恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第九十一話 ゲーニッツ、暴れ回るのことその六
「それだけのことだ」
「へっ、そうなのかよ」
「そうだ。そしてだ」
「また闘うっていうんだな」
「何時でも来るのだ」
背を向けたままの言葉だ。
「遠慮なく倒してやろう」
「いいのか?また俺にやられるぜ」
「安心しろ。私は同じ相手に何度もやられはしない」
「だからだっていうんだな」
「特に貴様にはだ。敗れることはない」
「その言葉偽りじゃないんだな」
「そういうことだ。では待っているぞ」
こうテリーに告げてだ。そのうえでだ。
ギースはその場を去りにかかった。ホッパーとリッパーが従う。
その後姿を見てだ。テリーは言うのだった。
「相変わらずだな。ああしたところはな」
「そうなのか」
「ああ、ずっとああいう奴だ」
こうだ。関羽に軽口と共に話すのである。
「ひねくれてるっていうかねじれているというかな」
「ねじれているのだ」
張飛はそれだと断言した。
「あいつはそういう奴なのだ」
「わかるんだな」
「さっきも言ったけれど自分の目には自信があるのだ」
こうテリーにも言うのである。
「だからわかるのだ」
「それでなんだな」
「あいつは寂しい奴なのだ」
ここで張飛の目が鋭くなる。
「常に何かに餓えているのだ」
「それもわかるんだな」
「わかるのだ。とても寂しい奴なのだ。そして」
「そして?」
「御前もなのだ」
急にだ。クラウザーにも話を振る張飛だった。
「御前も寂しい奴なのだ」
「私もか」
「二人共寂しいものを宿らせているのだ。多分親のことなのだ」
「そこまでわかるのか」
「そういう奴を見たことがあるのだ」
見たものを忘れない。張飛は記憶力もよかった。
「だからわかるのだ」
「そうか。親か」
「子供は親から離れるものなのだ」
張飛の言葉はいささか説教めいたものになってきている。
「だからもうそうするのだ」
「そうだな。私もな」
クラウザーも目を閉じだ。微笑みつつ言うのだった。
「いい加減にな。前に進むべきだな」
「あの袴は悪い奴だが御前は違うのだ」
「私は悪ではないのか」
「そうだ。悪ではないのだ」
「おい、こいつはあれだぞ」
ここで言うテリーだった。クラウザーはどうかとだ。
「欧州の影の世界で生きる。裏のボディーガードなんだぞ」
「そうだよ。ドイツに代々続いているお貴族様でな」
イギリスの下町出身のビリーの言葉にはいささか悪意があるようだ。
「表向きは伯爵様だけれど裏じゃそうした護衛役をしてるんだよ」
「それで代々隠然たる力を持っていた」
ローレンスも話す。
「闇の帝王とさえ呼ばれている」
「それは住んでいる世界がそうであるだけなのだ」
しかしだ。張飛はそのことにも惑わされず言い切った。
「こいつは決して悪人じゃないのだ」
「その言葉キムに聞かせてやりたいな」
アクセルは張飛の今の言葉にしみじみとした口調で言った。
「あいつは裏の世界の護衛役っていうだけで悪ってみなしてたからな」
「あいつはなあ。偏見強いからな」
「我々も悪とみなされたからな」
そのことは三闘士も同じだった。ビリーとローレンスの今の言葉は困ったものになっている。
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