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戦国異伝供書

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第百十六話 摺上原の合戦その六

「それでじゃ」
「我等はですな」
「焦らずな」
「待つ戦をしますな」
「そうする、では今は凌ぐぞ」
「わかり申した」
 成実は政宗のその言葉に頷いた。
「それではです」
「風の流れが変わるのを待つな」
「南は湖です」
 猪苗代湖のことをだ、片倉は話した。
「そして北は山、進むか退くかです」
「そうした戦であるな」
「ここで我等は確かにです」
「猪苗代の城があるからな」
「退けますが芦名家は違います」
「ここで負ければもうな」
「山を退きです」
 そうしてというのだ。
「さらに」
「川もな」
「そのまま崩れてしまいます」
「我等は会津まで攻められる」
「そうしたことになりますな」
「だからな」
 それ故にとだ、政宗は片倉に話した。
「我等は待つ、焦らずな」
「戦いますな」
「そうする、では翌朝にな」
 明日のその時にというのだ。
「出陣するぞ」
「わかり申した」
「では皆今宵はよく寝るのじゃ」
 明日の戦に備えてというのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで、ですな」
「明日は勝つぞ」 
 こう言ってだった。
 政宗はこの夜は兵達にたらふく食わせたうえでよく休ませた、そうして朝になると出陣してだった。
 芦名家の軍勢と対峙した、そうしてだった。
 風に乗って攻めてきた敵軍を見て全軍に指示を出した。
「よいな、まずはな」
「はい、守りを固め」
「敵を寄せ付けぬ」
「そうしますな」
「敵は風に乗って弓矢も使ってくるが」
 それでもというのだ。
「陣笠を確かに被りさらに上に覆いをしてじゃ」
「弓矢を防ぎますな」
 小次郎が言ってきた。
「そして槍や刀で突っ込んでくるならば」
「その時は長槍でじゃ」
 伊達家の切り札の一つであるこれでというのだ。
「防ぐ、そして敵を寄せ付けず」
「しかと守り」
「時を待て、確かに風に乗った矢は強いが」
「それでもですな」
「しかと守っていればな」
「防げますな」
「だからじゃ」
 それでというのだ。
「今はな」
「風が変わるのをですな」
「待つ、そして風が変われば」
 その時にというのだ。
「よいな、何時でも鉄砲を撃てる様にする」
「そうしておきますな」
「そして風が変わった瞬間にな」
「撃ちますな」
「そこからじゃ」
「鉄砲騎馬隊も使い」
「そしてじゃ」
「一気に攻めますな」
「そうする、とにかく今は待つのじゃ」
 そうするというのだ。
「よいな」
「それでは」
 小次郎は政宗の言葉に頷いた、そうしてだった。
 彼も兵達に護らせた、風に乗った芦名家の攻めは結構なものだった。だが伊達家の軍勢は今は守っていた。 
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