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王になれない男

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第三章

 そうしてイアソンは黄金の羊の毛皮を祖国に持ち帰った、だがペレアスは王位を譲ろうとはしなかった、叔父でもある王は甥を見てから側近達に話した。
「余はあの者に殺されるぞ」
「まさか」
「実の叔父をですか」
「そうしますか」
「あの目を見るとだ」
 まさにとだ、皺が多く黒い髭に覆われた顔で言った。甥とは違い整っておらずかつ勇敢さのない顔である。
「それがわかる」
「では、ですか」
「御身の周りを警戒しますか」
「そうされますか」
「うむ、そうする」
 こう言ってだった、ペレアスはイアソンから身を守ることに務める様になったが。
 突如娘達にこう言われた。
「お父様、若返ってみたくありませんか」
「素晴らしい方法を教えて頂きました」
「もうお父様もお歳ですし」
「そうなってみませんか」
「若返りだと」
 こう聞いてだ、ペレアスは。
 近頃歳で身体のあちこちが痛み動きにくくなってきたことから乗った、それでだった。
 娘達に言われるがままにした、娘達は父である王をばらばらに切り刻み。
 鍋の中で煮た、だがそれだけだった。ペレアスは若返るどころか鍋の中で煮られた肉の多くの塊となっただけだった。
 ここでイアソンは笑って言った。
「これもメディアの策だ」
「あの方のですか」
「そうなのですか」
「そうだ、王の娘達に若返りの魔法を教えると偽って」
 そしてというのだ。
「彼女達に父である王を殺させたのだ」
「そうだったのですか」
「身体をバラバラにさせて鍋で煮らせた」
「そうされたのですか」
「それだけで若返ることはないという」
 酷薄、そのものの笑みで笑いつつ話した。
「そこに魔法の薬を鍋の中に入れないとな」
「死んだままですか」
「バラバラになったままで」
「それだけですか」
「私に位を譲っていればそうはならなかった」 
 真相を聞かされ嘆き悲しむ王の娘達、自分の従妹達とその前にあるペレアスの茹でられた生首を見て嗤っていた。その首は今は宙を見ているだけだ。
「愚かなことだ」
「ですがそれでもです」
「実の叔父上を殺めたことは」
「それもご自身の娘の方々にそうさせるとは」
「あの様な惨いやり方で」
「それは私に約束通り王の位を譲らなかったからだ」
 やはりだった、イアソンは酷薄な笑みで言った。 
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