戦国異伝供書
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第百十三話 鬼計その二
「そして今は待たせています」
「時が来るのをじゃな」
「左様です」
「全て整えておるな、もう」
「ですから」
「後は、か」
「畠山家はこちらにです」
米沢にというのだ。
「来るので」
「それで、じゃな」
「我等としてはです」
「迎えるか」
「それも父上のところに」
こう輝宗に答えた。
「それがしとの仲裁を頼む振りをして」
「宮森城にじゃな」
「丁度二本松とは近いです」
宮森城はというのだ。
「何かと好都合であります」
「畠山家にとってはそして」
「その後ろにいる芦名家と佐竹家にとっても」
「それでわしのところに来るな」
「仲裁を申し出て」
「そこを逆手に取るとはな」
「して後はです」
政宗は笑って述べた。
「二本松をとしましょう」
「考えておるのう、どうやらわしは鷹を産んだ様じゃ」
「そこまで言って頂けますか」
「うむ、そう思った」
「有り難きお言葉」
「ではその様にな。あとわしは近頃身体が優れぬ」
輝宗はここでこうも言った。
「だからな」
「それで、ですか」
「この度のことは終わればな」
「それからはですか」
「もう俗世から離れてな」
つまり出家してというのだ。
「そうしてな」
「過ごされますか」
「そう考えておる」
政宗にこのことも話した。
「これからはな」
「後は全てお主に任せるからな」
だからだというのだ。
「存分にやるのじゃ」
「父上、ですが」
「わしはもう家督を譲った」
輝宗は政宗が出家を止めようとするとすぐに返した。
「だからな」
「それで、ですか」
「左様、もうな」
それこそというのだ。
「この度のことが終わるとな」
「それで、ですか」
「出家してじゃ」
「余生を過ごされますか」
「そうする。後はお主がおるから大丈夫じゃ」
こう我が子に言うのだった、そしてだった。
政宗は畠山家の主である義継が輝宗に政宗との和睦を頼みそれが果たされたことを喜びそのうえで彼がいる宮森城に向かったのを聞いた、それでだった。
政宗は鷹狩りに出ていてそこで忍の者からの報を聞いて述べた。
「うむ、ではな」
「これよりですか」
「今はわしはここにおるが」
「次の報次第で」
「すぐに動く」
その様にするというのだ。
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