの城を手に入れれば」
「いよいよですな」
「芦名家を降し」
「そしてですな」
「遂に」
「そうしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「次の戦までな」
「会津も含めてですな」
「領地をしかと治める」
「そうしますな」
「その様にするぞ、しかしな」
 政宗は今度は笑って述べた。
「芦名家は果たして籠城するか」
「そうして戦うか」
「このことはですか」
「どうなるかですか」
「もう芦名家には力がない」
 今日の負け戦でそれを失ったというのだ。
「だからな」
「籠城して戦うか」
「最後の最後まで」
「それが出来るか」
「それが微妙ですか」
「そうであろう」
 笑って言うのだった、このことを。
「最早な、それに主殿は佐竹家の方」
「最後の最後まで、ですか」
「芦名家におられるか」
「そのこともですか」
「わからぬ、だから城攻めはな」
 これはというのだ。 
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