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オズの木挽きの馬

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第四幕その三

「ニホンオオカミは」
「それが習性なの」
「ニホンオオカミの」
「そうなの、だからね」
 それでというのです。
「別に何もしてこないわ」
「そうなんだね」
「カリダみたいに襲ってきたりとかはね」
「しないんだね」
「ただ自分達の縄張りに入ってきたから」
 ニホンオオカミのそれにというのです。
「そしてね」
「警戒しているんだ」
「縄張りを出るまでああしてね」
「ついてきているんだね」
「そうしているの」
 こう木挽きの馬にお話します。
「だから怖がらなくてもいいし」
「何かって思わなくても」
「いいの」
「安心していいんだね」
「そうよ」
「その通りよ」
 ニホンオオカミも言ってきました、穏やかな大人の女の人の声です。
「私達は貴方達が縄張りから出ればね」
「もうついて来ないんだ」
「そうよ、習性としてね」
 恵梨香の言う通りにというのです。
「そうしているのよ」
「そうなんだ」
「だから気にしないでいいわ」
「後ろからついてきても」
「本当に何もしないから」
「縄張りから出ればだね」
「私達はついて来ないから」
「そうなんだね」
 木挽きの馬も納得しました。
「恵梨香の言う通りだね」
「そうよ、それに狼は人を襲わないでしょ」
「元々そうだね」
「あと私達は森にいるから」 
 それでというのです。
「人里に入ることもね」
「ないんだ」
「そうよ、草原にも出ないのよ」
「狼は草原にもいるけれど」
「ニホンオオカミは森の中が住む場所だから」
「そういうことだね」
「そうなの」
 木挽きの馬にこのこともお話します。
「そうした狼ってことはわかっていてね」
「うん、僕もわかったよ」
「そういうことでね」
「それに狼って神様だったのよね」
 恵梨香はこのことも言いました。
「日本ではね」
「へえ、そうだったんだ」
「大きな神様だから『おおかみ』なの」
「その呼び名なんだ」
「そうなっているの」
「ふうん、神様だったんだね」
「畑を荒らす獣を食べてくれていたから」
 それでというのです。
「そう呼ばれていたのよ」
「成程ね」
「だから怖がられるよりもね」
「有り難く思われていたんだ」
「そうだったの」
「他の国じゃ怖がられたっていうけれど」 
 木挽きの馬は外の世界のことを言いました。
「日本じゃ違ったんだね」
「ええ、そうなの」
「そのこともわかったよ」
「ちなみに狼がいない国もあるよ」
 カルロスはこう言ってきました。
「僕の国がそうだよ」
「狼は沢山の国にいるけれど」
 神宝も言います。 
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