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王になれない男

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第一章

                王になれない男
 アルゴー号という船にギリシア中の英雄達が集まっていた、それはまさにギリシアの英雄全てが集まった様であった。
 それだけの英雄達を呼び掛けだけで集めしかもまとめて冒険を進めているイアソンを見てだった。
 ギリシアの者達は彼の力量に感嘆した、だが。
 ギリシアの者達は彼を見てこうも言った。
「あれだけの英雄達を集めてまとめられる」
「そして冒険を行える」
「恐ろしいまでの器だが」
「何故国を追われたのだ?」
「王になれなかったのだ?」
「あれだけの者ならだ」
 まさにというのだ。
「王になれない筈がない」
「今のテッサリア王ペリアスは大した人物ではない」
 彼の故国と叔父である今の王の話も為された。
「少なくともイアソンには劣る」
「それも遥かにだ」
「ケイローンに育てられたイアソンは器だけではない」
 ギリシアきっての賢人であるケンタウロスの彼は多くの英雄達を育ててきたがイアソンもその一人だったのだ。
「ペレアスはどう見ても簒奪者だ」
「簒奪者に去れと言えばそれで済む筈だ」
「それで何故王になれない」
「今の冒険の旅に行かされたのだ」
「それがわからないな」
「どうにもな」
 皆イアソンを見て言うばかりだった、だが。
 アルゴー号に乗り込んだ英雄の一人であるオルフェウスは仲間である双子のカストルとポルックスに話した。
「イアソン殿は素晴らしい方だが」
「魅力的で人を惹き付けるものがある」
「容姿端麗で思いやりがあり公平だ」
「そして勇気があり文武両道だ」
「実に素晴らしい人物だ」
「私もそう思う、しかし」
 オルフェウスは双子の英雄達に話した。
「君達も気付いているな」
「うむ、傍で見るとな」
「英雄をまとめる人物だが」
「王となるとな」
「どうかとなるな」
「人は誰でも欠点がある」
 オルフェウスはこのことを指摘した。
「こう言えば不遜だが神々でもだな」
「誰でも欠点がある」
「欠点のない存在なぞいない」
「それこそ誰もな」
「そうだな」
「そしてイアソン殿もだ」
 彼もまた然りだというのだ。
「そしてその欠点故にな」
「英雄をまとめる人物であっても」
「ギリシア中の英雄をまとめる程であっても」
「それでもだな」
「王となるとな」
「どうかとなる、彼は英雄をまとめる者にはなれるが」
 それでもというのだ。
「一国の王となるとな」
「難しいな」
「その立場は」
「そこが問題だ」
 どうしてもと言うのだった、だがオルフェウスも双子も他の英雄達も自分達の盟主そして仲間としてのイアソンを愛しており。
 共に冒険を続け苦難を乗り越え偉業を果たしていった、そしてだった。
 遂に冒険の目的である黄金の羊の毛皮を魔術を操るコルキス王アイエテスの娘メディアの力も借りて手に入れることが出来た、だが。
 ここでだ、英雄達はイアソンを咎めた。
「待て、メディア殿はわかる」
「君は彼女と恋仲になったからな」
「彼女を連れて逃げることはわかるが」
「しかし彼はいいだろう」 
 一人の幼い子を連れて行くのを見て咎めるのだった。 
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