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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第九十話 孔明、秘策を授けるのことその九

「あの、それで」
「それで?」
「詳しい話をしたいんですが」
 こうしてだ。孔明は戦と策のことを張角に話した。話を聞いてだ。張角はここでも能天気な調子でだ。明るく笑ってこう答えたのだった。
「うん、いいよ」
「いいんですね」
「だって。劉備ちゃんには黄巾の乱の時助けてもらったし」
 義理があるというのだ。
「それに劉備ちゃんのことってどうしても断れないから」
「それじゃあ本当に」
「そうさせてもらうわ」
 こう孔明にも言うのである。
「是非共ね」
「有り難うございます。それじゃあ」
「すぐに準備に取り掛かろう」
「私達も」
 張梁と張宝も言う。
「あたし達戦うことはできないけれど」
「歌うことはできるけれど」
「歌はこの後よ」
 戦いの後だとだ。曹操も言う。
「とにかくよ。張角には御願いね」
「わかってるって。私頑張るからね」
「実力は凄いんだけれど」
 曹操は能天気なままの張角を見ながら不安な顔になって話した。
「ただねえ。性格がねえ」
「性格って?」
「だから。あんたのそのお気楽極楽な性格よ」
 本人に対しても言う。
「あんたの個性だけれどね」
「だって私しっかりするのとか苦手だから」
「それもわかってるけれど」
 把握しているうえで後援をしている曹操なのだ。
「まあ。今回は御願いね」
「うん、任せて」
「というか責任重大だから」
 能天気な調子を崩さない彼女に言い続けはした。だが何はともあれだ。
 これで戦のことも書のこともおおよそ決まった。それからであった。
 孔明は軍議の後で李典の天幕を訪れてだ。彼女にある頼みごとをしたのだった。
「あの」
「おお、孔明ちゃんか」
 笑顔で孔明に声をかける李典だった。今も何かを作っている。
「さっきは見事やったな」
「いえ、私はそんな」
「そこで謙遜するのがええとこやで」
 李典はにこりと笑って恥ずかしそうにする孔明に言った。
「孔明ちゃんらしいわ」
「私らしいですか」
「そや。ほんま可愛いわ」
 今度はこう言う李典だった。
「で、何で来たんや?お酒ならあるで」
「いえ、お酒ではなく」
「ほなお菓子か?」
「お菓子は食べたいですけれど」
 それでもだとだ。孔明は李典を言うのだった。
「実は。御願いがありまして」
「んっ?御願い?」
「はい、仮面を作って欲しいんですけれど」
「仮面っていうたら」
 李典は孔明の話を聞いてだ。ふと察したことは。
「あれかいな。趙雲が付ける」
「はい、あれです」
「本人は強引にばれてないということにしてるけどな」
「まあそれは置いておきまして」
 孔明は話を軌道に戻した。話が進まないと思ってだ。
「それでああした仮面は作れますか?」
「ああ、お安い御用や」
 気軽な言葉で返す李典だった。
「ほな早速作ろか?」
「御願いできますか?」
「御礼はお菓子でええで」
 白い歯を見せて笑って。孔明に言った。
「ケーキがええな」
「ケーキですか」
「孔明ちゃんのケーキは最高に美味しいさかいな」
 だからだというのだ。
「あのチョコのケーキがええわ」
「わかりました。それじゃあ」
「この戦いが終わってからな」
 何気に危険な旗が立ってしまった。
「一緒に食べよで」
「はい、一緒に」
「こんなこと言うとけったいなことになりそうやけどな」
「大丈夫ですよ。皆さん死にません」
「それは大丈夫なんかいな」
「星も見ましたが」
 孔明は星から多くのものを知ることができる。軍師として占星術も身に着けているのだ。
「皆さんこの戦いではです」
「死なへんねんな」
「苦難は続く様ですが」
 このことはだ。やや暗い顔で話す孔明だった。
「ですが死ぬことはないようです」
「っていうと苦難の後の大団円かいな」
「そうなると出ています」
「何や、王道やねんな」
「そうですね。王道ですね」
「そやったら安心して戦おか」
 ここでも白い歯を見せて笑う李典だった。
「どうせ戦うんやったら幸せな結末が一番やさかいな」
「そうですよね。最後の最後はね」
「ハッピーエンドがええさかいな」
 こんな話をしてだ。孔明はまた一つ策を用意した。こうしてこの世界の為のあらゆる策が仕掛けられだ。都の南での決戦となるのだった。


第九十話   完


                      2011・6・16 
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