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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第九十二話 劉備、于吉を欺くのことその六

「死ぬな。わかったな」
「ああ、よくな」
 こうした話をしながらだった。二人はその男を捜していた。戦場で敵達を斬りながらだ。彼等はひたすら前に突き進むのだった。
 戦場を駆けているのは彼等だけではなかった。幻十郎もだ。
 その左利きで持つ刃を振り花札を出しながらだ。覇王丸に言うのだった。
「貴様がいると聞いてだ」
「どう思ったっていうんだ?」
「貴様を斬らせぬとな」
 そう思ったとだ。背中合わせになっている覇王丸に言うのである。
「そう思った」
「俺を斬る為にか」
「そうだ。貴様を斬るのは俺だ」
「そして手前を斬るのもな」
「貴様だ。俺は貴様以外に斬られはしない」
「それは絶対にだな」
「あの男。九鬼刀馬か」
 ふとだ。彼の名前も出すのだった。
「あの男、俺に似ているな」
「ああ、確かにな」
 その通りだとだ。覇王丸も答えた。
「あいつは御前に似ているな」
「あいつもある男を斬りたい様だが」
「その辺りも似ているな、御前と」
「そうだな。俺は斬る」
 今切り捨てた白装束の者のことではなかった。
「貴様をだ。必ずな」
「相変わらずだな。それに加えてだ」
「それにか」
「いいものも身に着けたじゃねえのか?」
 覇王丸は旋風烈斬を出しそれで敵を薙ぎ倒す。剣を下から上に振るい竜巻を出してだ。そのうえで吹き飛ばしているのである。
 そうしながらだ。また言う覇王丸だった。
「この世界に来てな」
「あの連中と同行していた」
 こう言う幻十郎だった。
「そして色々と語った」
「へえ、御前が誰かと一緒にいたのか」
「気が向いた」
 それでだというのだ。
「それでそうした」
「成程な。気が向いたか」
「それで共にいた。それだけだ」
「だがそれがよかったと思うがどうだ?」
「少なくともあの連中の考えはわかった」
 華陀達のだ。それはだというのだ。
 そのことを話してからだ。幻十郎はさらに述べた。
「ああした考えもあるのだな」
「人間色々な考えがあるさ」
「俺は。長い間一人だった」
 孤独と酔狂、それが幻十郎の生き方だった。
 己の手で母を斬りそれからは一人で生き剣を振りだ。酒を飲み薬を吸い女も男も抱いてきた。その彼の生き方も語られる。
「あの寺にいた時もだ」
「懐かしいな。あの時か」
「そうだ。貴様と会ったその時だ」
 まだだ。彼等が剣を持ちようやくその道を歩みはじめた時のことである。彼等はその時に会いだ。それから因縁が続いているのだ。
 その因縁も思い出してだ。それで話されるのだった。
「俺は一人だった」
「そうだったな。御前は一人で酒を飲んでいたな」
「覚えている。貴様と共に飲んだことはないがな」
「誰かと一緒に飲んだことはあるのかい?」
「ない」
 断言だった。それはなかったというのだ。
「興味もなかった」
「そうだな。これまでの手前はな」
「だが。あの連中とは共に飲んだ」
「そうしたんだな」
「美味いものだった。一人で飲むのもいいがな」
「大勢で飲む酒もいいだろ」
「いいものだ。それでだ」
 話がだ。ここで動いた。
「この戦いが終わればだ」
「飲むか?」
「美味い酒がある」 
 誰と飲むかはだ。あえて言わない。お互いにだ。
 だがそれでもわかったうえでだ。彼等はやり取りをするのだった。
「それを飲む」
「そうか。俺もあるぜ」
「相変わらず飲んでいるのだな」
「好きだぜ。どの世界の酒もな」
 覇王丸は楽しげに笑って幻十郎に述べた。
「じゃあ。この戦いが終わればな」
「飲む」
 こうしたやり取りをしてからだ。そのうえでだ。
 
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