戦国異伝供書
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第百十五話 孤立無援その十
「そのうえでな」
「戦いますな」
「そうなる、そこにはそなたが知っている者が多い」
そうだというのだ。
「そしてその者達も槍働きでな」
「活躍するのですね」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「そうなる」
「左様ですか」
「それでじゃが」
政宗はここで酒を飲んでこうも言った。
「わしは茶も飲むがな」
「お酒もですね」
「こうして飲む、そなたと話してじゃ」
「そうして飲むこともですか」
「よいな」
こう言うのだった。
「実にな」
「左様ですか」
「だからじゃ」
「今も飲まれますか」
「うむ、男と共に飲む酒もよいが」
「妾と飲む酒もですが」
「おなごと飲む酒もな」
愛姫の言う言葉をだ、政宗は笑ってこう訂正して述べた。
「よいのじゃ、だから今宵はな」
「多く飲まれますか」
「そうする、お主を見て」
実際に見ていた、肴に塩を置いているがそちらにはあまり手をつけず愛姫を見てそうして飲んで居る。
「飲むぞ」
「そうですか。ですが」
「過ぎることはじゃな」
「よくないとです」
その様にというのだ。
「申し上げさせて頂きます」
「ははは、小十郎や時宗丸と同じじゃな」
「お二方も殿の深酒は止められますね」
「そうじゃ、いつもな」
「それは殿を心配してのことです」
「深酒はよくない」
「身体に毒とです」
その様にというのだ。
「言われていますね」
「古来からな」
「ですから」
「奥もじゃな」
「言わせて頂きます」
「わしの室として」
「左様です」
まさにという返事だった。
「そうさせて頂きます」
「そうか、しかし飲まぬ日もあるしな」
「今日は、ですか」
「わしも毎晩飲んではおらぬな」
「それは確かに」
「それに少しだけ飲む日もある」
「だから今宵はですか」
「時折の大酒の日ということでな」
その様にしてというのだ。
「飲ませてもらう」
「そうですか、ですが」
「それでもじゃな」
「やはりです」
「深酒はよくないな」
「殿の言われる通り時折ではまだよいですが」
それでもというのだ。
「それが毎晩となりますと」
「確実に寿命を縮めるな」
「そうなるかと」
「わしは早死にするつもりはない」
政宗は笑ってそれはないとした。
「戦の場で倒れるのならともかく」
「そうでなければですか」
「出来るだけ長く生きてな」
そうしてというのだ。
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