恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第九十二話 劉備、于吉を欺くのことその八
気が緩みだ。劉備の声にも喋り方にも気付かなかった。そうして彼女に言った。
「その剣で私の書を封じることができます」
「その為の剣なのね」
「はい、そうです」
その通りだというのだ。
「その剣は特別なもので。龍の鱗から造っています」
「龍の鱗から」
「それも龍達の王である四海龍王達の鱗をそれぞれ合わせ」
「四海龍王、あの」
孔明もその龍達のことは知っていた。龍達の王にして四つの海をそれぞれ治め神々だ。神としても相当な力を持っている存在だ。
「あの龍達の力をですか」
「それだけに相当な力があります。ただしです」
その剣のことをだ。左慈はさらに話した。
「その剣は誰もが使えるという訳ではなくです」
「劉家の者だけが」
「しかその中でも。とりわけ龍の血が強い者だけがです」
使えるというのである。
「龍の血を引く劉家の中でもです」
「えっ、そうだったの」
「はい、そうなんです」
孔明はようやく気付いたといった感じの劉備にすぐに話した。
「高祖様は赤龍の血を引いておられますから」
「あれ、龍の息子さんだったの!?」
この劉備も知らないことだった。
「じゃあお父さんって」
「御母上が夢の中で赤龍を宿らせたのです」
そうだと話す孔明だった。
「御母上が妊娠中に夢の中でお腹の中に赤龍が宿られるのを見られて」
「それで高祖様が生まれたんだ」
「はい、そうだったんですよ」
こう話す孔明だった。
「ですから。劉家は龍の血を引いてるんです」
「そうよね。幾ら何でもね」
「龍から人は生まれませんから」
生物学的な話も為される。
「そういうことなんです」
「そうだったのね。じゃあこの剣って」
「その通りです」
于吉もまた劉備に話す。
「貴女しか扱えないものです」
「だから私今ここにいるんだ」
「今気付かれたのですか」
「そうよ。気付いたのよ」
「鈍いことです」
余裕の笑みのままだ。于吉は告げる。
「その貴女が私をですか」
「あんたと、その書をよ」
「太平要術の書もまた」
「封じるから!」
「では。今から」
于吉は構えない。それでもだった。
その両手にだ。黒いものを宿らせてだ。
両手を前に突き出す。そこからだった。
黒い球を放った。それで劉備を撃とうとする。
劉備はその球をだ。左右に舞う様にしてかわす。その動きを見て于吉は言った。
「ほほう、これは」
「どう?上手でしょ」
「舞の様ですね」
彼もそのことを指摘するのだった。
「思ったよりも軽やかです」
「だっていつも踊ってるから」
こう返す劉備だった。失言であるが于吉は気付かない。
「こんなの当然よ」
「当然ですか」
「そうよ。お姉ちゃんもちょっとはやらないと」
また言ってしまう。しかし于吉はその余裕故に気が緩みだ。やはり気付かないのだった。
「だからね」
「無駄だと思いますが」
「無駄じゃないよ。ほら」
于吉の傍にもだ。連合軍が来た。
その先頭に関羽と張飛がいる。二人はそれぞれの得物を手に于吉のところに来た。
「于吉、最早だ!」
「逃げられないのだ!」
「おやおや、三姉妹揃い踏みですか」
その二人にも余裕を見せる于吉だった。
「これは贅沢ですね」
「そうよ、贅沢よ」
劉備がまた于吉に言い返す。関羽と張飛はそれぞれ彼の斜め後ろに位置した。張飛はその時籠を置いた。
そのうえで于吉を取り囲みだ。そうして関羽が言う。
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