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百点でなくても

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第二章

「皆あんたを嫌いでもないでしょ」
「有り難いことに」
「性格はいいからね」
「それでなのね」
「そう、だからこれからも頑張りなさいね」
「いつも寸前で何かミスしても」
「それでもね、そこは気をつけながらね」
 そうしつつというのだ。
「頑張っていってね」
「わかったわ」
 沙織は母の言葉にいつも頷いていた、そしてだった。
 何とか最後の最後でミスをせず完璧にしようとあらゆることに努力していた、だがそれでもだった。
 やはり土壇場でミスがあることがいつもだった、それでだった。
 いつもそのことにまたしてもと思って項垂れもした、その彼女の通っている高校で文化祭があったが。
 彼女のクラスは着ぐるみで劇をすることになった、沙織はこの時兎の役を自分から志願したがその兎は。
「兎いつも出てるけれど」
「もう出ずっぱりよ」
「着ぐるみだからね」
「ずっと着ていたら」
「ちょっと以上に暑いから」
「止めた方がいいんじゃない?」
「女の子は体力がないから」
 男子に比べてというのだ。
「ずっと出ている役はね」
「ちょっと止めよう」
「脇役か裏方の方がいいわよ」
「兎はヒロインだから本当にいつも舞台にいるし」
「だからね」
「けれど兎は女の子だし」
 舞台での性別はとだ、沙織はクラスメイト達に真剣な顔で話した。
「それに私陸上部でいつも走っているから」
「体力もあるから?」
「だからなの?」
「いいの?」
「やるわ、この役は女の子じゃないと出来ないから」
 責任感を出して話した。
「若し私の他に誰かっていうのならいいけれど」
「そこまで言うならね」
「やってくれるかな」
「最後の最後で何かあっても」
 沙織の常でもというのだ。
「その時もね」
「何とかやってね」
「その意気ごみ買ったからさ」
「それじゃあね」
「ええ、やり遂げるわ」
 沙織は強い声で言った、そうしてだった。 
 劇に向かった、だが周囲はそんな沙織を見て警戒していた。
「いつも最後で、だからな」
「気をつけないとね」
「倒れない様に注意しないと」
「水分に塩分補給はしっかり摂ってもらって」
「少し位のお芝居のミスは目を瞑る」
「そうしてやっていこう」
「蒲生さんについてはね」
 その沙織についてさらに話した。
「フォロー出来ることはしていこう」
「蒲生さんも皆いつも助けてくれてるし」
 評判も確かに極端によくはないが沙織の性格はいいので助けてもらった人も多くそのことについては感謝して言うのだった。
「それじゃあ」
「ちゃんとやっていこう」
「蒲生さんもフォローしてくれてるし」
「私達もね」
 こうした話をしてお互いにフォローし合ってだった。
 沙織もクラスメイドたちも本番に向かって動いていた、練習での沙織は完璧で何の問題もなかった。それは着ぐるみを着ても同じだった。沙織自身必死に体調管理をしていて台詞も演技も頭に叩き込んだ。 
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