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戦国異伝供書

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第百十三話 鬼計その一

                第百十三話  鬼計
 政宗は父輝宗と念入りに話した後で述べた。
「では、です」
「その様にするか」
「はい、そうしてです」
「二本松の地を手に入れるか」
「そうします」
「そうか、戦ではないか」
「戦をしてはです」
 相馬家の時の様にというのだ。
「そうしてはです」
「畠山家は強いな」
「ですから攻め取るのに戸惑るやも知れぬので」
 それでというのだ。
「そしてそうなれば」
「芦名家や佐竹家が出て来るな」
「そうなると厄介なので」
 それでというのだ。
「あの地を一気に攻め取るにはです」
「その策が一番じゃな」
「そう思いまして」
「わしにも話したか」
「そうです、父上のご身辺には腕利きを揃えますが」
 そうして護るがというのだ。
「しかしその時は」
「わしはか」
「その様にして頂きます」
「そうか、ではな」
「宜しくお願いします」
「それではな」
 輝宗は我が子の言葉に頷いて応えた。
「わしもそうしよう」
「そうしてですな」
「家全体でじゃな」
「畠山家を仕掛け」
「二本松を手に入れるか」
「畠山家はしてやると思っていてです」
 そうしてというのだ。
「何としてもあちらの策を仕掛けて成功させようとしますが」
「そこをじゃな」
「かえってです」
 まさにというのだ。
「我等が仕掛けます」
「そうするな」
「はい、逆に」
「あちらが策を仕掛けるならであるな」
「こちらがです」
「逆に仕掛けてじゃな」
「崩してそうして」
 そのうえでというのだ。
「さらにです」
「二本松を手に入れる」
「そうします」
「そうするか」
「もう密かに戦の用意はしていますし」
 その備えもしているというのだ。
「ですから」
「その時が来ればか」
「すぐに二本松を手に入れます」
「そうするな」
「今畠山家は自分達の策を成功させようと必死で」
 それでというのだ。
「戦の備えはです」
「しておらぬな」
「どうして我等を出し抜いてです」
「果たそうとしておってじゃな」
「必死で」
 それでというのだ。
「戦までは手が回っておりませぬ」
「ではじゃな」
「我等は密かにです」
「戦の用意をしてじゃな」
「そしてです」
「策に逆に策で対してじゃな」
「あちらをそちらで制してからです」
 そこからというのだ。
「すぐに兵を動かしてです」
「二本松に攻め入り」
「あの地を手に入れます、兵は茂庭の爺に用意させています」
 茂庭良直、彼にというのだ。 
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