戦国異伝供書
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第百十五話 孤立無援その九
「いや、鮭もよいがな」
「茶もですな」
「実にいいですな」
「こちらも」
「まことにな、そして茶器もな」
これもというのだ。
「出来ればな」
「より集めていきますな」
「そうしていきますな」
「これよりは」
「そうする、高いが」
それでもというのだ。
「集めていくぞ」
「それも近頃天下で言われています」
「よき茶器を持つことも家の格だと」
「その様に」
「当家は鎌倉様以来の家じゃ」
鎌倉幕府からのというのだ。
「それでじゃ」
「家の格についてはですな」
「最初からありますが」
「それでもですな」
「その家の格に相応しいものを持たねばならん」
必ずというのだ。
「だからじゃ」
「茶器もですな」
「よいものを持つ」
「そうしますな」
「朝倉殿もよい茶器を持っておった」
信長に倒されたこの家ももというのだ、信長と朝倉家の老将朝倉宗滴との戦は天下の語り草となっている。
「いかしあの家はどういう家じゃ」
「はい、守護代の家です」
「斯波家の下にあった家です」
「そうした家です」
「織田家も同じじゃ、しかし我等は室町様より守護に任じられる前からじゃ」
その前からだというのだ。
「鎌倉様に任じられてな」
「そうしてですな」
「この地にありますな」
「その頃から」
「だから格が違う」
政宗は強い声で言った。
「今は奥州探題にもならせて頂いている」
「それで朝倉家や織田家より粗末な茶器では」
「ましてや持っていないとですな」
「格に関わりますな」
「格は大事じゃ」
家にはそれも欠かせないというのだ。
「だからな」
「それで、ですな」
「我等もですな」
「よい茶器を持ちますな」
「その様にする、その為には銭を多く使ってもな」
それでもというのだ。
「構わぬ」
「左様ですな」
「ましてや当家は天下人になります」
「そうもなりますから」
「よき茶器も持つ、そしてこうして茶もな」
これ自体もというのだ。
「飲むぞ」
「わかり申した」
「それではです」
「もう一杯ずつですな」
「飲もうぞ」
政宗はこう言ってだった。
三人に再び茶を出し自分も飲んだ、そしてだった。
戦の用意をさらに進まさせた、その中で。
愛姫とも話した、彼は夜に御殿の中で妻と対したがここで愛姫は夫に対してこんなことを言った。
「実家もですね」
「うむ、田村家も当家の中に入ったからな」
「だからですね」
「この度は当家についてじゃ」
そしてというのだ。
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