魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話
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第二百五十二話
ガコン、とコックピットユニットがフレームアーキテクトに取り付けられた。
耐衝撃溶液で充たされたコックピットで、ヴィッサリオンが接続を確認。
それと同時に地上へ伸びるエレベーターのハッチが開いていく。
ムーバルスーツ越しにヴィッサリオンが上を見ると、全天モニターにハッチが開いていく様子が映っている。
「フレームアーキテクト、接続問題なし。インテンション・オートマチックシステム問題なし」
ヴィッサリオンの肉体とフレームアーキテクトの各部の連動回路が繋がる。
「フィードバック問題なし」
『了解、作業用アーマー取り付け開始』
フレームアーキテクトの周囲の壁が開き、アームが装甲を取り付ける。
轟雷型の非武装汎用アーマーで、荷物運搬用のロック機構が備わっている。
『アーマー装着完了。隊長。発進タイミングはそちらに』
「わかった。ヴィッサリオン・アルシャーヴィン、フレームアーキテクト実働試験を開始する。エレベーター起動」
ヴィッサリオンがアームレイカーのスイッチを押す。
ロックが解除され、エレベーターが起動する。
<21番地上格納庫への通路開放>
<到達まで40秒>
早くも遅くもない速度で轟雷作業型がエレベーターで上昇していく。
ムーバルスーツを改良したパイロットスーツを着たヴィッサリオンがキョロキョロとエレベーターの中を見渡す。
実機でのテストは初めてだ。
シュミレーションと微妙に違う感覚に緊張している。
やがて、エレベーターが停止した。
21番地上格納庫の扉が見える。
そこを開ければ建造中の街がある。
『エレベーター停止。格納庫の扉を開けます』
正面の扉が開き、ディスプレイに街が表示される。
『テスト内容を確認。17番地上格納庫前に置いてある建材を22番地上格納庫建造予定地に運ぶ。いいですね隊長?』
「わかっている」
サブモニターに表示されているマップが現在地と二つの目的地と順路を表示している。
「では、行くぞ」
ヴィッサリオンが前へ一歩踏み出そうとすると、フレームアーキテクトがそれに連動して動き出す。
ずしん、ずしんと大きな音と共に轟雷作業型が21番地上格納庫から出る。
舗装された道路に足を乗せ、一歩、また一歩と歩く。
17番地上格納庫は現在地から100メートルの位置にある。
人が歩くより少し遅いサイクルで慎重に歩を進める。
『隊長君。そこで一回止まってくれる?』
オペレーターとの通信に割り込んできた束が一時停止を命じた。
「了解」
ヴィッサリオンが足を止めた。
歩いている最中に不自然に止まった姿勢の轟雷作業型。
『気をつけ』
「了解」
ヴィッサリオンが片足を戻して轟雷作業型に気をつけの姿勢を取らせる。
『うん。問題ないね。ちょっと辺りを見渡してみて?』
束が命じると、コックピット内のヴィッサリオンが辺りを見渡す。
それに連動して轟雷作業型も首を動かしている。
と同時にヴィッサリオンの無意識の動きであろう動きも反映され、轟雷作業型が僅かに足を開いた。
『どう見える? 高い? それとも等身大?』
「不思議と高いとは感じませんね」
『OK。わかったよ。テスト再開』
ヴィッサリオンが歩を進める。
先程よりも滑らかな動作だ。
『うん…隊長君の緊張も解れてきてるね。インテンション・オートマチックの欠点は緊張や無意識の動作が伝わること。リラックスだよ』
転けたり躓いたりというトラブルも無く、17番地上格納庫に到着した。
格納庫前に建材が置いてある。
ワイヤーで括られた鉄骨の束だ。
『隊長。ぎっくり腰には気を付けてくださいよ』
「それはジョークか? それとも機体の心配か?」
『若の機械が壊れる訳ないじゃないですか』
ヴィッサリオンが体を動かすよう考えると轟雷作業型がしゃがみ、鉄骨の束に手を伸ばした。
「博士、建材の持ち方に指定はありますか?」
『無いよ。小脇に抱えても両手で持ってもいいよ。関節は機械的にロックされるから』
ヴィッサリオンは建材を右脇に抱え、左手でそれを支えるようにして立ち上がった。
ガキン! と装甲の関節がロックされる。
<腕部関節がロックされました>
「移動開始」
先よりも幾分か重い足音、そして僅かにガチガチと鳴る建材。
それらの音と共に、最終目的地の22番地上格納庫建造予定地へと向かう。
ニィ…と束が笑みを浮かべた。
「カンファレンス! 報告!」
《工作員の活動を確認。各本国と通信中》
監視カメラの映像がホロウィンドウに映し出される。
管制塔や各建造中のビルにつけられたカメラからの望遠映像、そして光学迷彩ドローンからのリアルタイム映像だ。
工作員が慌ただしくカメラや通信機を操作している。
数キロ離れた場所の、それも砂漠に隠れた個人個人を確実に捉える。
(いっ君の指示は各国への挑発と示威……)
「クラビカルアンテナ。展開用意」
今からやる事は単なる嫌がらせである。
諜報員と各本国の連絡を断つ。
「フレームアーキテクト実動試験は続行。私は各国をおちょくるよ」
『博士⁉』
「サポートはカンファレンスがやるから安心しなって」
束はホロウィンドウを叩き、一部防衛システムを起動する。
「GN粒子放出ダクト開放」
都市の数キロ先、工作員達の背後。円形配置された施設が稼働した。
そのコンクリート製の建物は実際に通気ダクト棟ではあるものの、それ以外の機能も有する。
施設の地下に埋まるGNドライヴが唸りを上げる。
ダクトから放出された粒子がクラビカルアンテナによって操作され、広がっていく。
管制塔を中心とした半径数キロのエリアが低濃度のGN粒子に満たされたいく。
束が操るドローンやフレームアーキテクト、都市内のビル群などには量子界通信機があるので問題はないが各国の工作員はそうもいかない。
広範囲にわたるジャミングで本国との通信が途絶された。
ドローンからの映像ではそのあわただしさがよく伝わってくる。
「さてさて。ヴィッサリオン君」
『なんでしょうか博士』
「いまからフレームアーキテクトと都市の対EMPテストするよ」
『え?』
「今キミをいやらしい目で盗撮している輩のカメラをぶっ壊すんだよ。あ、大丈夫別に核爆発で起こすわけじゃないよ。
イメージはあれだよ。えっと、ほら…ハリウッド版ゴジラのさ」
『ああ、居ましたねそんな奴........いやうそでしょ? あの規模のEMPやるんですか? 周辺国への被害とかは…』
「何のためのGNフィールドだと思ってるの?」
束が自分の席についていたハッチを開ける。
いかにもなボタンだ。
一見すると自爆ボタンにも見える。
「ぽちっとな」
束がそれを押した。
それと同時、都市部地下のEMPユニットが発動した。
ブゥンブゥンブゥンと数度に渡り強力なEMPが放たれる。
フィールドに保護されていた都市部は無論問題はなかった。
アーキテクトもだ。
そして各国工作員。
持っていた機材がパァンと火花を散らしてショートした。
ターゲットになっていた各国工作員は踏んだり蹴ったりである。
せっかく撮影した情報が全部機材もろともパーだ。
「ま、こんなところかな」
「容赦ないですね博士」
オペレーターが呟いた。
「いっ君からの指示だよ。これで一旦工作員は撤退する。不確かな情報と共にね。各国はどう思うだろうね。情報部と各国がギクシャクしたら面白そうじゃない?だってさ。
まぁどうせ監視衛星で見れるからその内ばれるんだけどね」
その後はフレームアーキテクトを使って予定になかった資材の搬送を進めた。
建材の搬送にはやはり大型建機が必要なのだ。
これまでは建設用ロボットやアルディの量子展開機能を使って伝送していた。
しかし束としてはその量子展開機能で各コアの容積を圧迫させたくはないのだ。
束はフレームアームズ計画の建機としての有用性を以てしてその他の計画が今よりもほんの少しだけ早く進むことを確信した。
それは各インフラの整備計画であったり難民受け入れ用の居住区の建設計画であったりメガフロートや輸送船団の建造などだ。
(それでもこの計画がいつ終わるかなんてわかんないんだよね)
全ての計画が計画どうりに進むとすれば数年で終わるだろう。
が、諸々の懸案事項によって十数年かかる可能性も捨てきれないと一夏が言っていた事を反芻する。
束はそれをまぁいいかと切り捨てる。
今考えてもどうしようもない事も理解しているからだ。
時間はある。いくらでも。
建国にどれだけの時間をかけようともそれは永い生のほんの一部でしかないからだ。
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